8 月 8th 2009 02:38 pm

再版序文

「著作権法逐条解説」の中国語ネット版は、2004年10月に第1条からスタートし、一条毎に「著作権筆記」(http://www.copyrightnote.org/)において公開してきました。当初はそれほど積極的に執筆していたわけではありませんでした。2006年初頭になって当時、全く面識のなかったのですが、対岸の中国社会科学院で知的財産法の博士課程に在籍していた萩原有里さんとインターネットを通じて相互協力の合意に達し、営利目的無しという前提の下、彼女は逐条解説の内容を日本語に翻訳し、ネット上に中国語版をアップロードした後、彼女自身のウェブサイト(http://tw.commentaries.asia/)にもアップロードすることにより、情報の伝達範囲も拡大しました。

萩原有里さんが日本語版にご尽力してくださったことにより、「著作権法逐条解説」の中国語・日本語の解説すべてが2006年末に完成しました。また、五南図書出版集団のご協力とご厚意により、「著作権法逐条解説」の中国語版は2007年3月に台湾で発行され、書籍発行後も中国語・日本語のネット版は引き続きネット上で公開され続け、随時更新されております。

中国語書籍の初版から今回の改訂まで2年半との短い期間ではありますが、この間に著作権法は2度の改正があり、これには2007年7月11日に新設された第87条第1項第7号のインターネット上で違法交換ソフトウェア又は複製技術を提供することを著作権侵害行為とみなすこと、第93条第4号の処罰規定、第97条の1の法院の権利侵害認定又は違法業者に対する営業停止若しくは強制廃業命令に関する条文、2009年5月13日のインターネット・サービス・プロバイダにセーフ・ハーバー(Safe Harbor)を提供するために新設された第6章の1「インターネット・サービス・プロバイダの民事免責事由」が含まれます。これらの改正規定はあちらこちらで異議があり、著作権者に過度に偏り、科学技術の発展と公衆の情報アクセスに関する権益に影響を及ぼし、必ずしも著作の適法な利用に資するものとはなっておりません。しかしながら、すでに立法手続が完了した以上、普遍的に適用されるものであり、否が応でも向き合わなければならない事実であります。それゆえ、逐条解において立法の意図及びその適用形態を詳細に述べ、これらの条文に対するさらなる批判については、そのほかの論文において行うこととし、逐条解説において多くを語ることは不適切であると考えました。各界の検討、討論におけるそのほかの改正条文草案はまだ定説ではありません。その討論課程について読者の皆様は「著作権筆記」の「討論園地」をご覧になって把握し、討論に参加し、将来、立法完成後、逐条解説の書籍第三版改訂までの間は「著作権筆記」において一足先にその内容を楽しむことができます。

ここで触れておかねばならないこととして、萩原有里さんの詳細且つ正確な日本語翻訳により、日本実務界及び学界の関心と興味を引き、2008年8月下旬に日本の政府機関を母体とする財団法人である経済産業調査会が日本東京において日本語版の初版を発行しました。これは、台湾著作権法に関する論述が日本で日本語により発行された初めての例であり、日本の学界及び実務界の台湾著作権法制の理解に役立っています。日本語版発行日に、ちょうど私は東京におりましたので、経済産業調査会を訪問し謝意を述べることができました。

逐条解説の中国語版を世に出してから、偶然にも海を越え、国を跨ぎ、無償・相互互恵の日本語への翻訳許諾により中国語・日本語のネット版が完成し、それと並行して、その後中国語書籍として発展進化し、最終的に日本語書籍としても日本東京でも発行されました。このような劇的な発展の背景には、関係各位の知的活動の投入と私心のない貢献が含まれており、これも美談ではないかと思っております。

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5 月 31st 2009 07:54 pm

2009年改正情報(ISP民事免責関連)

改正著作権法が2009年5月13日に公布施行されました。

逐条解説(原文)の加筆も徐々に開始されております。条文の大まかな解説はすべてアップいたしました。

今後、原文解説の充実化に伴い、できる限り訳文も連動してアップしていく予定でおりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

