司法警察官又は司法警察は、他人の著作権又は製版権の侵害に対して告訴・告発を受けた場合は、法に基づきその侵害物を押収し、送検することができる。

【解説】

本条は、司法警察官及び司法警察の著作権又は製版権侵害事件に対する主体的な捜査権について規定している。刑事訴訟法第228条第1項及び第2項の規定により、検察官は告訴、告発、自首又はその他の事情により犯罪の疑いがあることを知った場合は、速やかに捜査を開始し、期限を定めて検察事務官、司法警察官又は司法警察に犯罪状況及び証拠の収集を命じ、報告書を提出させることができる。また、司法警察官及び司法警察は犯罪の疑いがあることを知った場合は、速やかに捜査を開始し、調査状況を検察官に報告しなければならない。押収に関して、同法第133条第1項は「証拠とすることができる物又は没収することができる物は、これを押収することができる。」と規定し、第136条は「押収は法官又は検察官自らが実施するほか、検察事務官、司法警察官又は司法警察に執行を命じることができる。検察事務官、司法警察官又は司法警察に執行を命じた場合は、発布する捜索状にその事由を記載しなければならない。」と規定している。

以上の規定から、本条は、特に司法警察官又は司法警察に著作権又は製版権侵害事件に対して何ら特別に主体的な捜査権を付与したものではないことが分かる。なぜなら、押収された侵害物は刑事訴訟法の規定に従って処理され、送検された後も刑事訴訟法の規定に従い関連捜査手続を続行しなければならないからである。従って、本条は本法において宣言的な意義を有するにとどまり、たとえ本条の規定がなくとも、刑事訴訟法の関連規定によれば告訴は訴追要件であり捜査要件ではないことから、司法警察官及び司法警察は、他人の著作権又は製版権を侵害する疑いがあることを知った場合には、告訴・告発を待たずに捜査を開始し、法に基づき侵害物を押収し、送検することができる。ただ、実務上は、労働力には限界があることから、司法警察官及び司法警察はいずれも権利者の告訴を待って捜査を開始し、主体的に捜査を行うことは極めてまれである。