1. 原作の解説において使用されている「中華民国」との表現は、国際慣例を考慮して「台湾」と統一表記し、条文自体に使用されている「中華民国」との表現は、原文通り「中華民国」との表現を用いた。また、台湾公文書において現在も、中華民国が成立した1912年を中華民国元年とする暦が使用されているが、読者の便宜を図って西暦に統一した。このような一連の表現は、法的正確性と国際的な一般慣習を考慮した結果であり、当然、原作者の了承も得ており、翻訳過程において政治的な他意は一切ないことをここに固くお断りしておく。
  2. 日本語として理解できるもの、行政官庁の名称等は原則的にできる限り原文に近いものを採用した。
  3. 台湾著作権法にいう「著作(原文)」とは、日本法にいう「著作物」であり、英語でいえば「Works」であるが、台湾著作権法にいう「著作物(原文)」は有体物であり、日本法にいう「著作物」とは全く異なる概念である。日本人にとっては、「物」は「もの」であって無体物であるという理屈は非常に分かりやすいが、日本語が理解できない中国語圏の方にこれを説明するのは至難の業である。著作権法に精通している日本人や中国人翻訳者でもうっかりミスをするし、一般の翻訳者においては混同している節もある。また、時折、日本語を理解できない中国語圏の学者から、日本著作権法は創作成果とそれが固定された媒体との区別が曖昧だとの指摘を受ける所以でもある。台湾著作権法も日本の影響を受けているため、かつてはすべて「著作物」という表現を使用していたが、非常に紛らわしく誤解を招きやすいとのことから、1985年以降、「著作」という表現に改められた 。従って、本書では、知的創作成果、即ち「著作(原文)」はそのまま「著作」とし、「著作物(原文)」を「著作物品」とした。
  4. 本書では、「著作権(原文)」はそのまま「著作権」と翻訳してある。日本では単に「著作権」という場合、「著作財産権」を指す用語であるが、台湾著作権法第3条の定義によれば、「著作権」とは、著作の完成により生ずる「著作者人格権」及び「著作財産権」の両者を含む概念である。
  5. 「公開口述」「公開放送」「公開上映」「公開演出」「公開送信」「公開展示」「公開発表」等の用語にいう「公開」とは即ち「public」であり、日本語では「公衆○○」「公に○○する」と表現されるものである。そのまま日本語として理解できることから、本書においては、あえて日本法に倣って訳さず、名詞又は動詞としてそのまま使用した。
  6. 中国語の「出租」は、有償で貸し与えることを意味し、無償ではあり得ないが、日本著作権法にいう「貸与」は本来、有償無償を問わないばかりか、契約が貸借形式でなくとも貸与と同等の効果を生ずるものはすべて貸与として扱われることに鑑みて(日本著作権法第3条第8項)、「出租」をあえて「貸与」とは訳さず「賃貸」とした。また、中国語の「出借」は「無償貸与」とした。それ故、本書には「貸与権」ではなく、なじみのない「賃貸権」なる用語が登場することをご了解いただきたい。