改正ポイントは以下のとおりです。

  1. インターネット・サービス・プロバイダの定義の新設(改正法第3条第1項第19号)
  2. インターネット・サービス・プロバイダに適用される第6章の1「民事免責事由の共通要件」(改正法第90条の4)
  3. 各種インターネット・サービス・プロバイダは、そのユーザによる他人の著作権又は製版権侵害行為に対して、著作権法の所定の手続を遵守していた場合、損害賠償責任を負わない。(改正法第90条の5から第90条の8)
  4. ホスティングサービスを提供するプロバイダが回復措置を行う際、遵守しなければならない事項。(改正法第90条の9)
  5. インターネット・サービス・プロバイダが規定に基づき著作権又は製版権を侵害したとされる情報を削除した場合、そのユーザに対して賠償責任を負わない。(改正法第90条の10)
  6. 事実と異なる通知又は回復通知を提出して他人に損害を与えた場合、これにより生じた損害について損害賠償責任を負わなければならない。(改正法第90条の11)
  7. 主務官庁に授権して、法規命令により前述の新設・改正条文に関する各実施細則を制定する。(改正法第90条の12)

また、原文の著者章忠信先生のご好意により立法院の「980408討論記録」「980421討論記録」及び経済部智慧財産局の「改正説明」をいただきましたので、中国語がお出来になる方は、改正経緯のご参考にしてください。

政府部門のウェブサイトなどから直接、探すことも可能だと思いますが、適切な文書をまとめて閲覧できるのは大変ありがたいことです。章先生に再度心よりお礼申し上げます。

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9 月 7th 2008 08:00 pm

書籍案内

台湾著作権法逐条解説の写真このコンテンツは2008年9月に財団法人経済産業調査会より出版されました。

「全体を一度に見渡したい」「目をいたわりたい」「やっぱり紙の書籍が大好き!」等の理由により書籍購入をご検討されている読者の皆様におかれましては、詳細は経済産業調査会の出版物のウェブサイトをご覧ください。
経済産業調査会 本書の紹介 http://books.chosakai.or.jp/books/catalog/28074.html

全国の大手書店、政府刊行物サービスセンター http://www.gov-book.or.jp で取り扱われておりますが、直接経済産業調査会に通販でお求めになることもできます。
なお、経済産業調査会では海外発送を一切行っておりませんので、海外在住の方につきましては、霞ヶ関政府刊行物サ-ビスセンタ-をご利用いただくと便利かもしれません。(Shipping services to overseas are acceptable at Kasumigaseki Government Publications Service Center inTokyo.)

わたくしの子どもであり、原作者章忠信先生の孫でもある本書をあなたの書棚に加えて可愛がって頂ければ、この上ない喜びとともに、幸せで胸がいっぱいです。

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5 月 29th 2008 11:21 pm

推薦の言葉

この人にしてしかもこの行い有るや―忠信君の著作権信念に対する序文

台湾交通大学 科技法律研究所所長
台湾科技法学会理事長
劉尚志

章忠信君の著作権法における造詣については、改めて紹介するまでもないでしょう。なぜなら、忠信君は長期に渡りインターネット上に著作権に関する知識を提供し指導してきたボランティアであると同時に、大学において教鞭をとる学者でもあり、その存在は専門分野においてすでに専門家及び公衆に認められているからです。しかし、忠信君がここに出版する「著作権法逐条解説」の視点から、一人の著作権法の専門家としての忠信君の著作権理念とその行動について考察してみたいと思います。

このような本は売れるのか?

本書は長年ネット上で公開されていた創作を、出版社の申込みに応じて書籍化したものです。一方で、すでにネット公開済の情報を本にまとめて販売し、他方ではネット上における知識の共有を依然として維持し続けます。非常に有り難いことに、ネット版の情報は定期的に更新されますが、書籍は一旦発行されれば改訂されるまで非常に古い資料と化してしまうと言わざるを得ません。

完全に同じ内容をネット上で読者に無償提供し、同時に書籍としても発行するというこのような書籍を果たして何冊売ることができるでしょうか?おそらく誰しもがそのような疑問を抱くでしょう。現在最も流行しているビジネスモデル概念を検討してみると、出版社の考えていることはよく分からないと考えるに違いありません。あまり利益追求が得意でない出版経営者に遭遇することもあり得ますが、しかしながら、背後に一定の理由がなければ、損を承知の上でそれでも商売をしようとする者を見つけることは容易なことではありません。この理由を推し量るのにあまり心を砕く必要はないでしょう。これには当然、作者の意志及び出版社が書籍を出版するに値すると判断したことが考えられます。なぜなら、作者の評判及び学識により出版のブランドと名声を向上させることができるからです。

このような知的財産権が社会に与える影響はどのようなものだろうか?

