受信機能を高めるために、法令に基づき設立されたコミュニティー共同アンテナを用いて、法に基づき設立された無線テレビ局によって放送される著作を同時に中継することができる。ただし、その形式又は内容を変更してはならない。

【解説】

本条は、受信機能を改善するために、コミュニティー共同アンテナを用いて、法に基づき設立された無線テレビ局によって放送される著作を同時に中継することができるものとした。それは、非同期の中継や録音後の再放送は認められず、また、例えば、元の広告を自己の広告に変更する等その形式と内容を変更することも許されない。本条は、受信後に再中継を行う場合の適正な利用に関するものであり、一般のマンションビルの共同アンテナが単純に受信した後電波を強化して各家庭に送り届けることは、中継行為がないことから著作権法の公開放送には抵触せず、本条にいう適正な利用を適用するまでもない。その他、本条により中継することができる客体は適法な無線テレビ局に限定され、有線及び衛星テレビ番組は含まれない。

2003年7月9日改正前の著作権法第56条の1第2項の規定は、「有線テレビのシステム経営者は、基本周波数を提供し、法に基づき設立された無線テレビ局によって放送される著作を同時に中継することができるが、その形式と内容を変更してはならない。」と規定していた。当該条項は、1998年の著作権法改正時に有線放送法の規定に合わせて追加されたものであるが、これは、著作財産権者の同意を得ずに行うことができ、かつ費用支払が免除される中継であることから、ベルヌ条約第9条及び世界貿易機関の「TRIPS協定」第13条の適正な利用に関する規定に合致せず、その他の国々の強い反発があり、2003年7月9日改正著作権法において削除された。しかし、有線放送法第37条が「システム経営者が法に基づき設立された無線放送局の番組及び公告を同時に中継する場合は、形式、内容及び周波数を変更してはならず、基本周波数に組み込まなければならない。ただし、中央主務官庁が許可した者にあっては、周波数を変更することができる。システム経営者が前項の中継を行う場合は費用を免除し、著作権侵害に該当しないものとする。システム経営者は、中央主務官庁の許可を得ずに国外の衛星放送事業の番組又は広告を放送することはできない。」と規定されたまま、著作権法改正に伴って変更されていないため、問題はいまだ解決されていない。法理論上、有線放送法が著作権法の特別法である以上優先して適用されることから、現在、有線放送第4チャンネルは法に基づき無線テレビ局の番組を中継しているが、無線テレビ局の同意を得る必要がないばかりか費用も免除されており、無線テレビ局の番組の著作財産権者は有線放送第4チャンネルが無線テレビ局の番組を放送する行為に対して著作権侵害を主張することはできない。この規定は将来、著作権者から異議を唱えられる可能性がある。

米国著作権法の規定は立法の参考に値する。米国著作権法第111条及び第119条は「法定許諾(statutory license)制度」を確立し、有線テレビ又は衛星テレビ事業者に半年ごとに著作権局に使用リストを提出させ費用を支払わせた後、無線テレビ番組を中継することができるものとしている。もともと衛星テレビの無線テレビ放送は家庭観賞に供するものに限定されていたが、2004年12月8日に採択された「衛星放送視聴拡大及び再許諾法案(The Satellite Home Viewer Extension and Reauthorization Act, SHVERA)」はこの法定許諾制を拡張し、費用を支払った後営業用の場所に対しても中継を行うことを認めた。法定許諾費用は双方の協議によるものとし、合意に達しなければ著作権局が裁定を行い著作権局が費用を受領し、その後著作権者の届出に基づき仲介して交付するものとしている。