5 月 1st 2008 11:40 am
第65条 適正な利用の効果及び認定基準
著作の適正な利用は、著作財産権の侵害とはならない。
著作の利用が第44条から第63条の規定に該当するか否か又はその他の適正な利用の態様に該当するか否かはあらゆる状況を斟酌するものとし、特に次の各号に掲げる事項に注意しなければならない。判断基準は次のとおりである。
(1) 利用の目的及び性質。これには商業目的又は非営利の教育目的であるかをも含むものとする。
(2) 著作の性質。
(3) 利用の際の品質及び著作全体に占める割合。
(4) 利用結果が著作の潜在的な市場と現在の価値に及ぼす影響。著作権者団体と利用者団体間において著作の適正な利用の範囲につき合意に達している場合は、前項の判断基準の参考とすることができる。
前項の協議において、著作権専属責任機関に意見を諮問することができる。
【解説】
適正な利用は著作財産権の制限であるため、著作の適正な利用の法的効果は「著作財産権の侵害とはならない」ことである。適正な利用は、利用者に著作財産権保護を受ける他人の著作を自由に利用することができる旨著作権法が付与した一種の「特権(privilege)」であり、このような特権は一般の「専有権利(exclusive rights)」と異なり譲渡することはできず、契約により剥奪することもできない。契約自由の原則に基づきこのような特権に対して契約約定により行使を禁ずることは有効であるが、約定に反して適正な利用の特権を行使した場合には、著作財産権の侵害ではなく契約違反となるにすぎない。従って、著作財産権者は約定違反として救済の請求ができるにすぎず、司法機関に刑罰による処罰を請求することはできない。
適正な利用に関し、第44条から第63条において例示規定が設けられているが、これとは別に本条第2項において「その他の適正な利用」が設けられており、前述の第44条から第63条における例示規定には含まれないが第2項に規定される4項目の判断基準に該当すれば「その他の適正な利用」に該当するというものである。
問題となるのは、第44条から第63条の例示規定に該当する利用において、当該条文には「適正な範囲内」又は「必要な範囲内」という文言があることから、例えば、第44条から第47条及び第49条から第52条の態様における一定の利用が認められるには、適正又は必要な範囲内であるか否かについて第2項に定められる4項目の基準により判断することができるが、その他の条文においては「適正な範囲内」又は「必要な範囲内」という文言がないため、当該条文に該当することが認められた後さらに第2項に規定される4項目の基準により適正な利用か否かを判断しなくてはならないのかという点である。文理解釈によれば、当該各条文は「適正な範囲内」又は「必要な範囲内」という文言がない以上、当該各条文の態様に該当すれば適正な利用となり、第2項に規定する4項目の基準を再検討する必要はないが、著作権専属責任機関は依然として、第44条から第63条に規定される利用に該当するものは、当該条文に「適正な範囲内」又は「必要な範囲内」という文言があるか否かにかかわらず一定の利用が認められるためには、第2項に規定する4項目の基準による判断に基づき適正な利用か否かを判断しなくてはならないと解している。
適正な利用か否かを認定する際には、第2項に規定される4項目の判断基準を一つ一つ確認し、いずれか1項目を特に重視又は特に軽視してはならない。そのうちの1項目でも否定されれば、適正な利用として認められない。
1. 利用の目的及び性質には、商業目的又は非営利教育目的であるか否かが含まれる。これは利用者の利用目的及び性質から検討され、「商業目的」の利用であれば必ず適正な利用が否定され「非営利教育目的」であれば、必ず適正な利用であるということはできない。単に「商業目的」の利用は適正な利用が否定される可能性が高く、反対に「非営利教育目的」は適正な利用が認められやすいということにすぎない。この号の適用は、やはり第一条の立法目的に合致するか否かに立ち返って判断することができ、利用者の利用目的及び性質が社会の公共利益又は国家の文化発展に資するのであれば、その利用目的が教育目的に属さなくても、プラスの評価を与えるべきであり、反対にその利用目的及び性質が社会公益又は国家の文化発展に全く資することがなければ、利用者がこれを営利手段としなくても、当該複製行為がその他のより重要な利益のためにはならないために、著作財産権者の利益を犠牲にして当該利用行為を認めることになるのは、マイナスの評価が与えられるべきである。従って、論文集の市販は、商業目的の利用ではあるものの、利用目的及び性質が社会の公共利益又は国家の文化発展に資するため、他人の著作を引用する場合について適正な利用の余地がある。反対に、学校の授業における教学利用は、非営利目的利用ではあるものの、大量に書籍を複写し学生の学習用途に供すれば、創作者の元手は実を結ぶことなく、引き続き創作することができなくなり、社会公益及び国家の文化発展を著しく損なうこととなり、著作財産権侵害に該当する可能性もある。