この半世紀、知的財産権制度及びエンフォースメントは急速な発展の中にあり、この新たな規範は人類の歴史発展における財産権の境界と利用の基本概念を打破し、それは当然に施行初期においては懸念と困惑を生じ、ひいては有識者との間に対立が生じました。

我々の知的財産権の発展に対する保護の必要性及びこの制度が引き起こし得る過度の保護に対する懸念は、実のところ並存します。中でも、社会の大衆に対する影響が非常に密接なものは、著作権でしょう。かつて知識は公共財産として皆で分かち合い、知識の伝達も無償であることが社会の発展に最も有利であると一般的に考えられてきました。ここ30年の反著作権運動 (counter copyright campaign) においては、様々な理念が錯綜する状況がみられます。中でも比較的知名度の高いものとして、例えば1980年代中期のフリーソフト(free software)、1990年代後期のオープンソース(open source code)、最近のLawrence Lessig教授の率いるクリエイティブコモンズ(Creative Commons)等が挙げられますが、これらはすべて権利の過度の発展下における再考と対抗であります。

社会の絶え間ない発展に伴い、我々には多くの制約と妥協が生じ、法律の制定及び施行にも影響を及ぼしています。そして、無形の創意と資産に対して、法的手段を除いては、我々はその他の効果的な保護方法をほとんど見つけることができません。

しかしながら、権利の強弱の長期の対立は、動態的な均衡、破壊、再均衡、再破壊の循環と発展を形成します。知的財産権の法的規範は、結局のところ、知的経済における産業競争と社会進化の基盤であるか又は先進国家がその他の社会の進歩を制圧する足枷であるかは、我々は今後も観察を続け、実証的な分析研究による比較的客観的な情報の提供を待たなければなりません。しかし、我々が肯定できることは、有名無実は励行には及ばず、社会の進歩には観念の向上と文化が根付くことが必要であり、中でも無我と奉仕は常に観念向上と根付くための原動力となるということです。

この人ありて、この行いあり。

事物と人物を観察する場合、様々な視点から様々な解釈をすることができます。群体現象を一つの平均値をもって定数とし、人間性の相違をスペクトル的な多元と同視することで、現象に対する理解が比較的適切なものとなり得るのではないでしょうか。

忠信君は長期に渡って著作権法に取り組み、これに無数のネットユーザーの質問及び意見交換が加わることにより、すでに彼独自の見解が形成されました。例えば、著作権保護のレベルを二つの極端な見解に分けるとして、一つは完全に著作権者を支持、もう一つは完全に社会大衆(又は利用を希望する権利者以外の者)を支持する見解があるとすれば、忠信君の著作権理念はどこに分類されるでしょうか。私は、これらの中間に立つ権利保護であると思います。権利の発展には、たとえ欠陥があろうとも権利保護は必要であり、かつ強化しなければならないものです。

忠信君の人となりはその名のとおり、忠信君の知識の共有と普及の活動からうかがい知ることができましょう。忠信君の行動原則は権利保護及び拡張を提唱する際に、加えて自己の知識才能を無心に貢献することを選択することです。これは、我々の社会における理想でありますが、社会に浸透していません。大勢の人間の中でも、このような行動はごく一部の者しか実行することができないのでありまして、忠信君は、このように知的理想と社会価値を融合し、成就させました。

この「著作権法逐条解説」は、作者の長年の知識の結集です。逐条解釈というものは、そもそも一つの条文だけを解説すればよいというものではありません。まず第一に法制の発展及び体系を把握してから、個別の条文に対し注釈を行って初めてその効果が得られるものです。ある組織のリーダーが細部及び根底まで十分に理解し、大局に着眼しつつ、小さなところから取り掛かるのと同様です。忠信君は本の出版はこれが最初ではなく、これまでの著作には、例えば「著作権法的第一堂課」「著作権博識500問」及びネット版の著作権の解説がありますが、これらはすべて専門知識と販売需要の側面を兼ね備えています。我々が目にしているこの新たな著作が体現するものは、法律知識だけでなく、社会に脈動する良知と貢献なのです。

