新聞・雑誌又はインターネット上に掲載された政治、経済若しくは社会時事問題に関する論述は、その他の新聞、雑誌により転載又はラジオ又はテレビ放送局により公開放送又はインターネット上で公開送信することができる。ただし、転載、公開放送又は公開送信の禁止が明記されているものはこの限りでない。

【解説】

本条は、時事論述の適正な利用に関する規定である。新聞・雑誌又はインターネット上に掲載されたすべての政治・経済又は社会的な時事問題の論述は、転載、公開放送又は公開送信を禁ずる旨明示がある場合を除き、その他の新聞・雑誌において転載又はラジオ・テレビにより公開放送することができ、如何なる者もインターネット上で公開送信することができる。転載を行い得る主体については新聞・雑誌に限定され、公開放送を行い得る主体はラジオ・テレビに限定されるが、インターネット上で公開送信を行い得る者については、本条は制限を設けていない。インターネットがこのように普及したデジタル環境の下において、主体を無制限とするこの規定が妥当か否か疑問がないわけではない。自己の権利を保護するため、インターネット上で時事論述を発表する者は、本条に基づき他人に自己の著作を適正利用されることを望まないのであれば転載禁止の文言を明示し、本条但書の排除規定が受けられるようにしなければならない。

本条但書に基づき転載禁止を明示する主体は、政治、経済又は社会的な時事問題の論述の著作財産権者本人又はその委託を受けて明示する者であり、著作財産権者本人又はその委託を受けた者による明示でなければ本条但書により他人の利用を禁止する効力は生じない。「転載、公開放送又は公開送信禁止」の表示方法に至っては、本法はその方式、内容又は場所について規定を設けていないが、客観的に、利用者が特定の新聞、雑誌又はインターネット上に掲載された政治、経済又は社会的な時事問題の論述を利用する際に、利用者に当該特定の論述は著作財産権者により転載、公開放送、公開送信が禁止されているものであることを明確に周知させるに十分なものでなければならず、そうでなければ立法趣旨に反する。

本条に基づき公開送信の適正な利用がなされる場合において、その公開送信前に必ず行われる複製行為については本条には含まれていないものの、第65条第2項の「その他の適正な利用」に該当すると認められ、複製権侵害とはならない。