以下の各号のいずれかに該当する場合は、本法に別段の定めがある場合を除き、著作権又は製版権を侵害したものとみなす。

(1) 著作者の名誉を侵害する方法によりその著作を利用する場合。
(2) 製版権を侵害している物であることを知りながら頒布又は頒布のために公開陳列若しくは所持する場合。
(3) 著作財産権者又は製版権者の許諾を得ず複製された複製物又は製版物を輸入する場合。
(4) 著作財産権者の同意を得ず、著作の原作品又はその国外適法複製物を輸入する場合。
(5) コンピュータプログラム著作財産権を侵害する複製物を営業として使用する場合。
(6) 著作財産権を侵害する物であることを知りながら、所有権移転又は賃貸以外の方法により頒布する場合、又は著作財産権を侵害する物であることを知りながら頒布の目的をもって公開陳列又は所持する場合。
(7) 著作財産権者の同意又は許諾を得ず、公衆がネットワークを介して他人の著作を公開送信又は複製し、著作財産権を侵害することに供する目的をもって、公衆に対して著作を公開送信可能化又は複製するコンピュータプログラム又はその他の技術を提供し、利益を受ける場合。

前項7号の行為者が広告又はその他の積極的な手段により、公衆にコンピュータプログラム又はその他の技術を利用し、著作財産権を侵害するよう教唆、誘引、扇動、説得した場合は、当該号にいう目的を有するものとする。

【解説】

本条に規定される行為は、厳格には著作権又は製版権の侵害ではないが、立法政策上の配慮から禁止され、「著作権又は製版権を侵害したものとみなす」と法律上、明文により擬制され、民刑事上の法的責任を負わなければならない。ここにいう「本法に別段の定めがある場合を除き」とは、第87条の1の本条第4号 に関連した「真正品の並行輸入の禁止」の例外規定をいう。

 本条第1項各号が適用される場合を以下、順に説明する。

一、著作者の名誉を侵害する方法によりその著作を利用する場合。この行為には著作内容の変動、著作者の氏名を隠すことはなく、発行済の著作を利用したにすぎず、著作者人格権の侵害には該当しない。それは、一般人の正規版の利用であるか、又は非創作者である著作財産権者が自ら著作財産権を享有する著作に対し 不正な使用を行い、著作者の名誉に損害を与える行為であり、禁止する必要がある。例えば、ポルノ業界の経営者が著名な裸体女性の芸術絵画作品の真正品を風俗産業の場に設置し、消費者の情欲を誘発又は促進する、著名な宗教関係彫刻作品の著作財産権者が当該芸術品を便器にし、当該著名人及び作品を冒涜する、喫煙反対団体の責任者の喫煙反対の文章に対して、適切な利用として、タバコ産業を支持する創作において原文の一部を引用し、その喫煙反対の立場に対し て公衆に疑問を抱かせることが挙げられる。かつてインターネット上において非常に有名な、映画「無間道」の一部分に対し、これとは別に台湾語の CDPRO2シリーズを合成したコント作品は、適正な利用であり、著作権侵害に該当しないと考えられたばかりでなく、本条の規定にも違反せず、著作権侵害 であるとはみなされなかったことは注目に値する。

二、製版権を侵害している物であることを知りながら頒布又は頒布のために公開陳列若しくは所持する場合。許諾を得ずに製版権を享有する客体を複製すれば、 当然に製版権侵害であるが、製版権を侵害している物であることを知りながら敢えて頒布する、又は頒布のために公開陳列若しくは所持することは、製版権侵害 の構成要件に該当しない。ただし、侵害行為を強化、促進、拡散する効果があるため、禁止すべきであることから、製版権侵害であるとみなされる。この「頒 布」とは、第3条第1項第12号の規定に基づき、有償、無償にかかわらず、製版権を侵害する複製物を公衆の取引又は流通に提供することをいい、売買、贈与、貸与、以上を目的とする公開展示、運送、保管等が含まれる。

