法人の代表者、法人又は自然人の代理人、被雇用者又はその他の従業員が、業務の遂行により第91条から第93条、第95条から第96条の1 の罪を犯した場合は、各該当条文の規定に基づいて行為者を処罰するほかに、当該法人又は自然人に対して各該当条文の罰金を科する。 前項の行為者、法人又は自然人の一方が告訴又は告訴の取り下げをした場合は、その効力は他方にも及ぶものとする。 【解説】 本条は、著作権侵害の両罰規定である。法人は法人の代表者、法人又は自然人の代理人、被雇用者又はその他の従業員の業務遂行結果について利益を享受することから、これらの者に対して監督及び注意義務を負う。例えば、これらの実際に業務を遂行する代表者等が業務の遂行により他人の著作権を侵害すれば、法人等は監督及び注意義務に違反していなかったと主張することはできず、法人にも法的責任を負わせるものとした。法人は究極的には実際の侵害者ではないことから、極端に重い責任を科すべきでなく、特に法人に対して人身の自由という制限を加えるのは妥当ではない。事実上、法人に対し自由を制限する自由刑を科すことはできないことから、本条第1項は、当該各法人又は自然人等に対して当該各条項の罰金を科し、その監督及び注意責任の強化を促し、著作権者の権益を確保するものとした。 著作権法の両罰規定は、同一犯罪について、行為者を処罰するだけでなく、業務主も処罰するが、これは責任転嫁ではなく、実際に著作権を侵害した従業員にその自己の違法行為について第91条から第96条の刑罰責任を負わせる一方、他方では業務主にその所属する従業員の業務上の違法行為について、本条第1項に基づき、業務主の監督不十分の責任を負わせるものである。 本条にいう「法人」には、「公法人」又は「私法人」の区別はなく、明文により「公法人」の適用を排除していない。この規定の重点は、行為者の雇用主に監督指導不十分の罰金刑を科することにあり、そのため、政府機関の公務員が業務執行により著作権を侵害した時、その所属機関に対して罰金刑を科することも含まれる。法人の代表者、法人又は自然人の代理人、被雇用者又はその他の従業員は、当該法人又は自然人自身と密接な関係があり、責任は互いに関連し、同様の法的処罰を受ける立場にあって個別の取り扱いをすべきでないことから、第2項は、著作権者がいずれか一方に対して告訴又は告訴の取り下げをした場合は、その効力は他方にも及ぶものとした。 2013年2月14日 原文修正に伴い訳文修正 2013年10月4日 原文修正に伴い訳文修正