著作権者又は製版権者がその著作権又は製版権を侵害する物を輸入又は輸出する者に対して、税関にあらかじめ差押えを申請することができる。
前項の申請は書面によって申請するものとし、侵害の事実を釈明し、被差押人が差押えにより受ける損害に相応する賠償の担保として、税関が査定した当該輸入貨物の関税価格若しくは輸出貨物のFOB価格に相当する保証金を提供しなければならない。
税関が差押の申請を受理した時は、速やかに申請者に通知しなければならない。また、前項の要件を満たし差押を実施した場合には、書面により申請者及び被差押人に通知しなければならない。
申請者又は被差押人は、税関に差押物品の確認を申請することができる。
差押物品は、申請者が法院の民事確定判決を取得し著作権又は製版権を侵害することが確定した場合、税関が没収する。没収物のコンテナ延滞金、 倉庫賃貸費、積み下し費用等の関係費用から廃棄処理に至るまでの費用は、被差押人が負担しなければならない。
前項の廃棄処理に要した費用を税関が通知した納付期限までに納めない場合は、法に基づき強制執行に移す。
次の各号のいずれかに該当する場合は、税関が差押を解除し、輸出入貨物通関規定により処理するほか、申請者は被差押人に差押により受けた損害を賠償しなければならない。

(1) 差押物品が法院の確定判決により、著作権又は製版権を侵害する物ではないとされた場合。
(2) 税関が申請者に差押を受理したことを通知した日から起算して12日以内に差押物品を侵害物として訴訟がすでに提起されたが、税関に通知されなかった場合。
(3) 申請者が差押の解除を申請した場合。

前項第2号に規定する期限は、税関が必要であると認める場合には12日延長することができる。
次の各号に該当する場合は、税関は申請者の申請に基づいて保証金を返還しなければならない。
(1) 勝訴確定判決の取得又は被差押人との和解成立により、申請者が引き続き保証金を提供する必要がなくなった場合。
(2) 差押の解除後、申請者が20日以上の期間を定めて被差押人に権利行使を催促したが行使されなかったことを証明した場合。
(3) 被差押人が返還に同意した場合。

被差押人は、第2項の保証金について質権者と同一の権利を有する。
税関は、職務を執行する際に、輸出入貨物の外観上顕著な権利侵害の疑いを発見した場合は、1業務日以内に権利者に通知し、また、輸出入者に許諾資料の提供の要請通知をしなければならない。権利者は通知を受けた後、空輸輸出貨物は4時間以内、空輸輸入及び海運輸出入貨物は1業務日以内に税関に赴き確認作業に協力しなければならない。権利者が不明である若しくは通知ができない場合、又は権利者が通知を受けて期限までに税関に赴き確認作業に協力しなかった場合、権利者が係争目的物に権利侵害はないことを確認した場合は、その他の税関規定に違反していなければ、税関は速やかに通関させなくてはならない。
権利侵害の疑いがあると認定された貨物は、税関は暫定的に通関拒否の措置をとることができる。
税関が暫定的に通関拒否の措置をとった後、権利者が3業務日内に第1項から第10項の規定により税関に差押申請又は権利保護の民事・刑事訴訟手続を行わなかった場合は、その他の通関規定違反がなければ、税関は速やかに通関させなくてはならない。

【解説】

本条は、著作権者又は製版権者がその著作権又は製版権を侵害する物を輸入又は輸出する者に対し講じることが可能な税関の国境措置について規定している。この規定は世界貿易機関(WTO)の「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)」第50条以下に基づく国境措置に関する規定であり、主要な目的は、海賊版製品が世界各国に流出することを防止し、著作権者に担保提供後税関に海賊版製品の輸入又は輸出の阻止を請求する権利を付与し、効果的に海賊版を抑止することにある。

注目に値するのは、TRIPSは国境管制措置に関して、輸入管制を主とし真正品の並行輸入には言及していないが、台湾はかつて海賊版製造者が繁栄を極め世界の主要な海賊版輸出地域となっていたことから、国際貿易制裁の強大な圧力の下、本条の国境差押措置管制に関して、著作権商品の輸入及び輸出に適用される点であり、いうなれば海賊版製品の輸出の制止を主とし、同時に真正品の並行輸入を禁じ、さらに台湾著作権法に特有である製版権にもこれを拡大して適用した点である。

