著作者は本法に別段の定めがある場合を除き、所有権移転によりその著作を頒布する権利を専有する。
実演家は録音著作に複製された実演について、所有権移転によりその著作を頒布する権利を専有する。

【解説】

譲渡権は、実体環境における「有体(tangible)」の著作原作品又は著作複製物を客体とし、有線・無線放送又はネットワーク環境における「無体(intangible)」の放送(broadcast)又は送信(transmission)はこれに含まれない。その主たる目的は、複製権の不足を補うためである。台湾著作権法は2003年7月の改正の際に、WCT第6条、WPPT第8条及び第12条の保護基準に照らして、正式に著作者の譲渡権の享有を追加し、第59条の1において「権利の消尽」と併せて規定を設けた。

譲渡権の客体は「著作物品」であり、「著作」ではない。また、譲渡権のポイントは「所有権の移転」の実際の引渡行為にあるのではなく、「所有権移転を目的として公衆に著作原作品又はその複製物を提供する」ための準備行為にある。同様に、実演家の譲渡権の客体も実演が複製収録されている「録音著作原作品又はその複製物」であり、録音著作に複製されている「実演」ではない。その譲渡権の対象行為とは「所有権移転を目的として、実演が複製収録されている録音著作原作品又はその複製物を公衆に提供する」ことをいい、「所有権移転の方法による頒布」だけに限られるものではない。

「譲渡権」の下では、商品の販売(ファースト・セール)は、正規版か海賊版かにかかわらず著作権者の許諾を得る必要があり、違反した場合には、第91条の1に基づき処罰される。「ファースト・セール・ドクトリン」とは、著作権者が合法的に商品を販売(ファースト・セール)した後は別の者による転売を禁止することはできないことをいい、換言すると、著作者はファースト・セール以降の販売に対して権利を有しないということである。「輸入権」とは、国外から商品を適法に輸入する際、当該商品が何度目の取引により輸入者の手に渡ったのかにかかわら