本章に基づき罰金を科す場合に、犯罪者の資力及び犯罪により得た利益を斟酌しなければならない。利益所得が罰金の最高額を超える場合は、利益所得の範囲内で加重することができる。
【解説】
本条は、著作権法違反に対して罰金刑を科す際の加重処罰規定である。
著作権法に違反する行為は大部分が経済犯罪であり、犯罪行為者の所得の増加又は本来支払うべき費用の免除のほか、著作権者に多大かつ深刻な損害を与えることから、社会の公正・正義を実現するために、本条は罰金刑を科す際に犯罪者の資力及び犯罪により得た利益を斟酌しなければならないと規定した。さらに、利益所得が各条文に定められる罰金の最高額を超える場合は、利益所得の範囲内で加重することができるとした。
本条の規定は、実際のところ無用の長物である。なぜなら、刑法第58条において「罰金を科す際には、前条の規定によるほか、犯罪者の資力及び犯罪により得た利益を斟酌しなければならない。所得利益が罰金の最高額を超過する場合は、所得利益の範囲内において斟酌し加重することができる。」との規定がすでに設けられており、本条は刑法第58条を重複して宣言し、著作権保護の精神を謳っているにすぎないからである。
著作権法違反による罰金刑の加重処罰規定が妥当であるか否か、研究の余地がないこともない。なぜなら、著作権侵害行為は必ずしもすべてが著作財産権を侵害する経済犯罪ではなく、著作者人格権侵害のケースも含まれ、刑事処罰と民事上の損害賠償は別問題であり、前者は行為者の悪行を非難する場合に他人に同じ過ちを繰り返さぬよう警告し、後者は権利者の経済的又は精神的な損失を補償するものである。損害賠償に関して、第88条第2項は、被害者は侵害者が与えた損害又は侵害者が不法行為により得た利益との二者のうちいずれか最も有利な方法を選択し、賠償金を請求することができる旨規定している。また、第3項は、法院に侵害状況に照らし500万元以下の賠償額の裁量権を付与している。罰金刑が低すぎると考えるのならば各条において引き上げればよく、本条の規定により罰金刑を加重する必要はない。そうすることで、高額の罰金を納付することにより犯罪行為者の被害者に対する賠償能力が低下するおそれを回避することができる。
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