三、著作財産権者又は製版権者の許諾を得ず、複製された複製物又は製版物を輸入する場合。本号は海賊版の輸入を禁止するものであり、第4号の真正品の輸入 禁止とは異なる。著作財産権者又は製版権者の許諾を得ず複製する行為は、著作財産権又は製版権の侵害行為であり、著作権又は製版権侵害として直接的に処罰することができる。これら海賊版の複製物又は製版物の輸入は、国境を越え侵害物が世界中に流通し、氾濫する侵害拡散効果を生じ、著作権者又は製版権者の利 益を害することから、禁止する必要があり、法律は、明文により侵害とみなす旨規定した。本号にいう「著作財産権者の許諾を得ずに複製された複製物」とは、 当該許諾者が中華民国(台湾)において著作財産権を享有している者であるか否かを問題としない。例えば、当該ライセンサーが外国においては著作財産権を享 有し、中華民国(台湾)においては著作財産権者ではなく、その他に著作財産権者がいる場合には、本号は適用されない。本号により禁止されるのは、疑いの無い海賊版の輸入であり、その客体は適法な許諾を得ていない複製物である。ライセンサーが外国において著作財産権を享有するが中華民国(台湾)においては著 作財産権者ではない場合は、第4号において禁止される並行輸入の問題である。本号は輸出行為を禁止していないが、海賊版を輸出する場合の法的責任は、輸出先の国家自身が当該輸入行為を禁止する関連規定があるか否かに基づき決定される。

四、著作財産権者の同意を得ず、著作の原作品又はその国外適法複製物を輸入する場合。本号が禁止するものは、真正品の輸入行為であり、学理上「真正品の並行輸入の禁止」と称される。著作権法の適用には地域的な制限、即ち著作権を享有できるか否かは、権利を主張する場所の国家の著作権法により決定され、実際、著作権者はその著作財産権をそれぞれの国家の規定に基づき、それぞれ異なる者に付与し享有させることができる。そのほか、各国家の経済、社会及び市場構造が異なる ことにより、仮に同一の著作が同一人により世界各国において均しく著作権を享有するとしても、著作権法の規定により、著作財産権者にその著作複製物に対する市場セグメンテーションの権利を享有させる必要があることから、「真正品の並行輸入の禁止」の法制モデルが存在する。第59条の1の規定に基づき、適法な複製物の所有権者はその複製物の所有権譲渡の方法により当該複製物を頒布することができるが(即ち、いわゆる「ファースト・セール・ドクトリン」又は 「権利の消尽」理論)、これは、本国国内の頒布に限られ、国外において適法に頒布された真正品の複製物の輸入については制限を受け、著作財産権者の市場セ グメンテーションの権利が保障される。本号の規定に違反する複製物は、「適法な著作の複製物」ではなく、第59条の1及び第60条の規定は適用されない。 従って、著作財産権者の同意を得ずに転売、賃貸、又はその他の頒布を行ってはならない。本号に違反する輸入行為は、中華民国92年(2003年)改正著作 権法によれば、民事責任が追及されるにとどまり、刑事責任規定は設けられていなかった。これらの「適法な著作の複製物」ではない客体の転売、賃貸、又はその他の頒布は、権利侵害行為に該当し、第91条の1、第92条および第93条に基づき、譲渡権若しくは賃貸権の侵害又は本条第6号違反により直接、刑事責 任を科すことができる。「国外適法複製物」に関しては、本法の中華民国103年(2014年)1月の改正によるものであり、国外の複製であり且つ適法なものをいい、これには、適法な許諾を得た国外の複製及び適正な利用により国外で複製されたものが含まれる。