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5 月 25th 2008 04:49 pm

著作権情報

このコンテンツは、中国語版原作者である章忠信先生の許諾を得て翻訳、逐次更新しているものであり、原作者である章忠信先生及び翻訳者である萩原有里(游鯉)の書面 による同意なく、著作権法の定める適正な利用を超えるその他の利用はできません。違反した場合はその法的責任を追及します。

中国語版の原作は「著作權筆記」において公開中であり、また台湾五南図書出版社より出版されております。

萩原有里のメール及びMSNのアドレス youli©legalio.com (©を@に変更してください)

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5 月 1st 2008 01:10 am

翻訳後記

翻訳は果たして創作活動でしょうか?著作権法の定めによれば間違いなくそうでしょう。しかし、極端なことを言えば、文章の意味など理解していなくても字面を追って機械的に翻訳することは可能です。単にその作品に使用されている言語を少し理解してさえいれば誰でもできることなので、世の中には日本人にも理解不能な怪文から、正確かつ美しく分かり易い訳文まで、実に幅のある翻訳文が存在しています。翻訳には誤訳を除けば、絶対無二の「正解」というものが存在しません。訳そうとする文章が、法律専門論文なのか一般文書なのか、また、読者が専門家なのか非法律専攻の一般人なのかによっても、選択し得る訳語が左右されることもあると思います。かつて先人が訳した訳語が、百年の時を経て、不適切であるとして変更される場合もあります。また、中国語と日本語は同じ漢字を使うにもかかわらず、意味又は語感が必ずしも同一ではない場合もあるという点にも注意が必要となります。わたくしが翻訳した「台湾著作権法逐条解説」にも当然、未熟な部分が存在することは避けられず、これをどう克服していくのかがわたくしの終生の課題であり、皆様からのご意見を心よりお待ちしております。

章忠信先生はかつてわたくしに「翻訳は創作に比べて難しい。既存の内容に拘束され、自ら自由に展開する空間がないからだ」とおっしゃいました。このように翻訳者の苦労を理解してくださっている章忠信先生から快く翻訳の許諾をいただき、翻訳中にわたくしの疑問に一つ一つ丁寧に適時回答していただけたことは、翻訳者冥利に尽きるというものであり、ここに改めてお礼申し上げます。

翻譯是否屬於創作活動?如果僅根據著作權法的規定,當然屬於創作活動,但事實上很難判斷。因為只要掌握作品所屬於的語言,任何人都可以按字面來翻譯,即使不懂原文的意思也可以完成翻譯。在實務中,有的譯文連日本人也看不懂,但有的譯文卻非常準確、易懂且文雅。除了誤譯之外,翻譯內容沒有絕對的「唯一標準的答案」。譯者首先要判斷,作品是法律專業論文還是一般文件,同時,要根據讀者是專家還是非專業人員,來選擇適當的用詞。一百年前所翻譯的文章,今天的讀者來看很多地方翻譯的不恰當,所用詞語隨著時代發展所變化。此外,還需要提到的是,中日翻譯具有特殊性,雖然中文和日文都使用漢字,但有時含義或者語感不一定相同,因此,我認為我翻譯的「台灣著作權法逐條解釋」也會出現不恰當的表達,怎樣克服這個問題是我終生努力的課題,誠請各位指教。

章老師以前對我說過,「翻譯比創作難。受限於既有內容,不能有自己隨意發揮的空間」。章老師能夠這麼理解譯者的辛苦,放心地允許我翻譯他的作品,而且在翻譯過程中,及時並認真地一一回答我的問題,作為其作品譯者我感到非常榮幸,再次向章老師表示感謝。

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5 月 1st 2008 01:00 am

訳者の紹介

萩原有里(Ari Hagiwara)
【現職】
(中華人民共和国)北京市天達律師事務所に勤務
「法律講義.net」ウェブサイト管理人 http://法律講義.net (又はhttp://commentaries.asia

【学歴】
(日本)愛知大学法学部二部法学科 法学学士(1996年)
(日本)愛知大学大学院法学研究科公法学専攻(中国法)法学修士(2000年)
(中華人民共和国)中国社会科学院研究生院法学系経済法専攻(知的財産法)法学博士(2007年)

【経歴】
(日本)名古屋市役所主事(1989~1997年)

