本章の罪は親告罪とする。ただし、第91条第3項及び第91条の1第3項の罪は、この限りでない。

【解説】

本条は、本章の罪の刑事告訴について規定している。原則的に、本章の罰則は親告罪である。ただし、次に掲げる罪、(1)販売又は賃貸を目的として無断で光ディスクを複製し他人の著作財産権を侵害する罪(第91条第3項)(2)著作財産権を侵害する光ディスク(第87条第4号の規定に違反して輸入された光ディスクは含まれない)であることを知りながら頒布又は頒布の目的をもって公開陳列若しくは所持する罪(第91条の1第3項)について、これらの侵害行為は著作権者の権利に対して巨大な損害を与えることから、本法は特に親告罪とはせず、著作権者の告訴を待たずに検察官が速やかに起訴できるものとした。

親告罪に関しては、その「告訴」は犯罪者の「訴追要件」であり、犯罪の「捜査要件」ではない。従って、本条本文にいう親告罪は捜査の必要がなく、非親告罪のみ主体的に捜査が行われるというものではない。著作権侵害事件について、行為者の犯した罪が何であれ、本条の本文又は但書に定められる罪であるか否かにかかわらず、検察官は主体的に捜査を行うことができる。ただ、実際は、警察検察機関は人員配置の簡素化と有効な運用の観点から、非親告罪に対してのみ主体的に捜査を行い、親告罪は多くが主体的に捜査されない。これは、著作権者が従来あらゆる著作権侵害行為を非親告罪(俗称「公訴罪」)とすべきであると主張する主要な理由となっている。

また、告訴権は被害者の利益を保護するためのものであり、犯罪行為が生ずることにより被害者が存在し、このとき、被害者は法に基づき告訴権を取得する。従って犯罪行為の発生前には被害者が存在する筈もなく、告訴権も生じない。このため、告訴権の委託は、犯罪の前にこれを行うことはできず、犯罪の事実がすでに発生し、被害者の法益がすでに侵害され、法に基づき告訴権を取得し、この特定の事件について告訴権がすでに生じた段階で、他人に行使の代理を委託することが可能となる。

2009年10月26日原文修正に伴ない訳文修正