外国人の著作が次に掲げる各号のいずれかに該当する場合は、本法により著作権を享有する。ただし、条約又は協定に別段の定めがあり、立法院の議決を経たものにあっては、その規定による。

(1) 中華民国 の管轄区域内において最初に発行、又は中華民国 の管轄区域外において最初に発行された後30日以内に中華民国 の管轄区域内において発行された場合。ただし、当該外国人の本国において中華民国 の著作が同一条件下において保護を受け、かつ事実である旨立証された場合に限るものとする。
(2) 条約、協定又はその本国の法令、慣習により、中華民国人 の著作が当該国家において著作権を享有する場合。

【解説】

著作権法は、国内法及び属地主義の原則によることから、著作権法の適用は本来、台湾における台湾人(又は台湾法に基づき設立された台湾法人を含む。以下同じ。)の著作の保護に限定される。あらゆる著作が世界各地で保護を受けられるよう、各国は国際著作権法制により確立された相互保護原則に則り、各国の著作権法において外国人の著作の保護について規定を設けている。

外国人の著作の保護については通常、「相互保護原則」及び「発行地原則」が確立されている。いわゆる「相互保護原則」とは、国家と国家の間で相互に相手方国民の著作を保護することであり、通常は二国間又は多国間の著作権保護条約又は協定に基づく。いわゆる「発行地原則」とは、著作者の所属国家と本国が著作権の相互保護関係を確立していないが、当該著作が本国国内において最初に発行されるということは著作者が本国の市場を重視していることの表れであり、外国著作が本国において最初に発行されることを奨励するために本国においても保護を与えるものである。

「相互保護原則」及び「発行地原則」のほか、外国人の著作の保護については「国民待遇原則」を適用しなければならない。即ち、本条にいう「本法により著作権を享有する」との真意は、「相互保護原則」又 は「発行地原則」に基づき外国人の著作を保護することを決定したからには、これらの外国人の著作は台湾において国民待遇を受け、つまり台湾人同様に台湾著作権法が適用され、その保護を受けるということである。

「国民待遇原則」は、本国の国民同様の保護を享有するというだけでなく、時として本国国民の保護基準を「下回らない」ということでもあり得る。従って、第4条本文但書は「ただし、条約又は協定に別段の定めがあり、立法院の議決を経たものにあっては、その規定によるものとする」と規定し、外国人の著作の保護に対して台湾人に優る待遇を与えることができる。例えば、現在ロシアと台湾の間には著作権の相互保護関係が確立されていないが、ある特定のロシア国民の著作が台湾の管轄区域内において最初に発行されていない場合、本来、台湾著作権法の保護を受けない。しかしながら、「AGREEMENT FOR THE PROTECTION OF COPYRIGHT BETWEEN THE COORDINATION COUNCIL FOR NORTH AMERICAN AFFAIRS AND THE AMERICAN INSTITUTE IN TAIWAN」(以下「台米著作権保護協定」という。)第1条第4項の規定により、それが日本における最初の発行から1年以内に書面による独占的許諾が台湾人に与えられ、すでに台湾の管轄区域内において流通しているものにあっては、台湾著作権法の保護を受ける。

外国人の著作が台湾著作権法による保護を受ける方法には、3つの類型がある。
1. 著作権法第4条第1項の「最初の発行」に該当する場合には、次の3種類がある。
(1) 台湾の管轄区域外において発行されたことがなく、最初の発行が台湾の管轄区域内である著作
(2) 台湾の管轄区域外及び台湾の管轄区域内で同時に最初に発行された著作
(3) 台湾管轄区域外における最初の発行から30日以内に台湾の管轄区域内で発行された著作
上記外国人の著作に対する最初の発行という保護要件は、当該外国人の本国において台湾人の著作に対して同一の条件下において保護される場合に限定される。外交部による調査に対する回答により、これまでに確認された同一の保護を受けている国家又は地区は次のとおりである。モーリシャス、スウェーデン、日本、ノルウェー、ブラジル、オーストリア、コスタリカ、フィンランド、マラウイ、エクアドル、オランダ、アルゼンチン、ベルギー、エルサルバドル、ボリビア、マダガスカル、オーストラリア、マレーシア、フィリピン、ドミニカ、ペルー、ドイツ、トンガ、デンマーク、シンガポール、ポーランド。このほか、トリニダード=トバゴ、トルコ、ヨルダンは台湾人の当該国家において最初に発行されたものに限り保護しているが、当該国家以外の国において最初の発行から30日以内に当該国家において発行されたものは含まれない。従って、これらの国々の国民は、台湾の管轄区域内において最初に発行されなければ台湾著作権法の保護を受けることはできない。つまり、台湾の管轄区域外において最初に発行され、発行後30日以内に台湾の管轄区域内において発行されたとしても、台湾著作権法の保護は受けられない。

