利用者は文化創意製品を制作するために、すでに公開発表された著作について、すでに努力の一切を尽くしても著作財産権者が不明又はその所在が不明であることから、許諾を得られない場合、著作財産権専属責任機関に許諾を得ることができない状況を説明し、著作権専属責任機関の調査確認を経た後、許諾及び利用報酬の供託について許可を得た場合には、許諾範囲内において当該著作を利用することができる。

著作権専属責任機関は前項の許諾の許可について、適切な方法により公告し、政府広報に掲載しなければならない。

第1項の利用報酬の金額は、著作が通常の自由交渉により支払うべきとされる合理的な利用報酬報酬に相当するものでなければならない。

第1項の定めに基づき許諾の許可を得て完成した文化創意製品の複製物には、著作権専属責任機関の許可日、文書番号及び利用許諾条件と範囲を注記しなければならない。

第1項の許可の申請、利用報酬の詳細な計算方法及びその他遵守すべき事項の弁法は、著作権法主務官庁がこれを定める。

第1項の定めに基づき、許諾の許可を得た後、その申請に真実でない内容があることを見つけた場合には、著作権専属責任機関はその許可を取り消す。

第1項の定めに基づき、許諾の許可を得た後、著作権専属責任機関による許諾方法によらずして著作を利用した場合、著作権専属責任機関はその許可を廃止する。

【解説】

本条は、文化創意産業発展法第24条において、いわゆる「身寄りのない著作」の利用強制許諾制度を明確に規定することにより、利用者に著作を合法的に利用する門戸を開き、著作の利用及び台湾の文化創意産業の発展を促進するものである。

いわゆる「身寄りのない著作」とは、著作財産権の存続期間中であるが、著作財産権者が不明である、又はその所在が不明であるために、利用者が利用許諾を交渉するために連絡する方法がない著作をいう。著作財産権存続期間中の著作は、適正な利用に該当する場合を除き、許諾を必ず得なければ合法にはならない。しかしながら「身寄りのない著作」の利用に関しては、著作財産権者と連絡を取ることが困難であることから、利用者は利用できない、又は権利侵害リスクを負いつつ敢えて利用するかのやむを得ない二者択一を迫られることとなるのでは、社会全体に対して不利益であることから、特別な法制度により解決しなければならない。

「身寄りのない著作」の強制利用許諾制度は、公権力の介入という選択により、利用者の申請が許可された後、利用報酬を供託すれば、すみやかに利用することができることを期待するものである。本条第1項は、「文化創意製品」の製作の目的のために、すでに公開発表された「身寄りのない著作」について、如何なる者も著作権専属責任機関に対し、すでに努力の一切を尽くしたが許諾を得る方法がないことを説明し、著作権専属責任機関が再度確認した結果、やはりそうであると認めた場合、利用者が利用報酬を供託し許諾範囲において当該著作を利用することができると規定している。この制度の利用には未発行の著作は含まれず、著作者の著作者人格権である「公開発表権」を尊重している。利用者は許諾を得ることが困難であることを「説明」しなければならないだけで、「証明」することまでは求められておらず、これは「著作財産権者の不明又はその所在の不明」を「証明」することは、そもそも極めて困難なことから、「身寄りのない著作」の利用希望者は、どのように著作財産権者を調査し、そして見つけることができなかったのかを説明し、努力の一切を尽くしたことを著作権専属責任機関に納得させることができれば足り、確実な証拠によることを必要としない。利用者の「説明」の方法は、例えば、原出版社又は発行者に連絡する、メディア又はインターネットを通じて調査する、公協会又は著作権者団体への問い合わせ等である。これは利用者の「説明」にすぎないため、必ずしも「身寄りのない著作」ではないかもしれない。そこで著作権専属責任機関が再度確認の上、利用者の利用を許可するか否か決定するものとした。著作権専属責任機関の再確認に関しては、利用者の申請書の「説明」における調査方法が確かであるか否かをチェックするほか、別途、自ら行う調査方法も含まれる。利用者の「説明」になお補充すべきところがあれば、利用者に再度調査するよう要求することができる。申請者がすでに努力の一切を尽くしたかを如何に「説明」するのかについて、著作権法主務官庁は本条第5項に基づき定められた関係弁法における明文規定をガイドラインとすることができる。

