中華民国 の管轄区域内において著作の原作品又はその適法な複製物を取得した所有権者は、所有権移転によりこれを頒布することができる。

【解説】

本条は、「譲渡権」の「ファースト・セール・ドクトリン(First Sale Doctrine)」又は「権利の消尽(exhaustion doctrine)」を規定するものである。著作財産権者は、第28条の1の規定により「譲渡権」を享有し、所有権移転の方法によりその著作を頒布する権利を専有する。この「譲渡権」は、著作の複製物の所有権とのバランスを考慮した処理を行う。つまり、著作の原作品又は著作の複製物の頒布前においては著作財産権者の「譲渡権」の保護を重視しなければならないが、一旦著作の原作品又は複製物が著作財産権者の同意の下に最初に販売され又はその他の方法により「所有権」が移転した後は、著作の複製物の所有者の「所有権」は全力をもって保護され、「譲渡権」は最初の販売行為の後「消尽」する。

「権利の消尽」原則は、国際著作権法制において「国際消尽原則」「区域内消尽原則」及び「国内消尽原則」に区分される。「国際消尽原則」とは、権利の消尽の区域が全世界に及ぶものであり、著作財産権者は、その同意の下に頒布した著作の原作品又は複製物に対して世界各地のどこで頒布されたかにかかわらず権利を主張することはできず、従って真正品の並行輸入を禁止することはできない。「区域内消尽原則」とは、権利が消尽する区域を一定の区域に限定するものであり、例えばEUがこれを採用している。従って、EUの著作財産権者は、その同意の下に頒布された著作の原作品又は複製物に対してEU内部の頒布、例えばドイツがフランスから輸入する場合において真正品の並行輸入を禁止することはできない。ただし、EU区域外からEU区域内に輸入する場合、例えばドイツが米国から輸入する場合において真正品の並行輸入は禁止される。「国内消尽原則」の下では、譲渡権は当地の国内においてのみ消尽するものであるから、真正品の並行輸入を禁止することができる。

本条は「国内消尽原則」を採用しており、国内で著作の原作品又は適法な複製物の所有権を取得した者は所有権移転の方法により頒布することができ、再び著作財産権者の許諾を得る必要はない。この制限は、国内において著作の原作品又は適法な複製物の所有権を取得した場合に限られ、国外において取得した場合は含まれない。従って、この規定は第87条第4項の「真正品の並行輸入の禁止」規定には影響を及ぼさない。また、本条の規定は、1998年の米国Quality King Distrib. Inc. v. L’Anza Research Int’l事件 (No. 96-1470, 1998 U.S. Lexis 1606 (March 9, 1998)) の、国内において頒布された著作の原作品又は適法な複製物が国外に輸出された後再び元の場所で販売することは禁止されないという事案を参考に採用したものである。

本条が適用される著作の複製物は「適法な複製物」でなければならず、「消尽原則」の立法目的に照らして著作財産権者の譲渡権を制限するものであることから、当該複製物が著作財産権者の同意又は許諾の下に本国市場に置かれた場合でなければ本条は適用されない。同意を得ずに市場に置かれた場合には、例えば第87条の1に規定する輸入物のように、違法複製物でなくとも適正な利用による複製物又は台湾のWTO加盟前若しくは2年の過渡期において権利者の許諾を得ずに行われた複製物については、自由に所有権を譲渡することはできないと解される。しかし、著作権専属責任機関の見解によれば、第87条の1の輸入物は転売可能であるとされている。

本法第106条の2の規定により、台湾のWTO加盟前又は2年間の過渡期において権利者の許諾を得ずに完成した複製物は著作財産権者の同意を得ずに市場に置かれたことから、本条は適用されないため、当該複製物を購入した消費者が再び転売することは許されない。

譲渡権又は賃貸権は著作の原作品又はその適法な複製物を客体とし、有線、無線放送又はインターネット上の「無体の放送又は送信」を含まれないため、著作がインターネットを通じて公開送信される場合には、具体的に著作の原作品又は複製物の所有権変動は生じないため、当然、本条に定める消尽原則の適用はない。

(2009年2月20日修正)