五、コンピュータプログラム著作財産権を侵害する複製物を営業として使用する場合。本号は、海賊版ソフトウェアを営業として使用することを禁止している が、一般個人による海賊版ソフトウェアの非営業使用を禁止していない。本号が適用される態様は、海賊版ソフトウェアが他人によりコンピュータにインストー ルされる場合であり、ユーザー自ら海賊版ソフトウェアをインストールする場合には、第91条の複製権侵害により直接処罰され、本号の規定に違反するか否か を検討する必要はない。当該海賊版ソフトウェアの使用を営業として使用する者は、複製権を侵害していないが、海賊版の氾濫を抑止するために海賊版ソフト ウェアの使用行為を阻止する必要があり、法律により特別に「著作権侵害とみなす」擬制規定が設けられ、且つ第93条の規定により処罰することとした。本号 は本来「コンピュータプログラム著作財産権を侵害する複製物であると知りながら、一般的な使用を行う場合」と規定されていたが、「知りながら」という要件 について、度々ソフトウェア業者の反対があった。それは、行為者が海賊版ソフトウェアであることを「知りながら」営業使用を行ったという内在的な意思を証明しなければ侵害を主張できず、侵害の取締をいたずらに困難にさせると考えられたためであり、中華民国93年(2004年)の改正時に「コンピュータプロ グラム著作財産権を侵害する複製物を営業として使用した場合」に「著作権侵害とみなす」旨改正された。この改正の結果、営業場所において事業主が海賊版ソ フトウェアを使用していることを著作権者が発見しさえすれば、本号に違反すると認められ、損害賠償請求及び第93条に基づき処罰することができる。この規 定は、企業責任を加重し、必ず適法なソフトウェアを使用させ、且つソフトウェアの適法な許諾書を保有しなければならないとし、コンピュータ内部のソフト ウェアが適法な許諾を得ていることを証明できなければ、著作権者の侵害取締を回避することができないとするものである。

六、著作財産権を侵害する物であることを知りながら、所有権移転又は賃貸以外の方法により頒布する場合、又は著作財産権を侵害する物であることを知りなが ら頒布の目的をもって公開陳列又は所持する場合。本号は、海賊版製品の無償貸与、及び海賊版製品の頒布目的での公開陳列又は所持の禁止に関する明文規定で あり、前者は主として図書館の貸出行為、後者は頒布目的のすべての公開陳列又は所持が含まれる。本法にいう「頒布」とは、第3条第1項第12号の規定によ れば、「有償又は無償であるかを問わず、著作の原作品又は複製物を公衆の取引若しくは流通に供すること」であり、売買、贈与、貸与、以上の目的のための公 開展示、運送、保管等が含まれる。しかし、著作財産権者が専有する「譲渡権」は、第28条の1により、所有権移転の方法による著作の頒布に限定され、賃貸 による著作の頒布については、第29条の賃貸権に明文規定があり、海賊版であることを知りながら所有権移転又は賃貸の方法により頒布した者は、第91条の 1の譲渡権侵害及び第92条の賃貸権侵害により処罰され、所有権移転又は賃貸以外の方法により頒布した場合が、即ち無償貸与行為である。現行法上、著作財 産権者は無償貸与権を享有せず、海賊版製品の無償貸与が侵害の拡散を招き、著作財産権者の損失を拡大することから、本号前段は、この行為を著作権侵害とみ なす明文規定を設けた。本号後段は、海賊版製品であることを知りながら、各種頒布行為を目的として、公開陳列又は所持することを著作権侵害とみなす旨規定 している。この規定は、条文の文言上、無償貸与以外のその他の頒布による公開陳列又は所持を著作権侵害とみなすとし、実際の適用においては、無償貸与の目 的をもって公開陳列又は所持することに限定され、立法上は、多くの検討が待たれるところである。この不備は中華民国92年(2003年)の著作権法改正時 から始まった。つまり、第28条の1に規定される譲渡権及び第29条に規定される賃貸権が単純な頒布と賃貸の現在の行為に限定されず、頒布又は賃貸が行わ れる前の頒布又は賃貸目的の公開陳列、所持又は運送行為にも及ぶべきであるが、当該二つの条文は準備行為を併せて規定せず、本号において明文によりそれを 「著作権侵害とみなす」と規定しているに過ぎない。また、立法院の当該法の審議期間、議会討論の際に、再び第91条の1第2項において、本来著作権侵害の 準備行為に該当するもの、即ち「『非営利目的の所有権移転の方法による著作の原作品又はその複製物の頒布』又は『頒布するために他人の著作財産権を侵害する物を公開陳列又は所持』する場合に、頒布部数が5部を超え、又はその侵害総額が適法な著作複製物の押収時の市場価格に基づき計算しニュー台湾ドル3万元 を超える場合」は個別にその刑罰を規定した。従って、準備行為が著作財産権者の譲渡権及び賃貸権の範囲に含まれないのであれば、どのように当該準備行為を 特別に処罰することができるかにつき、本号の「著作権侵害とみなす」との補充規定はカバーしておらず、第91条の1第2項の「頒布」は、同条第1項のよう に「所有権移転の方法による頒布」に明確に限定されておらず、前述の本法第3条第1項第10号の「頒布」の定義が広範であることから、所有権移転による売 買、贈与及び交換だけでなく、所有権移転を伴わない賃貸も含まれ、ひいては無償貸与をも含み、本項の規定と重畳している。法律解釈上、第87条の「著作権 侵害とみなす」との規定は、著作権侵害規定の補充であり、第91条の1の著作権侵害規定の明文がすでに存在すれば、第87条の「著作権侵害とみなす」との 規定の適用余地はなく、第87条第6号後段は、すでに空文同然であり、これは関連立法の最初の不備である。二度目の不備は中華民国93年(2004年)の 本法の改正時に生じた。この改正は、第28条の1及び第29条を改正しなかった他、準備行為を譲渡権及び賃貸権の範囲に含め、第91条の1第2項は改正を 行わず、こともあろうに、第93条第3号の第87条第6号の規定違反の処罰において、但書により第91条の1第2項及び3項を排除し、事実上は、第87条 第6号の「著作財産権を侵害する物であることを知りながら頒布の目的をもって公開陳列又は所持する」に第91条の1第2項に規定される「著作財産権を侵害 している複製物であることを知りながら、これを頒布又は頒布の目的をもって公開陳列若しくは所持する」も含まれることを法律条文上認め、両者は重複してい るにもかかわらず、第87条第6号を削除しないばかりか、再度、無用な重複を行った。このような立法技術の欠陥は、軌道を逸した領域に達している。