【主要公表中国語論文】
「日本法律対商業形象権的保護(日本法におけるパブリシティ権保護)」(「知識産権」2003年5期)
「網絡服務提供者的損害賠償責任(インターネット・サービスプロバイダの損害賠償責任について)」(「科技与法律」2004年第2期)
「“版権”与“著作権”两个詞在日本的来龍去脉(日本における“版権”及び“著作権”という用語の変遷-日本著作権法史)」(中国社会科学院知的財産研究センター編:「知識産権研究」第17巻、中国方正出版社、2005年6月)

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5 月 1st 2008 12:50 am

著者序文

原作「著作権法逐条釈義」序文

章忠信

1986年10月、私は全くの偶然から政府の著作権主務官庁、つまり当時の内政部著作権委員会に身を投じました。その後、王全録主任委員の三度に渡る強力な推薦を受けることができ、ついに1995年、行政院の在職、有給、全額公費奨学金による1年間の留学の機会を得て、Washington, D.C.のNorthwest区にあるAmerican UniversityのWashington College of Lawにおいて著作権法の権威であられるPeter Jaszi教授のご指導の下、著作権法制を研究しLL.M. 学位を取得することができました。

1996年12月、当時の主任委員であられた林美珠女史及び陳淑美セクション・チーフの支持の下、単身スイスのジュネーブにある世界知的所有権機関(WIPO)本部に10日あまり滞在し、国際著作権法制の世紀の大事件であり、世界中の注目を集め、強大な影響力を有する通称「インターネット著作権条約」と称される「著作権に関する世界知的所有権機関条約」(WCT)及び「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」(WPPT)の外交会議を身近で体験いたしました。

末端の実務から出発して、その後、米国著作権制度の洗礼を受け、デジタルネットワーク科学技術の発展下における国際著作権法制の目覚しい変化にさらされ、私は、このような一連の過程を経て会得した著作権に関する専門知識をどのようにして簡単な方法により国内に広く伝えることができるのだろうということを考え始めました。

1998年末、友人である陳錦全女史(現職、中原大学財経法律系助教授)の推薦と当時の中原大学財経法律系馮震宇主任の支持、錢世傑氏の協力を得て、大学のホストコンピュータに公益ウェブサイト「著作権筆記」を開設し、著作権に関する専門知識のウェブ公開はスタートしました。2000年初頭、長期運営とシステムの安定性を考慮し、「著作権筆記」は中原大学のホストコンピュータを離れ、専属のドメインネーム(www.copyrightnote.org)を取得し、現在に至ります。

長期に渡り専属・公益的なウェブサイトを運営することは容易ではありません。専門知識の蓄積と狂信者にも似た無我の奉仕に没頭することが必要であるばかりでなく、他者に負けない強固な持続力が必要です。公務、教学及び研究上の必要性と、「生涯のうち少なくとも何か一つぐらいは有意義なことを見つけて実践しよう」との単純な発想から「著作権筆記」は日々更新され続けました。私の命のある限り、今後も中断することはないと思います。

一人の著作権にかかわる実務家によって運営される「著作権筆記」の内容には、あまり多くの理論は存在しません。純粋に正確な著作権概念を伝達し、実務上の難題と争点を解決します。このウェブサイトには、各方面からアクセスがあります。権利侵害を受けた著作権者、著作権侵害を行った者、司法界の弁護士、検察官及び裁判官、企業経営者、学会の教授及び学生、そして台湾だけにとどまらず、大陸から、たまにですが英語で交流するしかない外国人もいます。彼らについては、私が彼らに著作権に関する専門知識を提供しているというよりは、著作権問題に対する私の考察が彼らによってさらに広い視野と認識を得ていると言ったほうがよいでしょう。

よくあるのは、同一事件の原告と被告、司法関係者が一定の期間、質疑のためにアクセスしてくることです。「著作権筆記」は、専門家としての道徳理念に基づき、すべての質問について当事者にその他の当事者から質問があったという事実及び立場を洩らすことは絶対にありません。著作権法の規定及び適用上、提供する専門的意見は一つしかありませんが、原告、被告及び司法関係者はそれぞれの立場に基づき各自の対応について検討すればよいだけのことであり、そうでなければ、客観性及び説得力がありません。

