次の各号に掲げるものは、著作権の目的とすることができない。

(1) 憲法、法律、命令又は公文書。
(2) 中央又は地方機関により作成された前号に掲げる著作の翻訳物又は編集物。
(3) 標語及び通用の符号、名詞、公式、数表、書式、帳簿又は暦。
(4) 単純な事実を伝達する情報報道からなる言語著作。
(5) 法令に基づき行われる各種試験問題及びその予備問題。
前項第1号にいう公文書とは、公務員が職務上起草した公告、講演原稿、プレス原稿及びその他の文書をいう。

【解説】

著作権法第3条第1項第1号の規定により、「文学、科学、芸術又はその他の学術の分野に属する創作」はすべて著作であり、著作権法による保護を受けると認められるが、時として、立法政策上、公衆に自由に利用させなければならないと認められる場合があり、特定の著作を著作権の目的から排除しなければならないことから、本条各号の「著作権の目的とすることができない」客体に関する規定が誕生した。

「憲法、法律、命令又は公文書」及び「中央又は地方機関により作成された憲法、法律、命令又は公文書の翻訳物又は編集物」は、著作権の目的とすることができない。なぜなら政府の作成した「憲法、法律、命令又は公文書」及びその翻訳物又は編集物は、本来広く周知され励行されなくてはならないからである。もし、著作権法の保護を受けるとなると、流通及び頒布について制限を受けることになるので、著作権の目的とすることはできない。従って、政府機関により編纂出版、翻訳された「著作権法及びその法令編」又は「著作権法及びそれに関連した従属法の英文版」は、著作権法の保護を受けない。ただし、一般の民間において編纂出版・翻訳された「著作権法及びその法令編」又は「著作権法及びそれに関連した従属法の英文版」であれば、規定の範囲ではないことから、依然として著作権法の保護を受ける。また、ここにいう公文書とは、第2項の規定によれば、「公務員が職務上起草した公告、講演原稿、プレス原稿及びその他の文書」であることから、公文手続条例に定められるものに限られない。また、法律、命令又は公文書は、著作権の目的とすることができないとの趣旨が一般民衆に周知されるためである以上、その解釈も広義に解釈されるべきであり、国家の法令のほか各種地方自治団体の法規もこれに含まれる。

「標語及び通用の符号、名詞、公式、数表、書式、帳簿又は暦」は、公衆への普及・運用に供する必要があることから、著作権の目的とすることができない。しかし、「標語及び通用の符号、名詞、公式、数表、書式、帳簿又は暦」は“通用”性を備えている場合に限って、著作権法の保護を受けない。“通用”のものではなく、特殊な範囲内での使用が想定される場合、例えば、特殊な管理行為を対象としてデザインされ、専ら特別な者の使用に供される「書式、帳簿」は、著作権法の保護を受けることができる。

「単純な事実を伝達する情報報道からなる言語著作」とは、ジャーナリズム学上の「6W1H」の基準、即ちwhat , where, when, who, why, which及びhow等に該当する言語著作に限定され、その他の著作の種類には及ばない。従って、新聞や雑誌上の絵又は写真は「言語著作」ではないことから、依然として著作権法の保護を受けることができる。事実上、現在、新聞雑誌における情報報道は多様化・複雑化しており、完全に「単純な事実を伝達する情報報道からなる言語著作」に該当するものは非常に少ない。しかし、「単純な事実を伝達する情報報道からなる言語著作」が著作権の目的となることができないとはいうものの、その利用は公平交易法に違反しないよう注意する必要がある。

「法令に基づき行われる各種試験問題及びその予備問題」の範囲は非常に広く、国が行う大学入試のほか、各級学校内の各種の試験も関連教育法規に基づき実施される成績試験であるため、著作権の目的とすることができないと認められ、公衆は試験に備えてこれらの試験問題を利用することができる。