実演家による既存の著作又は民俗創作についての実演は、これを独立した著作として保護する。
実演の保護は、原著作の著作権保護には影響を及ぼさない。

【解説】

隣接権(neighboring rights)を採用する国では、実演は他人の著作に解釈を加えるものであると考えられ、創作度は非常に低く、実演は著作であるとは認められていない。従って、著作権のほか、別途、隣接権制度によりこれを保護している。

台湾の現行著作権制度の下では、隣接権制度が採用されていないことから、実演を独立した著作としてこれを保護している。つまるところ、実演は著作ではないので「実演著作」と称することはできないが、独立した著作として著作権法の保護を受ける。ここにいう「実演」は、「既存の著作又は民俗創作についての実演」に限られ、「既存の著作又は民俗創作についての実演」に該当しない即興の実演は、「演劇、舞踏著作」となる。本法は「既存の著作又は民俗創作についての実演」に限られることを強調するにとどまり、特に「著作権保護を受ける著作又は民俗創作」について規定を設けていないことから、ここにいう「既存の著作又は民俗創作」は、著作権法に規定される「著作又は民俗創作」でありさえすればよい。これには、現在、著作権法の保護を受ける著作、著作財産権の存続期間が満了した著作及び当初から著作権法による保護を受けない著作又は民俗創作が含まれる。特に第2項は「実演の保護は、原著作の著作権保護には影響を及ぼさない。」と規定しており、原著作は著作権法が実演を独立した著作として保護することに影響を受け保護を受けなくなるわけではない旨説明しているだけでなく、原著作の保護は実演とは別の独立したものであることも説明している。同様の理論から、実演が著作権法による保護を受けることにより、既存の著作が必然的に保護を受ける著作となるものではなく、また、保護を受けない著作がこれと併せて保護を受けるに至ることもない。

「実演」は「二次的著作」と同様に「創作方法」であり、「二次的著作」との相違点は、「実演」は、それ以外に「著作の種類」でもあることである。従って、他人の音楽を演奏することは翻案による二次的著作であり、その演奏成果もまた「実演」である。

「実演」は「演劇、舞踏著作」とは異なる。「演劇、舞踏著作」は、芝居・舞踊の舞踏譜であり、「実演」はこれらの芝居・舞踊の譜面に基づく動作の解釈である。個々の実演家は、同じ芝居・舞踊の譜面に従い、異なった演技をすることができる。例えば、林懐民が編集した「白蛇伝」は「演劇、舞踏著作」であり、雲門舞集(クラウド・ゲイト舞踊団)による台北、高雄及び花蓮等各都市における「白蛇伝」の各演出は、それぞれ異なる「白蛇伝」の「実演」なのであって、個別の「実演」は独立して著作権法の保護を受けることができる。