共同著作の著作者人格権は、著作者全員の同意を得なければ、これを行使することはできない。各著作者は、正当な理由なく同意を拒絶してはならない。
共同著作の著作者は、著作者の中から代表者を選定して著作者人格権を行使することができる。
前項の代表者の代表権に対して設けられた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
【解説】
共有財産権の行使に関して、民法第831条は、「本節の規定は所有権以外の財産権において数人の共有又は共同共有者に準用する」と規定している。著作者人格権は著作財産権とは異なり、財産権の一種ではない。従って、共同著作の著作者人格権については、民法第831条の共有規定が準用されず、個別に享有することとなる。共同著作の著作者人格権は各著作者に及ぶことから、著作者全員の同意を得なければこれを行使することはできない。ただし、そのうちの一人が同意を拒絶し著作の利用に不便をきたすような場合について、法律は、正当な理由なく各著作者は同意を拒絶してはならないと規定した。いわゆる「正当な理由」とは、例えば、文章が個人のプライバシーに及び当分の間公表することに不都合がある又は氏名を表示することに不都合がある等をいう。共同著作者の「事前許諾」又は「事後承認」は、いずれも「同意」である。事前許諾を得て著作者人格権を行使する行為は当然に本条の規定に該当するものであり、また、許諾を得ないまま著作者人格権を行使する行為であっても、共同著作者全員の事後追認があれば、有効な権利行使行為となる。
共同著作の著作者が非常に多い場合、著作者人格権を行使する際に、一人一人の同意を得なければならないのは非常に不便である。そこで、これらの共同著作者の中から代表者を選定し、著作者人格権を行使することができることを認めた。この代表者の定員は一名に限定されず、複数でもよい。代表者を選定した場合に、その他の著作者により選定された代表者に対して、その代表権を制限する約定が設けられていたとしても、必ずしも第三者に周知されているとは限らないことから、当該第三者が善意で事情を知らない場合には、このような制限は当該第三者に対して有効とすることはできない。当該代表者の行為がその同意を得ている授権範囲を超えていたとしても、善意の第三者が信頼しているその行為により生じた法的効果には影響を及ぼさない。
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