適法なコンピュータプログラム著作の複製物の所有者は、その使用する機器の必要に応じてそのプログラムを改変し又はバックアップのためにそのプログラムを複製することができる。 ただし、当該所有者が自ら使用する場合に限られる。
前項の所有者は、消滅以外の事由によって元の複製物の所有権を喪失した場合に、著作財産権者の同意を得た場合を除き、その改変又は複製したプログラムを破棄しなければならない。
【解説】
本条は、ソフトウエアのオリジナル版所有者の適正な利用に関する規定である。コンピュータプログラム著作は非常に高価で破損しやすく、その主要な機能は使用にあって鑑賞ではない。従って、オリジナル版の所有権者にバックアップのための複製及び改変の機会を与え、この行為は著作財産権者の権利侵害には該当しないものとした。しかし、この規定は所有権者の保護にあることから、バックアップ又は改変を経て完成したものについては、所有権者が自ら使用する場合に限られる。そうでなければ、複製後に自由に流通することとなり、海賊版と何ら変わりがないことになるからである。
第1項に基づき複製したバックアップデータの目的は予備にあり、オリジナル版が消失して初めてバックアップはその予備としての役割を発揮し、取り出して使用することが可能になるのであって、例えば、販売、贈与、交換のように、消失以外の事由によりオリジナル版の所有権を喪失した場合には、その所有権の喪失はバックアップの目的の範囲外であり、著作財産権者の同意を得た場合を除き、当然改変又は複製したプログラムを破棄しなければならない。本条の規定に違反し破棄しなかった場合には、第96条の規定に基づき処罰される。
本条の規定から明らかにいえることは、海賊版ソフトウエアのバックアップ又は改変には本条は適用されないし、その他の種類の著作については適法な複製物であってもバックアップを作成することは許されない。従って、適法なCD又はDVDを購入したからといって、バックアップ又はMP3への変換を主張することはできない。
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