中央又は地方機関、法に基づき設立された教育機構又は公衆の使用に供する図書館は、次の各号に掲げる公開発表された著作に付随する摘要を複製することができる。

(1) 学位授与法に基づき執筆された修士・博士論文であって、著作者がすでに学位を取得しているもの。
(2) 定期刊行物に記載された学術論文。
(3) 公開発表された研究会の論文集又は研究報告。

【解説】

本条の目的は、論文の摘要に必要な適正な利用を確立・提供することにあり、これは、行政院国家科学委員会が推進に努めた結果実現された立法である。本条の利用の主体となれるのは「中央又は地方機関、法に基づき設立された教育機構若しくは公衆の使用に供する図書館」に限定され、その利用の客体は、情報検索者の用に供される関連論文の「摘要」に限定される。ただし、これには全文の利用は含まれず、全文の利用を行う場合には許諾を得なければならない。「摘要」のない論文について利用者が自ら「摘要」を作成することは、法により禁止されるものではない。

また、修士・博士の学生の氏名、論文名称、指導教授、学校名称等は単なる一般資料にすぎず、論文の内容ではないので、著作権法の保護を受けない。「論文目次」も具体的にまとまった創作内容がないため、著作権法の保護を受けない。「参考文献」には著作名称、著作者氏名、出版社及び出版年月が記載されているだけで著作の定義には該当しないため、本法の保護を受けるものではない。従って、現行「全国博士・修士論文情報ネットワーク」には、摘要のほか、学生の氏名、論文名称、指導教官、学校名称、「論文目次」及び「参考文献」が併せて表示されるが、著作権侵害には該当しない。

本条の利用態様は「複製」であるが、ネットワーク環境下におけるネットワークを介した情報検索の需要はいっそう切実なものとなっており、論文の摘要の「公開送信」も適正な利用となるよう、今後これを拡大する法律改正を行うべきである。現在、著作権専属責任機関は行政解釈の方法により、第65条第2項の規定を適用し、適正な利用の成立余地があることを認めている。

2010年5月7日原文修正に伴い、訳文修正。