利用者の申請及び「説明」に対して、一旦、著作権専属責任機関が再度確認した後も著作財産権者が見つからなければ、許諾の許可を得ることができ、利用者は利用報酬を供託した後、著作を利用することができる。この許可の可否決定は、著作権専属責任機関の行政処分であり、不服申立の対象となり得る。許可された場合、著作財産権者は不服申立を行うことができ、許可されなかった場合、申請者は不服申立を行うことができ、また、許可されたとしても、例えば申請者が許可の費用の比率が不合理であると考える場合にも、不服申立を行うことができる。この許諾について、第1項は「許諾の許可」であると明確に規定しているものの、実際は「強制許諾(Compulsory Licence)」であり、著作権専属責任機関は利用者の申請に基づき、行政処分によりその申請を許可し、著作財産権者に許諾を強制しているのであり、その許諾を行う者は依然として「身寄りのない著作」の著作財産権者であり、将来、著作財産権者は利用を許可された申請者が著作を利用することに反対、又は利用者が著作財産権を侵害していると主張することはできず、利用者が供託した利用報酬を受領することしかできない。注意を要するのは、著作権法第69条の音楽著作の強制許諾規定と同様、著作権専属責任機関が決定した比率に基づき利用報酬を供託せず、先に利用した場合、著作財産権侵害になるという点である。この点は第47条が先に利用して後から費用を支払えばよいとしている点で大きく異なる。

著作権専属責任機関が許諾を許可する行政処分について、公示を伝達、周知させるために、第2項は、著作権専属責任機関は当該処分を適切な方法で公告し、政府広報に掲載しなければならないと規定した。経済部智慧財産局は、同局のウェブサイト(http://www.tipo.gov.tw)において公告し、且つ行政院公報に掲載する。

本条は、利用者が「身寄りのない著作」を利用する際に許諾を得ることが困難であることを解決するためのものであり、著作財産権者の経済利益を剥奪するためのものではない。従って、著作権専属責任機関は許諾を許可するとき、同時に利用者が供託する利用報酬も決定すべきものとし、第3項は当該利用報酬の金額は、著作が通常の自由交渉により支払うべきとされる合理的な使用報酬に相当するものでなければならないと特に規定することで、著作財産権者の経済利益を損なうことのないようにしている。

第1項に基づき「身寄りのない著作」の利用を許可されて完成した文化創意製品の複製物がその許諾元を明示し、著作財産権者の権益を保護するために、第4項は当該複製物に著作権専属責任機関の許可日、文書番号及び利用許可の条件と範囲を明記しなければならないと規定した。

本条の「身寄りのない著作」の強制利用許諾制度の運用に資するため、且つ適法性を満たすために、第5項は明文で著作権法主務官庁に、第1項の許諾申請の許可、利用報酬の詳細な計算方法、供託及びその他遵守すべき事項について、別途関係法令を制定することを授権し、執行の根拠とするものとした。

「身寄りのない著作」の強制利用許諾の許可は、著作財産権者の権利を侵害することのないよう、その申請と許可後の利用はいずれも法に基づきこれをなさなくてはならない。そこで第6項は、強制許諾の許可を得た後、先の申請に虚偽内容があることを見つけた場合には、著作権専属責任機関はその許可を取り消すものと規定し、第7項は、許諾の許可を得た後、著作権専属責任機関による許諾方法によらずして著作を利用した場合、著作権専属責任機関はその許可を廃止すると規定している。許可が取り消された案件は、始めから許可すべきでなかったものであるため、その効果は、「始めから無効」であり、許可を廃止された案件は、適法に許可された後、規定に基づきこれをなさなかったのであるから、その効果は「それ以降、無効」である。