弁護士界からのアクセスに関して、「著作権筆記」は専門的なコンサルティングサービスを無償で提供し、弁護士がこれに基づき、再びクライアントに有償サービスを提供することを気にしないのか? というような疑問を感じる人もおられるでしょう。公益ウェブサイトとして、各界に提供した回答は転じて著作権法の関連規定及び適用にフィードバックされた後に「著作権筆記」において公開され、再び広く各界の目に触れることになります。問題提起された弁護士の方々が、彼らにより整理されたその興味深い質疑応答について私に報酬を支払うことがないとしても、私は彼らの質疑を題材にしてこれを専門分野の問答に転化し再び公開し、これらを各界と分かち合うことで、自らの専門能力を高め、「著作権筆記」のクオリティを高めているのです。実際、どのような方からの質問も拒む理由はありません。深遠的な見地からも、他者の運営形態から影響を受けて自己の公益推進の理想と初志を抑制する必要はないでしょう。

私は、「著作権筆記」の運営過程において、人助けが自分助けになることを実感しました。私は、著作権専門分野においては自信がありますが、インターネットプログラミングについては完全に手も足も出ません。Rossanaさんは、私が2000年初頭、ウェブサイトが中原大学のホストコンピュータを離れ、独立して運営を開始し、試行錯誤の段階にあった頃に救いの手を差し伸べてくれた大変親切な方です。私は、いまだ本人にお会いしたことがありませんし、本名も存じ上げません。Rossanaさんは、電子メールによる綿密なコミュニケーションにより、無償で「著作権筆記」のデータベースに対して、対応するプログラムを設計し、新たにウェブ環境を整備し、「討論園地」を開設し、「著作権筆記電子報」システムを創設し、「著作権筆記」にインタラクティブなディスカッションと自動通知機能を追加してくださいました。これらはすべてウェブ管理をする上での重要な機能です。この一連の出来事は、ネット社会活動における高度な信頼関係の表れと言ってよいでしょう。

台湾の知的財産権専属責任機関である経済部智慧財産局は、1999年1月に設置されました。従いまして、私も著作権業務の移管に伴い、内政部著作権委員会から経済部智慧財産局著作権セクションに転任し、著作権法制の調整と対外的交渉の第一線に立つ業務に従事いたしました。これには、「著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)」及び「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)」に対応する著作権法改正、「Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu独立関税区」の名義による台湾と対岸の中国大陸の世界貿易機関(WTO)加盟、台湾の著作権保護及び法律改正にかかる米国との交渉、WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する協定の理事会(WTO/TRIPS Council)による台湾の著作権法制の監視等が含まれ、私個人の著作権に関する専門知識の成長と向上を促しました。

著作権分野に身を投じたことは、全くの職務上の偶然ですが、お粗末だった台湾の著作権法制が国際基準に合流するまでを見守ることができたことは何と幸運なことでしょう。一公務員として、専門分野に従事し、法制の現代化構築と対策の研究立案に参与できたことは、とてもすばらしいことでした。このことから、誰もが著作権業務は私の一生涯の仕事であると信じて疑いませんでした。2002年下半期、継続的な米国経済貿易交渉は、台湾の著作権法制の方向性に非常に大きな影響を与えました。専属責任機関の人事異動に伴い、私はだんだん著作権業務とは単純な著作権に関する議題だけではなく、政治、国防、外交及び国際経済貿易に及ぶ事務であり、行政と専門的業務の間には距離があると感じ始めました。行政システムにおいては、行政が専門的業務を重視しなければ、組織が順調に機能し、政策が着実に徹底され、国家全体の利益バランスが取れません。しかし、行政人にとってこれは難しく、専門性の養成は容易なことではありません。私は専門分野における自由と独立の確保を選択し、長期的に台湾の著作権制度の健全な発展に貢献することが行政の運営継続にも有益であると考えました。これは、2003年10月、私が教育部に職場を移し、関連業務部門が著作権関連問題を解決することに協力し、引き続き国内著作権法制の発展を見守ることとなった主要な理由です。

