未公表著作の原作品及びその著作財産権は、売買の目的とする場合又は本人が許諾した場合を除き、強制執行の目的とすることができない。

【解説】

本条の目的は、著作者の公開発表権の保護にある。

著作原作品及び著作財産権はすべて財産権に属する以上、著作者が債務者になった場合には、債権者は本来その著作原作品及び著作財産権を強制執行の目的とすることができるが、未公表著作については、著作者の公開発表権を保護し、強制執行の結果その著作が公表されることを回避するために、本条は明文により、原則として未公表の著作原作品及びその著作財産権は強制執行の目的とすることができないと規定した。

著作原作品又は著作財産権を売買の目的とする場合、著作者はその売買により著作の公表に至るであろうことは想定の範囲内であることから最終的にこれを認め、その公開発表権を保護しないものとした。著作原作品の所有権又は著作財産権の譲渡が、第15条第2項第1号又は第2号に基づき「著作者がその著作の公開発表に同意したものと『推定』される」場合に、この「推定」は、著作者が明示することでその著作の公開発表を許さないものと覆すことが可能であるが、本条においては、著作原作品又は著作財産権がすでに売買の目的とされ強制執行が発生した場合、買主を保護するために、強制執行をすることができ、著作者はこれに反対することができない旨明文により規定した。また、著作者本人が強制執行の目的とすることを承認している場合には、当然保護の必要はない。以上がこのような但書が設けられた理由である。