著作者人格権を侵害する者は、その損害に対して賠償責任を負う。財産上の損害がなくとも、被害者はこれに相当する賠償金を請求することができる。
前項の侵害に対して、被害者は著作者の氏名・名称の表示、内容の修正又はその他の名誉回復のための適切な処分を請求することができる。

【解説】

本条は、著作者人格権の救済について規定している。著作者人格権を侵害する場合について、侵害行為者は損害賠償責任を負わねばならず、これには、前条に定められた侵害が引き続き発生することを排除する及び実際に侵害が発生することを防止する等の責任が含まれる。損害賠償は、民法第216条の規定により、法律に別段の定めがあるか又は契約に別段の約定がある場合を除き、被害者の受けた損害及び喪失した利益の補填が限度とされる。しかし、非財産上の損害については、被害者の受けた損害及び喪失した利益の評価が困難であるため、特定の状況に対して非財産上の損害もこれに相当する損害賠償を請求することができる旨法律上明確な規定を設けることが必要となる。本条第1項後段は、著作者人格権の侵害、特に被害者の非財産上の損害についてこれに相当する金額の損害賠償を請求することができる旨特別に規定し、請求権の基礎を築いた。何をもって「これに相当する金額」とするかは、法院により最終的に決定される。著作権法第3条第1項第2号によれば、著作者とは著作を創作した者であり、ここにいう「者」には自然人及び法人が含まれ、法人もまた当然に人格権を享有するが、それは法により設立された組織であり名誉に対して損害を受けても精神的な苦痛は生じないことから、非財産上の損害賠償は請求することができない。

著作者人格権の侵害を受けた場合に、これに相当する金額の賠償を請求するほか、被害者にとってさらに重要なことは、侵害前の状態の回復である。第2項は、被害者はその侵害態様に照らして、著作者の氏名又は名称の表示、内容の修正又はその他名誉回復のための適切な処分を請求することができる旨明文により規定した。