営利を目的とせず、観衆又は聴衆に直接的又は間接的に如何なる費用も徴収しないものであって、実演家に報酬が支払われないものは、その活動において他人が公開発表した著作を公開口述、公開放送、公開上映、又は公開演出することができる。

【解説】

本条は、非営利活動に関する適正な利用であり、次の条件を満たさなければならない。
1. 営利を目的としない。これは、直接的又は間接的に如何なる営利目的も有していないことをいい、「営利目的」であるか否かの認定は、利用目的が経済的な利益を直ちに実現するものであるか否かのほか、経済的利益が無形のものに転換される又は直ちに経済的利益は発生しないが後に発生する可能性をも考慮すべきである。会社の従業員に対する慰労又は顧客への感謝の意を表して行う映画鑑賞会又は尾牙同楽会(訳注:商人には陰暦の毎月2日と16日に半月の商売繁盛を感謝する習慣があり、そのうち16日の祝祭を「作牙」と称し、年末最後の「作牙」を「尾牙」と称した。現代では、企業のオーナーがこれに乗じて従業員の日ごろの労苦をねぎらう宴会をホテル等で催す。その際、従業員だけでなく、特に外部から重要な顧客を招き、各種演出が行われることもある。)のカラオケ大会等の演出は、すべて営利目的に結びつく。その他、企業のイメージアップ活動のサポートとして著作を利用又はビジネスと公益が結合した活動に著作を利用する場合も「営利目的」行為であると認定される。例えば、新製品発表の記者会見において、たとえ如何なる費用も徴収せず無償で試供品を配布したとしても、会場で市場販売促進CDをバックミュージックとして流しているような場合は、この記者会見は経済的な利益を得ることを目的としているものであるため「非営利目的」ではなく、本項の要件に該当しない。しかし、内部の集まりであって、管理者・従業員が自ら扮装して舞台に上がり出し物を提供し、純粋に自ら楽しむための演出である場合には「非営利目的」であると認定される。

2. 観衆又は聴衆から直接的又は間接的に如何なる費用も徴収しない。例えば、会員費、場所代、清掃費、飲食費、管理費、セキュリティ費又はその他の名目により費用を徴収する場合は、それが如何なる名目であろうと本項の要件に該当しない。その他、新聞雑誌を購入するとそれに掲載されているクーポン券を入手することができる又は商品を購入すると入場券がついてくる等の引換行為であっても、やはり、その入場券の取得のためにその新聞雑誌又は商品を購入しなければならないため、費用の支払であると認められ、本項の要件に該当しない。

3. 実演家に報酬を支払わない。ここにいう報酬には、車代、出席費又はその他のあらゆる実体物等の対価が含まれる。車代については、支払うことが許されないものではないが、その支払が通常の交通の往復実費を超える場合には報酬であると認められ、本項の要件に該当しない。

4. 特定の活動に限定される。前述の3つの要件を満たさなければならないほか、経常的又は定例的な活動ではなく特定の活動であることが必須条件である。例えば、官公庁、学校、会社、商店が毎日午後の休憩時間に音楽を放送する、又は毎月祝賀会、映画鑑賞会を催す、学校の年度映画祭等はいずれも本項の要件に該当しない。

5. 利用対象著作は「すでに公開発表」された著作に限定され、未公開著作である場合は著作者の著作者人格権を尊重し、本条により適正な利用を行うことができない。

選挙運動において、候補者が聞きなれた音楽著作をセレクトし個人の選挙戦の宣伝道具とすることがよくあるが、これは一連の選挙戦活動における使用であることから、許諾を得なければ行うことができず、本条の規定は適用されない。

本条項の活動に該当するとはいえ、営業場所において行われ営業場所が著作を提供する場合、例えば、レストラン又はホテルの客室におけるカラオケ歌唱や映画観賞は、提供者に営利目的があるため、本条の適正な利用であるとは認めることはできない。これらの場所が使用報酬を支払った後、自らのコストに計上するにせよ、顧客の消費支出に使用報酬を含め使用報酬を顧客に転嫁するにせよ、集客目的であることに変わりはなく、本条項とは別問題である。

本条の適正な利用の方法には、公開口述、公開放送、公開送信、公開上映又は公開演出が含まれるが、複製行為及び適正な利用の後におけるその他の利用行為は含まれない。前者は、例えば、学生が行う学校間の相互見学又はコンクールは、本条に基づき許諾を得なくても他人の音楽を歌唱又は演奏できるが、学生の演奏用として任意に楽譜を複写することはできず、適法に楽譜を購入する必要がある。後者は、例えば、上述のコンクールを録画し各界に配布する又は営利目的のテレビ放送において放映し広告費を徴収する等が想定される。

本条の適正な利用と第65条の第2項が定めた4項目の適正な利用の認定基準との関係については、2つの条文が併せて適用される。即ち、第55条の規定を満たす必要があるほか、第65条第2項に規定される4項目の基準をも満たさなければ適正な利用とは認められない。著作権専属責任機関である経済部智慧財産局による2001年8月22日(90)智著字第0900007844号通達が単に第55条の規定を引用し、「(1)、営利を目的としない(2)観衆又は聴衆から直接又は間接的に如何なる費用も徴収しない(3)実演家に報酬を支払わない等の3つの要件を満たせば、一般的か定期的であるかにかかわらず、上述の規定に基づき他人が公開発表した著作を利用することができる」とした件について、著作権者団体から強い反発があったことから、最終的に2001年11月15日(90)智著字第0906000833号通達において「著作の利用が本法の第55条が適用される場合に該当するか否かは、本局の先の回答に示された3つの認定要件を考慮しなければならないほか、上記の本法第65条第2項に掲げられた事項をも判断基準としなければならない。」と補足し、2つの条文を併せて適用することを認め、これにより著作権を保護するものとした。

学校の授業において映画の一部を数分間放映した後、ある特定のテーマについて教学又はディスカッションを行うことは、適正な利用と認められる。ただし、教師が学期終了後の自習授業において映画を放映し小学生に鑑賞させる、又は大学キャンパス内においてよく見られるように講義の際、先に映画を見た後、ディスカッション又は解説を行うような場合は、適正な利用であるとは認められない。

会社、商店、ひいては官公庁、学校がレンタルショップに出向いてDVDを借り、談話室又は視聴覚室において随意、放映するような行為は、たとえ営利性はなくとも著作権者に深刻な損害を与えることから、適正な利用であると主張することはできない。