本条が実際に適用されるケースは極めて少なく、主として著作権者又は製版権者が事前に侵害物の輸入又は輸出情報を把握している場合を除いて発動の契機がなく、税関は大量の通関物品と迅速に通関させなければならないというプレッシャーに直面しており、事前に告発がある場合を除き、事実上、積極的に侵害物を発見すること、又は侵害物の発見後著作権者又は製版権者に積極的に通知し本条に基づき侵害物の差押が申請されることは極めて少ない。また、著作権者又は製版権者は本来刑事訴訟手続に基づき、司法警察を通じてさらに効果的に著作権又は製版権を侵害する犯罪物品を押収することができ、自ら巨額の担保を提供し本条に基づき侵害物の差押を申請する必要はない。従って、主務官庁は本条の授権に基づき「著作権又は製版権侵害物の税関差押実施弁法」を定めたが、事実上本条は実務において適用される機会はあまりなく、単にWTO加盟の条件をクリアするために設けられた規定にすぎない。

本条の規定に基づく関連手続は次のとおりである。
1. 著作権者又は製版権者は、その著作権又は製版権を侵害する物品を輸入又は輸出する者に対し、書面により侵害の事実を説明し、税関が査定した当該輸入貨物の 関税価格又は輸出貨物のFOB価格に相当する保証金を被差押人が差押により受ける損害賠償の担保として提供し、税関にあらかじめ差押を申請することができる。

2. 税関は差押の申請を受理した後、速やかに申請者に受理された旨通知しなければならない。規定の要件を満たすことが認められ、さらに差押を実施する場合には、書面により申請者及び被差押人に通知しなければならない。同時に、申請者又は被差押人は、税関に差押物品の確認を申請し、侵害事実の有無を確認し、今後の対応の参考とすることができる。

3. 税関の差押後、差押物品がその後法院の民事判決により著作権又は製版権を侵害することが確定した場合は、税関により没収される。没収物のコンテナ延滞金、 倉庫賃貸費、積み下し費用等の関係費用から廃棄処理に至るまでの費用は、被差押人が負担しなければならない。刑事判決により侵害物であると確認された場合も法院により没収され、関連費用は本条を準用し、被差押人が負担しなければならない。廃棄処理に必要な費用は、税関が通知した期限までに被差押人が納付しない場合は、法により強制執行に移行する。

4. 差し押えられた物品に対して、その後、①申請者が差押の解除を申し出た。②申請者が12日以内(さらに12日延長可能)に提訴し、税関に通知しなかった。③法院により侵害物品ではないことが確認された場合は、税関は差押を解除し、輸出入貨物通関規定に基づき処理し、差押申請者は被差押人が差押により被った損害を保証金により賠償しなければならない。被差押人は前述の保証金について質権者と同一の権利を有する。つまり、差押申請者のその他の債務のうち、優先的に賠償を受け、被差押人の利益が保証されるということである。

5. 反対に、①申請者が勝訴の確定判決を取得又は被差押人との間に和解が成立し、引き続き保証金を提供する必要がなくなった。②税関が差押を解除した後、申請者が20日以上の期間を定めて被差押人に権利行使を催促したが行使されなかったことを証明した。③被差押人が返還に同意した場合は、税関は差押申請者の申請に基づき、保証金を返還しなければならない。

6. 前述した申請者の差押申請のほか、税関は職務を執行する際に、輸出入貨物の外観上顕著な著作権侵害の疑いを発見した場合は、1業務日内に主体的に権利者に通知するとともに、輸出入業者に許諾資料の提供の要請を通知しなければならない。権利者は通知を受領した後、空輸輸出貨物は4時間以内、空輸輸入及び海運輸出入貨物は1業務日内に税関に赴き、確認作業に協力しなければならない。権利者不明、通知不能、又は権利者が通知した期間内に税関に赴き確認作業に協力しなかった、又は権利者が係争目的物に権利侵害がないことを確認した場合は、税関は原則上直ちに通関させなくてはならない。権利侵害貨物か否かはっきりしない場合は、税関は暫定的に通関を認めない。ただし、権利者が3業務日以内に規定に基づき税関に差押を申請しなかった場合又は権利保護のために民事・刑事訴訟手続を行わなかった場合は、権利者が権利を主張しなかった以上、税関は当然、直ちに通関させることとなる。