インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダは、第90条の7第3号の処理状況を、ユーザと約定した連絡方法又はユーザが残した連絡情報に従って、権利侵害したとされる当該ユーザに転送しなければならない。但し、提供するサービスの性質上、通知できない者にあっては、この限りでない。

前項のユーザが権利侵害ではないと考える場合、回復通知文書を提出し、インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダにその削除された、又は他人のアクセスを不能にした内容又は関係情報の回復を請求することができる。

インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダは、前項の回復通知を受領した後、速やかに回復通知文書を著作権者又は製版権者に転送しなければならない。

著作権者又は製版権者がインフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダの前項の通知を受領した翌日から10日業務日以内にインフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダに当該ユーザに対して訴訟を提起した証明を提出した場合、インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダは回復義務を負わない。

著作権者又は製版権者が前項の規定に従って訴訟を提起した証明を提出しなかった場合、インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダは遅くとも回復通知を転送した翌日から14業務日以内に削除又は他人のアクセスを不能にした内容又は関係情報を回復しなければならない。但し、回復できない場合、事前にユーザに告知し、又はその他の適切な方法によりユーザの回復に供さなければならない。

【解説】

本条は「インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダ」が「ノーティス・アンド・テイクダウン」措置を講ずる際に遵守しなければならない事項を規定している。この規定は「インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダ」にのみ適用され、その他3種類のISP業者は情報の長期短期の蓄積という性質を有さないため、本条は適用されない。

第一項は、インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダは第90条の7第3号の処理状況を権利侵害したとされる当該ユーザに転送「しなければならない」と規定しているが、これはインフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダに「ノーティス・アンド・テイクダウン」手続の実施義務を必ず実施することを課すものではない。インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダがそのユーザによる著作権又は製版権侵害行為について賠償責任を負わなくてもよいという免責の利益を得たいのであれば、第90条の4及び第90条の7の規定を必ず満たさなければならないほか、さらに本条に定める「ノーティス・アンド・テイクダウン」手続を実施する必要があり、そうでなければ、一般原則に立ち返り、責任を負わなければならないか否かは、個々の事件の事実認定によることとなる。

「インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダ」が本条に基づき実施しなければならない「ノーティス・アンド・テイクダウン」手続は以下のとおりである。

(一)「通知(Notice)」:著作権者又は製版権者からユーザの権利侵害行為がある旨「インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダ」に通知する。

(二)「削除(Take Down)」:「インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダ」は、権利侵害内容又は関係情報を削除又は他人のアクセスを不能にし、ユーザと約定した連絡方法又はユーザが残した連絡情報に従って、権利侵害したとされる当該ユーザに転送する。但し、提供するサービスの性質上、通知できない者にあっては、この限りでない。

(三)「回復通知(counter Notice)」:ユーザが権利侵害ではないと考える場合、回復通知文書を提出し、インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダにその削除された、又は他人のアクセスを不能にした内容又は関係情報の回復を請求する。

(四)「転送(forward)」:インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダは、ユーザからの回復通知を受領した後、速やかに回復通知文書を著作権者又は製版権者に転送する。

(五)「提訴証明」:著作権者又は製版権者がインフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダから転送されたユーザの回復通知を受領した翌日から10日業務日以内にインフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダに当該ユーザに対して訴訟を提起した証明(民事訴訟法の規定に基づき提起した侵害排除又は損害賠償の証明、又は刑事訴訟法の規定に基づき行った告訴又は自訴の証明を含む)を提出した場合、インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダは回復義務を負わない。

(六)「回復(restore)又は告知(notify)」:著作権者又は製版権者が規定に従って訴訟を提起した証明を提出しなかった場合、インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダは遅くとも回復通知を転送した翌日から14業務日以内に削除又は他人のアクセスを不能にした内容又は関係情報を回復しなければならない。但し、回復できない場合、事前にユーザに告知し、又はその他の適切な方法によりユーザの回復に供さなければならない。

この「通知(Notice)」、「削除(Take Down)」、「回復通知(Counter Notice)」及び「回復(restore)」の手続は、一般的に「ノーティス・アンド・テイクダウン(Notice & Take Down)」と称され、著作権侵害の継続発生を迅速且つ有効的に阻止することができ、米国の1998年に採択された「デジタルミレニアム著作権法案(The Digital Millennium Copyright Act of 1998, DMCA)」に由来する。米国のDMCA成立後、これまでずっと各種の方法により、各国に著作権法を改正しこのメカニズムを導入することが推奨され、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、韓国を含む米国と密接な貿易関係を有する大部分の国は前後して立法作業を終えている。

2011年2月23日 用語統一のため修正