中華民国 81年(1992年)6月10日本法改正施行前に、中華民国 81年(1992年)6月10日改正施行前の本法の保護を受ける外国人の著作を翻訳し、その著作権者の同意を得ていない場合は、中華民国 81年(1992年)6月10日本法の改正施行後、第44条から第65条の規定に該当する場合を除き、再び複製してはならない。
前項の翻訳の複製物は、中華民国 81年(1992年)6月10日本法の改正施行から2年の期間満了後は、販売してはならない。

【解説】

本条は俗に「6月12日の最終期限」と称され、即ち1992年6月10日以前に著作財産権者の同意を得ず翻訳された外国人の著作は1994年6月12日以降販売してはならず、1994年6月12日までしか販売することができないことについて規定している。

これは、1992年6月10日の著作権法改正前、外国人の著作は台湾において著作権登録のないものは台湾著作権法の保護を受けず、また、米国人の著作については、1946年11月4日締結した「中華民国及びアメリカ合衆国間の友好通商航海条約」の約定により台湾において国民待遇を享受することから、著作権登録がなくとも著作権法の保護を受けたが、いずれにせよ、著作権法の保護を受ける外国人の著作であるか否かにかかわらずその翻訳権はすべて保護を受けず、換言すれば国民は許諾を得ずに自由に外国人の著作を翻訳しても違法ではなかったことから、国内の多くの出版社が外国名著の中国語翻訳書を大量発行し販売・普及を行っていたことに起因する。

1992年6月10日改正著作権法はこのような要件を設けず、著作権法の規定に該当し保護を受ける外国人の著作は著作権登録手続を経ずに保護を受けるものとし、台湾著作権法の保護を受ける外国人の著作はその翻訳権もまた保護を受けるものとし、台湾において保護を受ける外国人の著作を翻訳したい場合には同意又は許諾を得なければならないとした。ただし、これ以前に法律の規定を信じ、すでに翻訳が完成しかつ市場において販売されている翻訳書については、著作権法はその信頼の利益を保証するために第112条において1992年6月12日の新法施行発効日から印刷製作してはならず、すでに印刷製作を終了しているものは2年の期間満了後は販売してはならないものとした。従って、販売することができるのは1994年6月12日までであり、出版社は従前の未許諾の翻訳書を1994年6月12日までにできる限り販売しなければならないこととなった。これがいわゆる「6月12日の最終期限」である。

「6月12日の最終期限」に違反し引き続き販売する行為に対して、1992年6月10日改正著作権法においては民事上の損害賠償請求ができるにとどまり、刑事責任は追及できなかった。1998年1月21日改正著作権法は、第95条第4号において「1年以下の有期懲役、ニュー台湾ドル5万元以下の罰金を併科することができる」との刑罰規定を新設した。当該条項は2003年7月9日再び改正され、「第112条の規定に違反した者は、1年以下の有期懲役、拘留若しくはニュー台湾ドル2万元以上25万元以下の罰金に処し、又は罰金を併科することができる。」と改められた。