著作の原作品又はその適法な複製物の所有者は、その原作品又は複製物を賃貸することができる。ただし、録音及びコンピュータプログラム著作はこれを適用しない。
貨物、機器又は設備に付随するコンピュータプログラム著作の複製物が貨物、機器若しくは設備に随行し適法に賃貸され、当該賃貸の主要な目的物ではない場合、前項但書の規定は適用しない。

【解説】

本条は、「賃貸権」の「ファースト・セール・ドクトリン(First Sale Doctrine)」又は「権利の消尽(exhaustion doctrine)」を規定するものである。著作財産権者は、第29条の規定により「賃貸権」を享有し、その著作を賃貸する権利を専有する。この「賃貸権」は、著作の複製物の所有権とのバランスを考慮した処理を行う。つまり、著作の原作品又は著作の複製物の頒布前においては著作財産権者の「賃貸権」の保護を重視しなければならないが、一旦著作の原作品又は複製物が著作財産権者の同意の下に最初に販売され又はその他の方法により「所有権」が移転した後は、著作の複製物の所有者の「所有権」に基づく賃貸を行う権利は全力をもって保護され、著作財産権者の「賃貸権」は最初の販売行為の後「消尽」する。

「権利の消尽」原則は、国際著作権法制において「国際消尽原則」「区域内消尽原則」及び「国内消尽原則」に区分される。「国際消尽原則」とは、権利の消尽の区域が全世界に及ぶものであり、著作財産権者はその同意の下に頒布した著作の原作品又は複製物に対して世界各地のどこで頒布又は賃貸されたかにかかわらず権利を主張することはできず、従って並行輸入された真正品は自由に頒布又は賃貸することができる。「区域内消尽原則」とは、権利が消尽する区域を一定の区域に限定するものであり、著作財産権者の同意を得て一定の区域内において著作の原作品又はその複製物が頒布された場合、著作財産権は当該区域内において消尽し、著作財産権者は当該著作原作品又は複製物の再頒布又は賃貸に対して譲渡権又は賃貸権を主張することはできない。例えばEUがこれを採用している。従って、EUの著作財産権者の同意の下に頒布された著作の原作品又は複製物のEU内部における賃貸、例えばドイツがフランスから輸入した真正品は自由に賃貸することができる。ただし、EU区域外からEU区域内への輸入、例えば米国からドイツに輸入された真正品は自由に賃貸することはできない。「国内消尽原則」の下では、賃貸権は当地の国内においてのみ消尽するものであり、著作財産権者が国内における頒布に同意していないことから、国外から輸入された真正品は賃貸することができない。

本条は「国内消尽原則」を採用しており、国内で頒布された著作の原作品又は適法な複製物の所有権者は当該複製物を賃貸することができ、再び著作財産権者の許諾を得る必要はない。本条が適用される著作の複製物は「適法な複製物」でなければならず、「消尽原則」の立法目的に照らして著作財産権者の賃貸権を制限するものであることから、当該複製物が著作財産権者の同意又は許諾の下に本国市場に流入した場合でなければ本条は適用されない。同意を得ずに市場に流入した場合には、例えば第87条の1に規定する輸入物のように、違法複製物でなくとも適正な利用による複製物又は台湾のWTO加入前若しくは2年の過渡期において権利者の許諾を得ずに行われた複製物は、自由に賃貸することはできないと解される。しかし、著作権専属責任機関の見解によれば、第87条の1の輸入物は賃貸可能であるとされている。

録音及びコンピュータプログラム著作の複製物は容易に複製され、その賃貸は著作財産権者に深刻な損害をもたらすことから、第1項但書は「消尽原則」の適用を排除した。ただし、貨物、機器又は設備に付随するコンピュータプログラム著作の複製物が貨物、機器若しくは設備に随行し適法に賃貸され当該賃貸の主要な目的物ではない場合、例えば、コンピュータプログラム著作が含まれる飛行機、自動車又は電気設備の賃貸において、飛行機、自動車又は電気設備が賃貸の主要な目的物でありコンピュータプログラム著作が賃貸の主要な目的物ではない場合はこれを禁止する必要はなく、第2項において第1項但書の規定を排除する規定を設け、賃貸ができるものとした。

実務上、ビデオテープ発行業者は、すべて市場に流通している映画ビデオの所有権は依然として自己に帰属し、映画ビデオの所有権を一度も販売したことはなく、著作権法第37条を通じてレンタルショップに賃貸を許諾しているのだと主張している。従って、ビデオテープレンタルショップは映画ビデオの所有権を取得していない以上、当該映画ビデオを販売することはできない。そのレンタルショップが当該映画ビデオを販売した場合に、映画ビデオに「この映画ビデオの所有権は○○会社に帰属しており、書面による販売許諾の同意を得ていない場合は、すべて権利侵害行為となります。」との表示があれば、買受人は当然その所有権は依然としてビデオテープ発行業者に帰属していることを承知しているはずで、所有権の取得を主張し第60条に基づき賃貸を行うことはできず、せいぜい自己において鑑賞できるくらいである。チェーン店は、海賊版を頒布していないものの、許諾を得ずに所有権が映画ビデオテープ発行業者に帰属する真正版を頒布することで第91条の1に違反し頒布権を侵害する場合があり、その所有権未取得の販売行為は無権原処分行為であり、また、買受人において映画ビデオの表示からその状況を知ることができるのであるから、善意の第三者として映画ビデオの所有権を主張することはできず、当然賃貸することもできない。これは、ビデオテープ発行業者による著作権法第60条を回避するための常とう手段であるが、このように処理することは法律上確かに可能である。