2. 著作権法第4条第2号「相互保護原則」に該当する場合。
条約、協定又はその本国の法令、慣習に基づき、台湾人の著作が当該国家において著作権を享有する場合である。台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟する前から台湾と著作権相互保護関係にある国家の国民の著作には、米国人、イギリス人、スウェーデン人及びニュージーランド人等が完成させた著作、台湾地区に居住するスペイン及び韓国国籍を有する者が完成させた著作が挙げられるが、相互保護関係の根拠はそれぞれ異なり、以下、順に説明する。

(1) 条約又は協定により著作権相互保護関係が確立された国
① 米国:1946年に調印された「中米友好通商航海条約」第9条は、「米国人の著作」は中華民国 において国民待遇の著作権保護を享有することを規定し、1993年7月16日に調印された「台米著作権保護協定」において「米国人の著作権」保護が追加された。
② ニュージーランド:1998年6月15日に調印され2000年12月18日に発効した「ニュージーランド駐在台北経済文化事務所とニュージーランド商工事務所の著作権保護及び相互保護の実施に関する弁法」に基づき、台湾、ニュージーランド双方は相互に相手方国民の著作を保護する。
(2) 外国の本国法令に基づき、著作権相互保護関係が確立された国
① イギリス:イギリス国会において採択された「1985年台湾著作権保護令(The copyright(Taiwan) Order 1985)」が1985年12月17日に発効し、台湾人の著作を保護することにより、イギリス人の著作は1985年12月17日より台湾著作権法の保護を受ける。
② スイス:1992年スイス「著作権及び隣接権法」に基づき、スイスは1993年7月1日より全面的に各国国民の著作を保護していることから、スイス人の著作も1993年7月1日より台湾において保護を受ける。
③ スペイン及び韓国:いずれもその本国の著作権法令単独で開放的に当該国家に居住する外国国民の著作を保護していることから、台湾人の著作も保護を受け、従って、台湾も当該国家の国民又は当該国家の国民であって台湾に居住する者の著作を保護する。
3. 著作権法第4条但書「条約又は協定に別段の定めがあり、立法院の議決を経たもの」
1993年7月16日に調印された「台米著作権保護協定」に基づき、台湾及び米国の国民の著作が台湾著作権法の保護を受けるほか(台米著作権保護協定第1条第3項甲号)、次に掲げる著作も台湾著作権法の保護を受ける。
(1) 米国において最初に発行された著作又は米国国外において最初に発行された後30日以内に米国で発行された著作(台米著作権保護協定第1条第3項乙号)。
ただし、当該外国人の本国が台湾人の当該国家において最初に発行した著作に対して保護を与えない場合は、台湾は当該外国人の著作の保護について制限を加える(台米著作権保護協定第1条7項)。
(2) ベルヌ条約又は万国著作権条約の加盟国が国内において最初に発行した著作で、最初の発行から1年以内に下記の者の書面による契約書により著作財産権を取得又は独占的許諾を得て、当該著作が台湾又は米国においてすでに公衆に流通しているもの(台米著作権保護協定第1条第4項)。
① 米国人又は台湾人
② 米国人又は台湾人が50%以上の株式又はその他の専有利益を有する法人(所在地は問わない)
③ 米国人又は台湾人が直接支配する法人(所在地は問わない)
④ 米国法人又は台湾法人の支分機関又は子会社の支配下にある法人(所在地は問わない)
(3) 米国に住所を有する者の著作(台米著作権保護協定第1条第6項)。ただし、当該外国人の本国が当該国家に住所を有する台湾人の著作に対して保護を与えない場合は、台湾はその外国人の著作の保護について制限を加える(台米著作権保護協定第1条7項)。
(4) 台湾に住所を有する者の著作(台米著作権保護協定第1条第6項)。ただし、当該外国人の本国が台湾人の著作に対して保護を与えない場合は、台湾はその外国人の著作の保護について制限を加える(台米著作権保護協定第1条7項)。

