本法に基づき取得した著作権の保護は、当該著作の表現のみを保護するものであり、その表現される思想、処理手続、製作過程、系統、操作方法、概念、原理、発見には及ばない。

【解説】

本条は著作権法における「思想/表現(Idea / Expression)二元論」を明確にしている。即ち、独占を招き、創作及び文化の発展をおびやかすことのないよう、著作権法の保護対象は表現に限られ、表現の源となる思想、感情そのものは保護対象ではない。思想又は方法の保護については、それが専利法(訳注:発明特許、実用新案、意匠が含まれる)、営業秘密法又は不正競争法等の要件を満たすか否かを検討しなければならない。例えば、他人のテレビ番組のスタイルを参考にして別途番組を制作する場合は、単なるアイデア構想の模倣にすぎず、著作権法の侵害とは言えない。他人の録画著作を複製又は翻案して初めて著作権侵害に該当すると認められるであろう。また、撮影は当然技術が要求されるが、これは著作権法の保護対象ではなく、著作権法が保護するものはその技術の表現、即ち写真であって、如何なる者も撮影者の同意を得ずにその写真について著作権にかかる利用をすることはできないが、撮影者は他人が同じ場所で同様の技術、例えば角度、光線、背景を用いて類似した写真を撮影することを禁止することはできない。そうでなければ、著作者の独占排他権利はいささか強大すぎる。他人の絵の「模写」に関しては、似ていれば複製、似ていなければ翻案である。ただし、本当にある特定の景物に依拠して絵画を制作した場合は、似ているか否かにかかわらずそれは独立した創作であり、著作権侵害のおそれはない。しかし、法律上権利侵害はなくても学術上盗作ではないと認められ得るか否か、必ずしも同様に認定されるとは限らず、この問題については学会の見解に委ねられる。学術は学術、法律は法律であり、学術上の要求は非常に厳格であると考えられるが、法律上は必ずしも著作権法に違反するとは限らない。