著作者は、本法に別段の定めがある場合を除き、その著作を複製する権利を専有する。
実演家は、録音、録画又は撮影によりその実演を複製する権利を専有する。
前2項の規定は、専らネットワークの適法な中継送信又は著作の適法な使用であって、技術的な操作過程において不可欠な過渡的又は付随的でかつ独立した経済価値を具備しない暫定的な複製に対しては、これを適用しない。ただし、コンピュータプログラム著作は、この限りでない。
前項のネットワークの適法な中継送信における暫定的な複製には、ブラウジング、キャッシュメモリ若しくはその他の送信機能を装備したコンピュータ又は機械そのものの技術上避けられない現象を含むものとする。

【解説】

「複製権」は、著作者の最も基本的な著作財産権であり、各種著作の著作者はいずれも「複製権」を享有するが、実演家がその実演について享有する複製権は「録音、録画又は撮影」の方法による実演の複製に限られる。従って、実演が「録音、録画又は撮影」以外の方法により複製された場合、例えば素描は複製の一種であるが、実演を素描することについては、実演の著作財産権者の同意を得る必要は全くない。

2003年7月の改正著作権法第3条第1項第5号の「複製」の定義において「直接的、間接的、永久的又は一時的に再製すること」が明記された。また、第22条第3項及び4項において特定の「暫定的な複製」について「複製権」の除外規定を別に設け、「専らネットワークの中継送信又は適法な著作の使用であって、技術的な操作過程において不可欠な過渡的又は付随的でかつ独立した経済価値を具備しない暫定的な複製については、これを適用しない。ただし、コンピュータプログラム著作は、この限りでない。」とし、また、コンピュータプログラム著作を除いたその他の著作は、「専らネットワークの中継送信又は適法な著作の使用であって、技術的な操作過程において不可欠な過渡的又は付随的でかつ独立した経済価値を具備しない暫定的な複製」については著作財産権者の複製権の範囲外とした。ここにいう「ネットワークの中継送信における暫定的な複製には、ブラウジング、キャッシュメモリ若しくはその他の送信機能を装備したコンピュータ又は機械そのものの技術上避けられない現象を含むものとする。」とは、本来、2003年行政院版草案はEU著作権ディレクティブ第5条第1項を参考にして「専らネットワークの中継送信」について「『適法な』中継送信」でなければならないことまで要求していなかったが、その後、米国の要請の下に、『「適法な」中継送信』でなければ複製権の外に置くことができない旨追加され、議会討論の際に、「デジタル集中立法推進連盟」の委員の強力な提議により削除された。EU著作権ディレクティブ第5条第1項の規定によれば、「著作の適法な使用」の「暫定的な複製」に限り「複製権」の外に排除されるべきであるが、「デジタル集中立法推進連盟」の委員はそれを「適法な著作の使用」と改めた。

2004年9月の改正法では、第22条第3項の暫定的な複製を複製権から排除する規定について、「ネットワークの中継送信」の暫定的な複製を複製権の範囲から排除することに対して「適法」の2文字を追加し、「ネットワークの適法な中継送信」と改め、人々が無意識のうちに法に抵触するかもしれないという恐るべき事態を招いた。なぜなら、「ネットワーク中継送信」とは、デジタルネットワーク環境下においては情報通信の重要な流通活動であり、「ネットワーク中継送信」を提供するサービス・プロバイダーは電気通信事業者同様、事実上、各送信の適法性を判断する方法がないからである。技術中立の原則に基づき、インターネット・サービス・プロバイダーの負担を軽減しデジタル・コンテンツ産業の発展に資するためには、「ネットワークの適法な中継送信」だけを複製権の外に置くべきではなく、あらゆる「ネットワーク中継送信」における暫定的な複製をすべて複製権の範囲から排除すべきである。そうでなければ、将来、デジタルネットワーク通信に不都合をきたすであろう。

また、新法は、第22条第3項の「適法な著作の使用」という文言を「著作の適法な使用」に改め、よりEU著作権ディレクティブに一致させ、「適法な著作を違法使用」する者による暫定的な複製に対して著作財産権者が複製権を主張することができることを確実に保証した。

前述の説明のとおり、コンピュータプログラム以外の専らネットワークの適法な中継送信又は著作の適法な使用であって、技術的な操作過程において不可欠な過渡的又は付随的でかつ独立した経済価値を具備しない暫定的な複製については、著作者の複製権の範囲には含まれず、著作者はこれらの行為に対して複製権を主張することはできない。また、これらの範囲外の暫定的な複製であって著作者の複製権の範囲に含まれるとしても、利用者の個々の事案においては適正な利用の余地を想定し得ることから、著作者はこれらの行為に対して必ずしも複製権を主張できるとは限らない。