著作権実務の従事で重要なのは、国際著作権法制の掌握、著作権関連法律条文の熟知及び国内外の実務運用の理解であり、高学位は必ずしも必要であるとは言えません。以前から多数の知人先輩方から学術理論を強化するために引き続き博士課程に進学すべきだと強く勧められましたが、私は、博士課程に進学すれば専門分野に従事するための個人的な時間が少なくなることから、あまり関心がありませんでした。しかし、職務内容の変化と環境の変化に伴い、だんだん自らの可能性を更に広げるべきであり、能力の及ぶ限り、自ら制限を設けるべきではないと自覚するようになりました。努力の甲斐あって、2005年、国立交通大学科技管理研究所科技法律科の博士課程に入学することができました。最年長の博士課程の学生として、若い世代の修士・博士課程の学生と机を並べ、しばしば「後生おそるべし(後生可畏)」と感心すると同時に、私は単に「先行者」として優位に立っているにすぎず、知識の上で一時的にリードしているにすぎないと自らを戒めております。博士課程進学により、私の専門研究に費やす時間も分割せざるを得なくなりました。しかし、学生たちの異なる視点からの討論の中で多くの啓発が得られること以外に、劉尚志所長が力を入れている法学実証研究と経済分析は、著作権分野の関連問題の観察と思考に対して別の活力を生み出しており、これは博士課程で得た最大の実益だと思います。

「著作権筆記」のインターネット運営モデルは、インターネット利用者の情報取得に資することですが、すべての人がインターネットを通じて情報取得ができるわけではありません。書籍は依然として情報流通の重要なパイプ役を担っております。ネット配信は、便利、迅速、修正可能、強力な検索ツールというメリットを追求していますが、反対に情報を書籍に転化する必要性も認めざるを得ません。五南文化事業機構の書泉出版社の社員の皆様の協力を得て情報を引き続きインターネット上で公開するという条件の下、書籍発行業務が一歩一歩進められました。2001年に発行した「著作権大哉問」(2004年再版は「著作権博適500問」)も、「著作権筆記」の「著作権大哉問」コーナーから生まれたものです。このコーナーは、各界からウェブサイトに寄せられた関連質問事項を一問一答形式により整理したもので、現在ウェブ公開しています。2004年の「著作権法第一堂課」は、「著作権筆記」の「著作権概念漫談」の各短編を再編集し、事例ガイドとすることにより、親しみやすく奥深い内容になるよう配慮した観念的な解説書です。

今回の「著作権法逐条釈義」もこのような方法に基づき、約2年間費やして一歩一歩、思考と整理を繰り返し、簡明で分かりやすい文章により、条文ごとに立法趣旨と適用状況を説明し、著作権専属責任機関の重要な解釈及び司法機関の関連判決の要旨を加え、現行の条文規定の意味を理解しようとする読者に対する参考資料として十分耐え得るものとしました。書籍のメリットは閲覧と携帯に便利であること、デメリットは更新又は修正が難しいことです。本書のメリットは、いつでもネットにつないでネット版の最新情報を確認し、著作権法の最新動態を把握できることです。

「著作権法逐条釈義」ネット版を執筆中、インターネットを通じて対岸の中国社会科学院法学研究科の博士課程に在籍する日本人の萩原有里さんと知り合い、お互いに営利目的なしということで合意し、彼女が逐条釈義を日本語に翻訳しました。この日本語版を中国語版の後ろと彼女個人のウェブサイト(http://legalio.com/index.html) に掲載することで、情報発信の拡大効果が得られました。彼女は日本語翻訳作業中、中国語版の誤植と難解な表現をたびたび指摘してくださり、このことは、簡明で分かりやすい表現を追求する逐条解説にとって大変有益なものでした。

これまでの道のりを振り返ってみると、努力とモチベーションの維持は、すべて他力本願ではなく自力であるとはいえ、専門知識の向上の機会を与えてくださった諸先輩方には誠に感謝しており、「著作権筆記」の開設と発展に協力してくださった皆様方には、ここに心よりお礼申し上げます。当然、家族の支えも「著作権筆記」がここまで成長し続けてこられた一因です。毎晩、自宅で夕食をとるよう努力しているものの、公務の余暇はすべてウェブ管理に費やされ、夫として、父としての役割に至っては、おそらく言葉よりも私自身がお手本となって見せることで果たしていると言ってよいでしょう。このような口やかましくない父親であることが、もしかすると息子たちが良い子に育っている理由なのかもしれません。

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5 月 1st 2008 12:40 am

著者の紹介

章忠信(Chang,Chung-Hsin)
【現職】
「著作権筆記」公益ウェブサイト管理人 http://www.copyrightnote.org
(台湾)経済部智慧財産局著作権審議及び調解委員会委員
(台湾)教育部技術及び職業教育司簡任第十一職等専門委員
    
