「著作権法逐条解説」の中国語ネット版は、2004年10月に第1条からスタートし、一条毎に「著作権筆記」(http://www.copyrightnote.org/)において公開してきました。当初はそれほど積極的に執筆していたわけではありませんでした。2006年初頭になって当時、全く面識のなかったのですが、対岸の中国社会科学院で知的財産法の博士課程に在籍していた萩原有里さんとインターネットを通じて相互協力の合意に達し、営利目的無しという前提の下、彼女は逐条解説の内容を日本語に翻訳し、ネット上に中国語版をアップロードした後、彼女自身のウェブサイト(http://tw.commentaries.asia/)にもアップロードすることにより、情報の伝達範囲も拡大しました。

萩原有里さんが日本語版にご尽力してくださったことにより、「著作権法逐条解説」の中国語・日本語の解説すべてが2006年末に完成しました。また、五南図書出版集団のご協力とご厚意により、「著作権法逐条解説」の中国語版は2007年3月に台湾で発行され、書籍発行後も中国語・日本語のネット版は引き続きネット上で公開され続け、随時更新されております。

中国語書籍の初版から今回の改訂まで2年半との短い期間ではありますが、この間に著作権法は2度の改正があり、これには2007年7月11日に新設された第87条第1項第7号のインターネット上で違法交換ソフトウェア又は複製技術を提供することを著作権侵害行為とみなすこと、第93条第4号の処罰規定、第97条の1の法院の権利侵害認定又は違法業者に対する営業停止若しくは強制廃業命令に関する条文、2009年5月13日のインターネット・サービス・プロバイダにセーフ・ハーバー(Safe Harbor)を提供するために新設された第6章の1「インターネット・サービス・プロバイダの民事免責事由」が含まれます。これらの改正規定はあちらこちらで異議があり、著作権者に過度に偏り、科学技術の発展と公衆の情報アクセスに関する権益に影響を及ぼし、必ずしも著作の適法な利用に資するものとはなっておりません。しかしながら、すでに立法手続が完了した以上、普遍的に適用されるものであり、否が応でも向き合わなければならない事実であります。それゆえ、逐条解において立法の意図及びその適用形態を詳細に述べ、これらの条文に対するさらなる批判については、そのほかの論文において行うこととし、逐条解説において多くを語ることは不適切であると考えました。各界の検討、討論におけるそのほかの改正条文草案はまだ定説ではありません。その討論課程について読者の皆様は「著作権筆記」の「討論園地」をご覧になって把握し、討論に参加し、将来、立法完成後、逐条解説の書籍第三版改訂までの間は「著作権筆記」において一足先にその内容を楽しむことができます。

ここで触れておかねばならないこととして、萩原有里さんの詳細且つ正確な日本語翻訳により、日本実務界及び学界の関心と興味を引き、2008年8月下旬に日本の政府機関を母体とする財団法人である経済産業調査会が日本東京において日本語版の初版を発行しました。これは、台湾著作権法に関する論述が日本で日本語により発行された初めての例であり、日本の学界及び実務界の台湾著作権法制の理解に役立っています。日本語版発行日に、ちょうど私は東京におりましたので、経済産業調査会を訪問し謝意を述べることができました。

逐条解説の中国語版を世に出してから、偶然にも海を越え、国を跨ぎ、無償・相互互恵の日本語への翻訳許諾により中国語・日本語のネット版が完成し、それと並行して、その後中国語書籍として発展進化し、最終的に日本語書籍としても日本東京でも発行されました。このような劇的な発展の背景には、関係各位の知的活動の投入と私心のない貢献が含まれており、これも美談ではないかと思っております。