著作者人格権は著作者本人に専属し、譲渡又は相続することができない。

【解説】

著作者人格権と著作者の間には非常に密接な関連性があり、著作者が著作者人格権に依拠しその著作との間に関係が生じるほか、一般公衆においても著作者人格権に依拠し著作と著作者の関係及び著作内容が確認される。著作者のこのような身分的性質を帯びた著作者人格権を保護し、強者に剥奪されることを回避し、また、公衆に著作の著作者及び完全な内容を認知させるという公益に配慮するために、著作者が自然人であるか法人であるかにかかわらず、本条は著作者人格権の譲渡又は死亡後の相続人による相続を禁止する規定を設けた。

著作者人格権は譲渡又は相続することができないが、行使しない旨約定することはできる。例えば、利用者が著作を利用する際、著作者の氏名を表示しなくてもよい又はどのような変更を行ってもよい等の約定により著作者人格権を行使しないことはできる。このような約定は、債権的効果があるにすぎず、約定した当事者間においては有効であるが、約定の外にいる者に対して効果は及ばない。従って、その他の者が著作を利用する場合に、著作者の氏名を表示しない又は変更を加え著作者の名誉等に損害を与えた場合には、著作者は依然として著作者人格権を主張することができる。
著作者人格権を放棄することができるか否かについては、著作者人格権は著作権法により付与された特殊な人格権であること、民法第16条により「権利能力及び行為能力は法規することができない。」と定められ、第17条第1項により「自由は放棄することができない。」と定められていることから、一般的に人格権は放棄することができない。著作者が著作者人格権を放棄すると約定しても、当該約定は無効である。

著作者は自然人であっても法人であっても構わず、本条は自然人か法人かの相違により区別を設けていないことから、法人であって一般人格権がないとしても、公益を考慮し、その著作者人格権は法人自体に専属し、譲渡することはできない。また、法人が解散し消滅した後、法的には自然人のような相続問題は生じず、その著作者人格権を行使することができる者も存在しない。法人の解散消滅前著作財産権に関する処理を行ったとしても、法人はすでに消滅してしまったので、著作者人格権を主張することはできない。吸収合併又は設立合併により法人が存続又は新設されたとしても、それはすでに元の法人ではないことから、当然に吸収された又は消滅した法人の著作者人格権を行使することはできない。

雇用者又は出資者は、第11条及び第12条の約定に基づき著作者の地位を取得することができるが、これは第21条の「著作者人格権は著作者本人に専属し、譲渡又は相続することができない」という規定に矛盾しないだろうか?第11条及び第12条の約定は著作者の地位の原始取得を定めたものであり、第21条の「著作者人格権は著作者本人に専属し、譲渡又は相続することができない」との規定は、著作者の地位が確定された後における著作者人格権の譲渡であって、両者は異なるため、矛盾はしない。また、雇用者又は出資者は、第11条及び第12条の規定に基づき、実際に創作した被雇用者又は委嘱を受けた者と誰を著作者とするかについて約定することができるが、一旦約定により著作者の地位を取得した後は、当該著作者は著作者人格権を譲渡することはできず、仮に譲渡したとしても第21条の強行規定に違反することからそれは無効である。

2011年4月12日原文修正に伴ない訳文修正