【学歴】
(台湾)東呉大学法律学系司法実務組 法学学士(1982年)
(米国)LL.M., Washington College of Law, American University(1995年)
(台湾)国立交通大学科技管理研究所科技法律組 博士取得候補者(2008年現在)
【経歴】
(台湾)経済部智慧財産局著作権組簡任督導、清華大学科技法律研究所、中央警察大学、東呉大学、中原大学、世新大学法律系、亜卓市夫子学院「著作権法」、 「営業秘密法」、「智慧財産権概論」兼任講師、司法院、法務部司法人員訓練所、経済部智慧財産局「著作権法」及び「営業秘密法」講座、法務部専家資源資料 庫著作権諮詢顧問、司法院専家参審制著作権法民事案件参審専家。
【著書】
「著作権大哉問」(書泉出版)2001年2月
「著作権博識500問」(書泉出版)2004年4月
「著作権法的第一堂課」(書泉出版)2004年8月
「著作権法逐条釈義」(五南図書出版)2007年3月
「インターネット音楽及び映画の著作権問題」(国立台湾大学科際整合研究所)2008年3月
【共訳書】
「マルチメディア法とビジネスハンドブック」原作J. Dianne Brinson/Mark F. Radcliffe「MULTIMEDIA LAW and BUSINESS HANDBOOK—- A Practical Guide for Developers and Publishers」(商業周刊出版)2000年04月

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5 月 1st 2008 12:20 am

用語説明

  1. 原作の解説において使用されている「中華民国」との表現は、国際慣例を考慮して「台湾」と統一表記し、条文自体に使用されている「中華民国」との表現は、原文通り「中華民国」との表現を用いた。また、台湾公文書において現在も、中華民国が成立した1912年を中華民国元年とする暦が使用されているが、読者の便宜を図って西暦に統一した。このような一連の表現は、法的正確性と国際的な一般慣習を考慮した結果であり、当然、原作者の了承も得ており、翻訳過程において政治的な他意は一切ないことをここに固くお断りしておく。
  2. 日本語として理解できるもの、行政官庁の名称等は原則的にできる限り原文に近いものを採用した。
  3. 台湾著作権法にいう「著作(原文)」とは、日本法にいう「著作物」であり、英語でいえば「Works」であるが、台湾著作権法にいう「著作物(原文)」は有体物であり、日本法にいう「著作物」とは全く異なる概念である。日本人にとっては、「物」は「もの」であって無体物であるという理屈は非常に分かりやすいが、日本語が理解できない中国語圏の方にこれを説明するのは至難の業である。著作権法に精通している日本人や中国人翻訳者でもうっかりミスをするし、一般の翻訳者においては混同している節もある。また、時折、日本語を理解できない中国語圏の学者から、日本著作権法は創作成果とそれが固定された媒体との区別が曖昧だとの指摘を受ける所以でもある。台湾著作権法も日本の影響を受けているため、かつてはすべて「著作物」という表現を使用していたが、非常に紛らわしく誤解を招きやすいとのことから、1985年以降、「著作」という表現に改められた 。従って、本書では、知的創作成果、即ち「著作(原文)」はそのまま「著作」とし、「著作物(原文)」を「著作物品」とした。
  4. 本書では、「著作権(原文)」はそのまま「著作権」と翻訳してある。日本では単に「著作権」という場合、「著作財産権」を指す用語であるが、台湾著作権法第3条の定義によれば、「著作権」とは、著作の完成により生ずる「著作者人格権」及び「著作財産権」の両者を含む概念である。
  5. 「公開口述」「公開放送」「公開上映」「公開演出」「公開送信」「公開展示」「公開発表」等の用語にいう「公開」とは即ち「public」であり、日本語では「公衆○○」「公に○○する」と表現されるものである。そのまま日本語として理解できることから、本書においては、あえて日本法に倣って訳さず、名詞又は動詞としてそのまま使用した。
  6. 中国語の「出租」は、有償で貸し与えることを意味し、無償ではあり得ないが、日本著作権法にいう「貸与」は本来、有償無償を問わないばかりか、契約が貸借形式でなくとも貸与と同等の効果を生ずるものはすべて貸与として扱われることに鑑みて(日本著作権法第3条第8項)、「出租」をあえて「貸与」とは訳さず「賃貸」とした。また、中国語の「出借」は「無償貸与」とした。それ故、本書には「貸与権」ではなく、なじみのない「賃貸権」なる用語が登場することをご了解いただきたい。
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5 月 1st 2008 12:00 am

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