文化創意産業によって生じた著作財産権を目的とする質権の設定、譲渡、変更、消滅又は処分の制限は、著作権専属責任機関に登記を行うことができる。登記をしていない場合、善意の第三者に対抗することはできない。但し、混同、著作財産権又は担保債権の消滅により質権が消滅する場合はこの限りでない。

前項の登記内容は、如何なる者も閲覧を申請することができる。

第1項の登記及び前項の閲覧に関する弁法は、著作権法主務官庁がこれを定めるものとする。

著作権専属責任機関は、第1項及び第2項の業務の処理を民間機関又は団体に委託することができる。

【解説】

本条は、文化創意産業発展法第23条において、文化創意産業により生じた著作財産権を目的として行う質権登記について明確に規定することにより、文化創意産業の質権設定による融資を促進しようとするものである。本条は著作財産権の質権登記に言及しており、本来、著作権法に列挙されるべきものであるが、文化創意産業発展法が早期に通過するよう、著作権法改正過程において検討することが回避され、時期が引き延ばされたため、暫時、文化創意産業発展法の中に組み込まれたままとなっており、将来、著作権法の中に引き戻されることが適切である。

第1項の規定によれば、文化創意産業発展法に基づき質権登記を行うことができる場合を「文化創意産業により生じた著作財産権」に限定しているが、この線引きは極めて困難である。実務上、著作財産権を目的とするあらゆる質権登記が含まれ得る。本項に基づき行う質権登記には、質権の「設定、譲渡、変更、消滅又は処分の制限」が含まれ、その法的効果は「登記をしていない場合、善意の第三者に対抗することはできない。」である。また、文化創意産業により生じた著作財産権を目的とする質権設定、譲渡、変更、消滅又は処分の制限は、たとえ未登記であったとしても、当事者間又は事情を知っている第三者との間では法的効果を有し、未登記を理由として無効を主張することはできない。ただ事情を知らない第三者を保護するために、当該法律行為がその者に対して無効であることを主張できるようにしているに過ぎず、事情を知らない当該善意の第三者が未登記の質権の「設定、譲渡、変更、消滅又は処分の制限」を受け入れるのであれば、これは法律の禁止するところではない。

また民法第344条前段の規定によれば、「債権とその債務が同一人に帰属するとき、債権債務関係は消滅する」。著作財産権が担保する債権と債務が同一人に帰属し、「混同」が生じ、上述の規定に基づき債権債務関係が消滅した場合、たとえ質権消滅登記を行っていなくとも、善意の第三者は質権が消滅していないと主張することはできない。同様の理論により、著作権法第43条の規定により、著作財産権が(1)存続期間満了(2)著作財産権者が死亡し、その著作財産権が法に基づき国庫に帰属する(3)著作財産権者が法人であって、法人消滅後、その著作財産権が法に基づき地方自治団体に帰属することにより、当該著作財産権が消滅したとき、著作財産権はすでに消滅しているが、質権消滅登記が行われていない場合、善意の第三者は質権が消滅していないと主張することはできない。そのほか、担保債権が弁済又は放棄等により消滅すれば、質権も自動的に消滅するが、善意の第三者は質権が消滅していないと主張することはできない。

著作財産権の質権登記の目的は、文化創意産業の質権設定による融資を促進することにあり、取引の安全性を保証するために、第2項は如何なる者もこれらの登記内容について閲覧を申請することができると明確に規定している。その登記及び閲覧等の詳細について、第3項は、著作権法主務官庁に授権、即ち、経済部智慧財産局が弁法を制定するものとし、その執行の利便を図っている。そのほか、経済部智慧財産局の登記及び閲覧業務の執行により、その他の業務の執行に影響が及ぶことを回避するために、第4項は業務の必要に応じて、これらの業務の処理を民間機関又は団体に委託することができるものとした。

実際のところ、1998年の著作権法改正時に著作権登記制度が完全に削除されるまでは、著作財産権の質権登記を含め、当時、毎年最多でも10~20件を超えることはなく、市民の公官庁に対する信頼及び外部委託する場合の多額のコストを考慮すれば、著作権専属責任機関が登記申請を処理することが比較的妥当である。