七、著作財産権者の同意又は許諾を得ず、公衆がネットワークを介して他人の著作を公開送信又は複製し、著作財産権を侵害することに供する目的をもって、公 衆に対して著作を公開送信可能化又は複製するコンピュータプログラム又はその他の技術を提供し、利益を受ける場合。本号は、ネットワーク業者が適法な許諾 を得ていない音楽、映画又はその他のデータにより誘引し、ネットワーク上にコンピュータプログラム又は技術(例えばP2P)を提供し、ネットワークユー ザーによるこれらの違法な著作権侵害データの交換に供し、ネットワークユーザーから費用を徴収する又は居ながらにして利益を得る行為を著作権侵害行為とみ なすことを明確に規定している。また、本条第2項の規定に基づき、行為者が広告又はその他の積極的な手段により、公衆にコンピュータプログラム又はその他 の技術を利用し、著作財産権を侵害するよう教唆、誘引、扇動、説得した場合は、第7号にいう目的を有するものと認められる。本号により処罰されるのは特定 の「提供行為」であり、技術提供者は、ユーザーがこのような提供を介して、実際に著作権を侵害する行為を行った場合に、民事法上、「共同不法行為」、「教 唆」又は「幇助」が成立するか否か、刑事上、別途、「共犯」、「教唆犯」又は「幇助犯」が成立するか否かは、各事例に照らして、具体的に認定しなければな らない。如何なる営利目的も有さない本号の「提供行為」は、「著作権侵害であるとみなされる」行為ではないが、民事上の「共同不法行為」、「教唆」若しく は「幇助」又は刑事上の「共犯」、「教唆犯」若しくは「幇助犯」に該当する場合がある。

本条第1項第3号及び第4号にいう「輸入」には、国外から台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立関税地域への輸入のほか、中国大陸、香港、マカオ地区 から台湾地区への輸入も含まれる。これは「台湾地区と大陸地区人民関係条例」「香港マカオ関係条例」「密輸処罰条例」又は「台湾地区と大陸地区貿易許可弁 法」等の法令適用の結果、大陸地区と台湾地区は異なる関税領域であることが確認され、両岸の法律適用の効力も異なるからである。

2009年5月27日原文修正に伴い訳文修正
2014年3月1日原文修正に伴い訳文修正