「台米著作権保護協定」の適用の結果、台湾と相互保護関係にない多数の外国人の著作が台湾において保護を得ることとなった。その主要な理由は次のとおりである。
① 「台米著作権保護協定」は、台湾著作権法第4条但書の規定により、著作権法の特別法であり、立法院の議決を経ており、当然、台湾著作権法に優先して適用される。
② 政治的な要因により、台湾は国際的な著作権条約に加盟し世界の大多数の国々と著作権相互保護関係を確立することができないことから、ほとんどの外国人の著作が台湾において保護を受ける方法がなく、「米国人の著作権」に影響を及ぼしていた。そのことから、「台米著作権保護協定」の目的は「米国人の著作権」の保護であって、「米国人の著作」の保護にとどまらず、協定の適用の結果、台湾著作権法による保護が大多数の米国と関係のある国家の国民の著作にまで及ぶことにより、「米国人の著作権」を確実に保護しようとする点にある。
③ 平等原則に基づき、「台米著作権保護協定」は「米国人の著作権」保護のほか、「台湾人の著作権保護」に対し不平等な扱いをしてはならないものとしていることから、「台米著作権保護協定」の「保護を受ける者」には「台湾人」が含まれ、従って「台湾人」と関係のある米国以外のあらゆる「外国人の著作」も台湾の管轄区域内において「台湾人」により保護を主張することができる。ただし、「台米著作権保護協定」は自身が定めた「保護を受ける者」を保護するにすぎず、「外国人の著作」が「台米著作権保護協定」に基づき保護を受ける場合に保護を主張できる者は、「台米著作権保護協定」に定められる「保護を受ける者」に限られ、例えば、独占的許諾を取得した台湾人が当該協定にいう「保護を受ける者」でなくなれば、独占的許諾を与えた著作権者は、台湾の管轄区域内において保護を主張することはできない。

「台米著作権保護協定」の適用により台湾が一方的に外国人の著作を保護し、当該外国が台湾人の著作に保護を与えないという不公平な結果が生ずることを回避するため、協定の第1条第7項は次のとおり規定した。「上述の第(3)項乙号及び第(6)項の規定にかかわらず、北米事務協調委員会により代表される地区の保護を受ける者が本協定の非当事者の領域において最初に発行した著作に対して本協定の非当事者領域が保護を与えない場合に、北米事務協調委員会により代表される地区は、対等の方法により本協定の当事者ではない領域の市民、国民又は法人の著作に対する保護に制限を設けることができる。」

中国大陸、香港及びマカオ等の地区の自然人は、国籍法の認定により依然として中華民国の国民であり 、各地区の法律により設立された法人も「外国人」と称することはできず、その著作権の保護はそれぞれ「台湾地区と大陸地区人民関係条例」第78条及び「香港マカオ関係条例」第36条の規定により定められる。
① 中国大陸:台湾はすでに1989年8月、中国大陸人民もまた中華民国の国民であるとし、 その著作も台湾地区と台湾人民同様に台湾著作権法の保護を受けることを宣言している。実際、中国大陸地区人民の著作は台湾地区において著作権保護を受け、その保護は台湾地区人民の基準に準ずるものである。ただし、均衡の原則に基づき、「台湾地区と大陸地区人民関係条例」第78条は「大陸地区人民の著作権が…台湾地区において侵害を受けた場合、その訴訟提起又は自訴提起の権利は(訳注:自訴とは、犯罪の被害者が、法院に直接提訴し、被告人の刑事責任を追及するよう求める行為をいう。以下同じ。)、台湾地区人民が大陸地区において享有する同等の訴訟権利をその限度とする」と規定しており、中国大陸地区の人民の著作権が台湾地区で侵害を受けた場合の訴訟提起、自訴提起の権利に対して制限を設けている。中華人民共和国の1997年3月10日改正、10月1日施行の刑法第217条の規定によれば、営利を目的とした著作権者の同意を得ていない複製行為で、かつ、違法所得金額が非常に高額又はその他深刻な事情がある場合でなければ、刑事責任を追及することができないとされており、これに対して台湾著作権法は、営利性を問題とせずに拡充した刑事処罰を設けており、両者の間には隔たりがある。法務部の1998年3月19日、1998年度法検字第7288号の通達によれば、「大陸地区の人民の著作権について台湾地区において非営利目的の複製がなされたとしても、『台湾地区と大陸地区人民関係条例』第78条の規定の趣旨に従い、大陸地区人民は訴訟提起、自訴提起を行うことができない。」ため、現在、台湾地区における中国大陸人民の著作権保護は台湾地区の人民よりやや劣るが、それは、中国大陸の著作権侵害に対する刑法による保護基準が相対的に低いことに起因する。
② 香港:香港人の著作権相互保護については、「香港マカオ関係条例」第36条において次のとおり規定されている。「香港又はマカオの住民又は法人の著作は、次に掲げるいずれかに該当する場合、台湾地区において著作権法に基づき、著作権を享有する。1、台湾地区において最初に発行され、又は台湾地区外において最初に発行された後30日以内に台湾地区で発行された場合。ただし、香港又はマカオが台湾地区人民又は法人の著作に対し同一条件下において保護を与え、かつ調査の結果事実に相違ないことが確認された場合を限度とする。2、条約、協定、協議、又は香港、マカオの法令又は慣習により、台湾地区人民又は法人の著作が香港又はマカオにおいて著作権を享有する場合。」1997年7月1日より前においては、香港法人は「香港1990年著作権台湾法令」に依拠し、1991年2月12日より次に掲げる著作について台湾著作権法の保護を受ける。(1)1990年8月1日以後完成した香港法人の著作(2)1990年8月1日より前において未発行の香港法人の著作。香港地区の自然人については、中華民国の国籍を有する者は 、その著作は著作権法の保護を受ける。イギリス国籍を有する者は、中英間の著作権相互保護原則により、その著作権もまた台湾著作権法の保護を受ける。1997年7月1日以降、行政院大陸委員会香港事務局1997年11月4日港局字第8670091号書簡調査の結果によれば、台湾人の著作は、香港の主権移転後も「香港版権条例」に基づき、依然として香港著作権法の保護を受けることが確認されたことにより、「香港マカオ関係条例」第36条第2号の規定に基づき、香港法人及び香港住民(自然人)の著作に引き続き保護を与えるものとした。保護範囲は次のとおりである。(1)1990年8月1日以後完成した香港特別行政区住民又は法人の著作(2)1990年8月1日より前において未発行の香港住民又は法人の著作。また、香港住民が1997年7月1日より前に中華民国国籍 を有することに基づき著作権保護を得た著作は、引き続き台湾著作権法の保護を受ける。1997年7月1日以降の香港特別行政区住民又は法人の著作は、「香港マカオ関係条例」第36条第1号の規定により、台湾地区において最初に発行され、又は台湾地区外で最初に発行された後30日以内に台湾地区において発行された場合は、著作権法の保護を受ける。
③ マカオ:「香港マカオ関係条例」におけるマカオに関する部分は、1999年12月20日に施行され、「香港マカオ関係条例」第36条第2号の規定に基づき、中澳双方は2000年9月14日から双方の国民の著作権を相互に保護している。