2. 著作の性質。これは主として利用される著作の性質から検討するものであり、利用後に生ずる新たな著作を排除しない場合に、この新たな著作の性質に対して判断するものである。研究に関する著作については適正な利用の範囲を比較的広く解してもよく、1篇の論述を複写して自己の研究閲読用に利用することは、適正な利用であると認定される。ただし、歌を1曲自己の娯楽用に利用することを適正な利用であると主張することはできないであろう。また、他人の練習問題を複写し学生に練習のために使用させることは、利用目的と利用される著作の性質が接近しすぎており、これもまた適正な利用であると主張することはできない。その他、利用の結果として新たな創作がある場合、換言すると「変容的(transformative)な利用」に該当する場合にも、比較的容易に適正な利用が認められる。
3. 利用の際の品質及び全体の著作に占める割合。この基準は相対的な比較であり、利用される著作について利用の際の品質及びその全体に占める割合を考慮し、また、利用の結果新たな著作が生ずる場合には、利用される著作が新たな著作に占める品質及び比重を考慮しなければならない。また、100頁相当の著作のわずか10頁の利用にすぎなくても、その10頁が核心部分であれば適正な利用であると主張することはできない。1首200字の新体詩の評論を1万字の論文として執筆する場合には、全文引用しても適正な利用であると主張することはできるが、3,000字の短文評論において他人の全文2,000字を引用することは適正な利用であると主張することはできない。
4. 利用結果が著作の潜在的な市場と現在の価値に及ぼす影響。この基準は、利用の結果の評価において、利用される著作に対して「市場代替効果」を生ずるか否かを評価するものである。このような「市場代替効果」の発生は必ずしも現時点ものに限られず、将来発生し得る状況をも含む。例えば、録音業者が現在ネット音楽経営市場に参入していないが将来経営範囲を拡大する可能性がある場合に、現在ネット音楽経営市場に参入していないことを理由に録音業者に対して「市場代替効果」を生じるおそれはないと認定することはできない。
第2項において適正な利用の判断基準が設けられているとはいえ、適正な利用の認定は困難であり、その原因は、法律においてその適正な質と量を明確に定めることができないという点にある。各項目について適正な利用であるか否かという問題をすべて法院により具体的な事件において判断するのであれば、不確定な状態が蔓延するだけでなく、人力と財力の無駄である。2003年の改正著作権法は、米国実務において著作権者団体と利用者団体により確立した著作の適正な利用の範囲「紳士協定(gentleman agreement)」を参考にし、第3項において著作者団体と利用者団体間において著作の適正な利用の範囲につき合意に達している場合は第2項の判断基準の参考とすることができると明確に規定し、第4項において協議において著作権専属責任機関に意見を諮問することができると明確に規定している。このように規定し、当該改正後から著作権専属責任機関は積極的に著作権者団体と利用者団体間の著作の適正な利用の範囲に関する協議のまとめ役を買って出たが、終始具体的な成果を上げることができず、最終的に失敗に終わっている。主要な原因は、現行著作権法の下においては権利侵害に対してすべて刑事処罰が設けられており、著作財産権者側から見れば適正な利用は不明確であり、いずれにせよ刑事訴訟を盾に利用者を警戒させればよく、不戦勝が確定していることから、当然、協議の合意成立を急ぐ必要はなく、また、利用者側においては、もともと適正な利用の範囲内であったものが協議を経ることにより縮小され、かえって不便を生ずるかもしれないという懸念が存在するからである。
2010年8月20日 原文修正に伴い訳文修正
コメントはこちらからどうぞ。