中央又は地方政府機関、非営利機構又は団体、法に基づき設立された各級の学校は、視覚障害者、学習障害者、聴覚障害者又は著作の認知が困難なその他の障害のある者の使用に専ら供するために、翻訳、点字、録音、デジタル変換、口述画像、手話通訳又はその他の方法の付加により、公開発表された著作を利用することができる。
前項に定める障害者又はその代理人が当該障害者個人の非営利使用に供する場合は、前項の規定を準用する。
前二項の規定に基づき作成された著作の複製物は、前二項に定める障害者、中央又は地方政府機関、非営利機構又は団体、法に基づき設立された各級学校間において、頒布又は公開送信することができる。

【解説】
本法は1985年の改正から、専ら盲人の使用に供するための適正な利用に関する規定が設けられ、幾度かの改正を経て、2013年6月に世界知的所有権機関において採択された「盲人、視覚障害者及び読字障害者の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約」に基づき2014年に改正されたものである。
 本条の立法目的は、視覚障害者、学習障害者、聴覚障害者又は著作の認知が困難なその他の障害のある者の使用に供するため、著作財産権者の同意を得なくても著作を適正な利用として行うことができることにある。

 本条の利用対象は「公開発表された著作」であり、「未公開発表著作」は含まれない。

本条の利用主体は、第1項は「中央又は地方政府機関、非営利機構又は団体、法に基づき設立された各級学校」に限定しており、第2項は、第一項に定める障害者又はその代理人が当該障害者個人の非営利使用に供する場合には、第一項の適正な利用の規定が準用される。

 本条の利用方法は、「翻訳、点字、録音、デジタル変換、口述画像、手話通訳又はその他の方法の付加による利用」である。そのうち、「翻訳」は重複しており、第63条第1項において、すでに本法の各種適正な利用における更なる翻訳について「第44条、第45条、第48条第1号、第48条の1から第50条、第52条から第55条、第61条及び第62条の規定により他人の著作を利用することができる場合は、当該著作を翻訳することができる。」と統一して定めているからである。「デジタル変換」については、著作を記録する媒体の変更であり、例えば、紙の本をスキャニングしてデジタル化すること、異なったフォーマットの電子版又は記録媒体に変換することである。いわゆる「その他の方法」とは、解釈上、「翻訳、点字、録音、デジタル変換、口述画像、手話通訳の付加」等 に類似する方法に限定されると解され、視覚障害者、学習障害者、聴覚障害者又は著作の認知が困難なその他の障害のある者が一般の者と同様に著作内容にアクセスすることに便宜をはかり、その障害故に著作にアクセスする機会を喪失することがないようにしている。考えられるケースとしては、例えば、一般のフォントを拡大して十倍フォントにして弱視者が閲覧できるようにする、字幕のない視聴覚著作に字幕をつけて、聴覚障害者が鑑賞できるようにすること等である。

また、資格に該当する異なる利用主体が、重複して同一の著作を変換し資源を無駄使いすることを避けるため、更には本条に基づいて行われる適正な利用の成果が障害者に迅速且つ有効に提供できるように、第3項は、前二項に基づき作成された著作の複製物は、前二項に定める障害者、中央又は地方政府機関、非営利機構又は団体、法に基づき設立された各級学校間において、有体物の頒布又はインターネットを通じて公開送信することを認めている。

2010年1月27日 原文の修正に伴い修正
2012年10月7日 原文の修正に伴い修正
2014年3月1日 原文の修正に伴い修正。