故意又は過失により不法に他人の著作財産権又は製版権を侵害した者は、損害賠償責任を負う。数人の共同不法侵害は、連帯して賠償責任を負う。
前項の損害賠償について、被害者は次に掲げる各号の規定に従って、いずれかの請求を選択することができる
(1) 民法第216条の規定に基づく請求。ただし、被害者がその損害を証明することができない場合は、その権利行使により通常得られたであろう予測利益から、被害後の同一の権利行使により得た利益を差し引いた差額をもってその損害額とする。
(2) 権利侵害者が不法行為により得た利益の請求。ただし、権利侵害者がそのコスト又は必要経費を証明することができない場合は、その侵害行為により得た全収入をもってその所得利益とする。

前項の規定は、被害者がその実際の損害額を証明することが困難である場合は、法院に侵害状況に基づきニュー台湾ドル1万元以上100万元以下の酌量による賠償額を請求することができる。侵害行為が故意によるものであり、かつ情状が深刻である場合には、賠償額はニュー台湾ドル500万元まで引き上げることができる。

【解説】

本条は、著作財産権又は製版権侵害の民事賠償責任を規定している。故意又は過失により他人の著作財産権又は製版権を侵害した者は、本条により民事上の損害賠償責任を負わなければならない。
数人が共同して侵害した場合は、連帯して賠償責任を負わなければならない。その賠償額については、被害者が民法第216条の規定によるか又は侵害者が侵害行為により得た利益のいずれかを選択し請求することになる。即ち、被害者は侵害者から受けた損害又は侵害者が得た利益との二者のうち最も有利な方法を選択し、賠償金額を請求することができる。

被害者が通常その損害額を証明することができないことを考慮し、又は侵害者がその侵害コスト又はその必要経費を証明することができない若しくは証明することを望まない場合は、本条第2項において「被害者がその損害を証明することができない場合は、その権利行使により通常得られたであろう予測利益から、被害後の同一の権利行使により得た利益を差し引いた差額をもってその損害額とする。」「権利侵害者がそのコスト又は必要経費を証明することができない場合は、その侵害行為により得た全収入をもってその所得利益とする。」とそれぞれ明確に規定している。これは、一方で被害者による自己の損失額の立証責任を軽減し、他方で侵害者による侵害コスト又は必要経費の立証責任を加重し、バランスをとっている。

しかしこのように規定されていても、侵害行為が被害者に与えた損害を証明又は補足することができない場合は、正真正銘、正義の公正を実現するために、さらに第3項において、被害者がその実際の損害額を証明することが困難である場合は、法院に侵害状況に基づきニュー台湾ドル1万元以上100万元以下の酌量による賠償額を請求することができると規定している。

上記の分析から、「損害なければ賠償なし」が民事賠償責任の基本原則であるが、著作財産権又は製版権侵害の民事賠償責任においては損害額を証明しなければ確実に賠償を獲得することはできず、損害の立証は容易ではないことから、法律により特別に処理する必要があるといえる。本条は、第1項において賠償請求権の根拠を規定し、第2項において賠償金額の計算原則の確立を試み、第3項において補強規定を設けることにより法院に個々の事件に対する裁量権を与えた。知的財産権の侵害程度の立証は容易ではなく、通常実際の損害は立証可能な損害をはるかに上回り、また、本法が最高賠償額についても法院の裁量に委ねることを明確に規定していることから、不確定要素に満ちている。法律により一定の法定賠償額を設定することができれば、被害者の立証や法院の裁量による決定を待つ必要がなくなるため、非常に優れた処理方法ではなかろうか。