本条の規定により保護を受ける外国人の著作、「台湾地区と大陸地区人民関係条例」第78条の規定により保護を受ける中国大陸人民の著作、「香港マカオ関係条例」により保護を受ける香港、マカオ人民の著作はいずれも本法の規定に依拠し、その本国又は中国大陸及び香港、マカオの区別なく著作権法によりその著作権が保護されることを規定している。

2002年1月1日に台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟後、台湾は当該組織の構成員と著作権相互保護関係を確立し、各構成員の国民(自然人及び法人)の著作は、第4条第2号の条約又は協定に基づき、台湾において国民待遇を享有することとなった。

また、当該各外国人の著作が第4条に規定される要件に該当し、台湾著作権法に基づき著作権を享有する場合、その著作財産権の存続期間の起算、権利帰属等は当然台湾著作権法が適用されるが、その著作権の保護は当該条文に該当した日から起算され、遡及効果はない。当該外国人の著作は、台湾著作権法の保護を受ける日より前にあっては保護されない以上、誰が利用しても著作権侵害にはならない。ただし、当該外国人の著作が保護を受けることとなった後も引き続き利用している場合には、著作権法に別段の定めがある場合、例えば、第106条の2又は第106条の3に該当するような場合を除き、著作権侵害に該当する場合がある。2000年11月15日に完成した日本人の著作が2001年1月1日に台湾で最初に発行された場合は、当該著作は2001年1月1日の発行日より台湾著作権法の保護を受けるのであって、2000年11月15日の完成日から保護を受けるのではない。行為者が同意を得ず2000年11月25日に印刷しても、行為時には当該日本人の著作は台湾において台湾著作権法の保護を受けないことから著作権侵害にはならないが、2001年1月1日より保護を受けることとなった後引き続き印刷すれば、複製権侵害となる。2000年11月25日に許諾を得ず印刷された複製物について、2003年7月11日より前に販売しても、この期間、著作財産権者には譲渡権がないため著作権侵害にはならないが、2003年7月12日より発効し施行された新著作権法第28条の1が著作財産権者に新たに譲渡権を付与したことから、これらの複製物をこの日以降に頒布することについては、譲渡権の侵害に該当する。

同様の理論により、第4条第2号の相互保護協定を締結した国家の国民の著作に該当するものも協定の調印日から保護を受けるものとされ、創作完成の日から保護を受けるものではない。