著作権者において講じられた他人が無断で著作にアクセスすることを禁止又は制限する技術的保護手段を適法な許諾を得ず解除、破壊又はその他の方法によりこれを回避してはならない。
技術的保護手段を解除、破壊又は回避する設備、器材、部品、技術又は情報を適法な許諾を得ず製造、輸入、公衆に使用又は公衆にサービスを提供してはならない。前2項の規定は、次の各号に掲げる場合には適用しない。
(1) 国家の安全を維持、保護する場合。
(2) 中央又は地方官公庁が行う場合。
(3) 情報保管機関、教育機構又は公衆の使用に供する図書館が資料を取り寄せるかどうか判断するために行う場合。
(4) 未成年者を保護するために行う場合。
(5) 個人情報を保護するために行う場合。
(6) コンピュータ又はインターネットのセキュリティテストを実施するために行う場合。
(7) 暗号化技術の研究のために行う場合。
(8) リバース・エンジニアリングのために行う場合。
(9)第44条から第63条及び第65条の定めに基づき他人の著作を利用するために行う場合。
(10) その他主務官庁によって定められた場合。
前項各号の内容は主務官庁がこれを定め、定期的に再検討するものとする。
【解説】
本条は、技術的保護手段の保護に関する規定である。技術的保護手段の保護は、第80条の1の「権利管理情報の保護」と同様に電子化された著作権商品に対 する特別保護であり、著作権の一種ではない。これは、著作権者に著作権以外に特別に付与された著作の保護方法である。いわゆる「技術的保護手段」とは、第 3条第1項第18号の定義によれば、「他人が許可なく著作にアクセス又は利用することを有効的に禁止又は制限するために著作権者により講じられた設備、機 材、部品又は技術若しくはその他の科学技術方法」である。いわゆる著作の「アクセス」とは、著作の「アクセスに対するコントロール(access controls)」であり、その真意は著作を「使用、聴取、視聴、閲覧」する行為をいう。いわゆる著作の「利用」の真意は、著作権法第22条から第29 条に定められた著作財産権に及ぶ行為であり、簡潔に「コピーコントロール(copy controls)」と称されるものである。
技術的保護手段の保護は、技術的保護手段を解除、破壊又は回避する「実行行為」の禁止、及び実行行為前において技術的保護手段を解除、破壊又は回避する 設備、機材、部品、技術又は情報を製造、輸入、公衆に使用させ又は公衆に技術的保護手段を解除、破壊又は回避するサービスを提供する「準備行為」に区分さ れる。
第1項は、著作権者が講じた他人が無断で著作にアクセスすることを禁止又は制限する技術的保護手段を解除、破壊又はその他の方法により回避する「実行行為」を禁止している。例えば、有料オンラインデータベース又はオンラインミュージック若しくは映画の鑑賞は、料金を支払ってパスワードを取得した後当該 データベースにアクセスし、著作を「使用、聴取、視聴、閲覧」する際には当該パスワードを毎回入力しなければならない。料金を支払わずにパスワードを取得 する、又は特殊なプログラム又はパスワードを用いて著作の「使用、聴取、視聴、閲覧」に講じられたパスワード制限技術を解除又は失効させることは本項に違 反する行為であり、第90条の3の民事責任を負わなくてはならない。ただし、刑事責任は追及されない。
「技術的保護手段」には、著作権者が講じた他人が無断で著作にアクセス又は利用することを有効に禁止又は制限する設備、器材、部品、技術又はその他の科 学技術方法が含まれるが、本法第1項の解除、破壊又は回避する「実行行為」においては、他人が無断で著作に「アクセス」することを禁止又は制限する技術的 保護手段に限定され、他人が無断で著作を「利用」することを禁止又は制限する技術的保護手段は含まれない。これは、主として著作権者において講じられた他 人が無断で著作を「利用」することを有効に禁止又は制限する設備、器材、部品、技術又はその他の技術を解除、破壊又はその他の方法により回避した後、その 結果は適正な利用に該当するかもしれないし著作財産権侵害に該当するかもしれないことから、後の利用結果に基づき判断すればよく、前段階の解除、破壊又は 回避行為に対応する必要はないからである。
第2項は、技術的保護手段を解除、破壊又は回避するための設備、器材、部品、技術又は情報を製造、輸入することを禁止し、また、それを公衆に使用させ又 は公衆に技術的保護手段を解除、破壊又は回避するサービスを提供することを禁止した。本項にいう「公衆にサービスを提供する」とは、「客に代わって技術的 保護手段を解除、破壊又は回避する」ことをいい、「公衆に使用させる」とは、「設備又は情報を提供し、公衆自らに技術的保護手段を解除、破壊又は回避させ る」ことをいう。第1項が著作権者において講じられた他人が無断で著作に「アクセス」することを禁止又は制限する技術的保護手段の解除、破壊又は回避のみ を禁止していることとは異なり、本項が禁止する「準備行為」においては、著作権者において講じられた他人が無断で著作に「アクセス」又は「利用」すること を有効に禁止又は制限する設備、器材、部品、技術又はその他の科学技術が含まれる。このような「準備行為」は解除、破壊又は回避能力を拡散する効果を備 え、その影響力は絶大であり、解除、破壊又は回避の「実行行為」よりも深刻であることから全面的に禁止する必要があり、違反した場合には第90条の3の民 事責任を負うだけでなく、さらに第96条の1の刑事責任も追及される。
第3項は技術的保護手段の保護に関する例外を規定しており、即ち、ここに掲げられた10項目に該当する場合には、前2項が禁止する技術的保護手段を解除、破壊又 は回避する「実行行為」及び実行行為前に、技術的保護手段を解除、破壊又は回避するために用いる設備、器材、部品、技術又は情報を製造、輸入する又はそれ を公衆に使用させ、若しくは公衆に技術的保護手段を解除、破壊又は回避するサービスを提供する「準備行為」を行うことができる。各号の内容は、第4項の規 定に基づき主務官庁によって定められ、定期的に見直される。主務官庁が2006年3月23日に公布した「著作権法第80条の2第3項の各号の内容認定要 点」は、本条各号の内容について詳細な規定を設け、当該要点は少なくとも3年ごとに検討することを明確に規定している。
2014年3月1日 原文修正に伴い訳文修正
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