他人に出資・委嘱し完成した著作については、前条に掲げた場合を除き、当該委嘱を受けた者が著作者となる。ただし、契約により出資者を著作者とする旨約定した場合には、その約定による。
前項の規定に基づき、委嘱を受けた者が著作者となる場合、その著作財産権は、契約約定により、委嘱を受けた者又は出資者に帰属する。著作財産権の帰属について約定がない場合は、その著作財産権は委嘱を受けた者が享有するものとする。
前項の規定に基づき、著作財産権が委嘱を受けた者に帰属する場合、出資者は当該著作を利用することができる。

【解説】

本条は、他人から出資・委嘱を受けて完成した著作の著作権関係について規定している。原則的に、他人に出資・委嘱して完成した著作は、委嘱を受けた者が著作者となり、著作者人格権及び著作財産権を享有する。例外的なケースにおいては、約定により出資者が著作財産権を享有するものとするか、又は出資者を著作者とし著作者人格権及び財産権を享有するものとすることができる。

いわゆる「前条に掲げた場合を除き」とは、例えば、出資者の委嘱により完成された著作が実際は委嘱を受けた者の被雇用者により完成した場合に、委嘱を受けた者とその被雇用者間において第11条に基づきその著作者及び著作財産権の帰属関係が確定された後は本条の規定を適用しないことを意味し、このような場合に、出資者が著作財産権を取得することを希望する場合には、第36条により著作財産権を譲り受けるよりほかない。

本条の原則に従い、委嘱を受けた者を著作者とし著作者人格権及び著作財産権を帰属させる場合に、平等かつ適正の見地から、出資者の利益を保護するために、第3項において特に「出資者は当該著作を利用することができる」旨規定した。この場合の「利用」とは、著作財産権にかかるあらゆる行為を含めた非独占的利用許諾による利用と解される。

出資・委嘱により完成した著作は、本条の原則に基づき委嘱を受けた者が著作者となり著作者人格権及び著作財産権を享有し、特段の約定を設ける場合にあっては出資者を著作者とする又は出資者が著作財産権を享有する旨約定することができるほかは、出資者以外の他人を著作者とする又は他人に著作財産権を帰属させるものとすることはできない。その他、この約定は、著作者を定める約定及び全著作財産権の帰属に対する約定を設けることができるとするものであり、異なる著作者人格権又は著作財産権の支分権について別々に委嘱を受けた者又は出資者に帰属させることはできない。例えば、氏名表示権は委嘱を受けた者が享有し公開発表権及び不当改変禁止権は出資者が享有する、又は翻案権は委嘱を受けた者が享有しその他の著作財産権は出資者が享有するものとする約定を設けることはできない。このような約定が設けられても、それは無効となる。

前述の説明のとおり、本条の適用は、独立したSOHO等の作者が自ら創作したものに限られる。独立したSOHOの作者、外部の特約作者及び出版社の間の契約を例に挙げると、各自の必要に照らして約定が設けられ、主として著作者の確定について次のように分類することができる。

1. 最終創作成果について、独立したSOHOの作者を著作者とし出版社を著作財産権者とする場合、独立したSOHO等の作者と外部の特約作者の間において、まず第12条の規定に基づき独立したSOHOの作者を著作者とする旨約定し、著作者人格権及び著作財産権を取得させた後、第36条の規定に基づき著作財産権を出版社に譲渡する。

2. 最終創作成果について、出版社を著作者とする場合、出版社は独立したSOHOの作者を介さず直接外部の特約作者と第12条の規定に基づき出版社を著作者とする旨約定し、著作者人格権及び著作財産権を取得する。

3. 最終創作成果について、実際に著作を完成させた者を著作者とし、出版社は著作財産権取得のみを希望する場合
(1) 独立したSOHOの作者と外部の特約作者において第12条の規定に基づき、外部の特約作者を著作者とし、独立したSOHOの作者が出資者の地位に基づき著作財産権を取得した後、第36条の規定により著作財産権を出版社に譲渡する。
(2) 外部の特約作者が著作を完成させ著作者人格権及び著作財産権を取得した後、第36条の規定により著作財産権を独立したSOHOの作者に譲渡し、その後、独立したSOHOの作者が第36条の規定により著作財産権を再び出版社に譲渡する。
(3) 外部の特約作者が著作を完成させ著作者人格権及び著作財産権を取得した後、独立したSOHOの作者を介さず、直接、第36条の規定により著作財産権を出版社に譲渡する。

このように、著作者の確定又は著作財産権の帰属については、確立された一定のスタイルがあるわけではなく、各当事者の要求、条件及び様々な配慮を全面的に検討して定められる。同様の理論から、報酬の支払に関しても当事者双方の約定によりこれを定めることができ、不明確である場合には随時新たに協議し、平等かつ適正であること、今後の提携が円満に進められることに重点が置かれる。また、各当事者の条件が異なることから、独立したSOHOの作者、外部の特約作者及び出版社間の契約において報酬支払に関する約定は必ずしも同様である必要はない。しかし、本条が「他人に出資・委嘱して完成させた著作」に対して規定を設けたからには、その完成した著作には対価があってしかるべきで、無償・義務により他人のために著作を完成させた場合には、本条の規定は適用されない。その場合には、第10条の規定により創作者が著作者となり著作者人格権及び著作財産権を取得し、他人は第37条のライセンシーとなって著作を利用することができるにすぎない。

本条第2項の著作財産権の帰属に関する約定は、著作財産権のすべての支分権を受嘱者又は出資者のいずれかに帰属させなければならず、著作財産権のすべての支分権につき「一部を受嘱者の享有、残りの部分を出資者に帰属させる」態様は含まれない。従って、他人に出資・委嘱して完成した著作について「委嘱を受けた者が公開上映権及び翻案権以外の著作財産権を取得し、その他の権利は出資者に帰属するものとする」というような約定は無効となり第1項及び第3項の原則に立ち返って、委嘱を受けた者が著作者となり、著作者人格権及び著作財産権を取得し、出資者は当該著作を利用することができるという規定が適用されることとなる。

本条により実際の創作者以外の出資者が著作者の地位を取得又は著作財産権を取得することは、いずれも承継取得ではなく原始取得であり、第22条の著作者人格権は譲渡又は承継することができないとの規定に違反しないし、第36条の著作財産権の譲渡にも該当しない。

第3項の「出資者は当該著作を利用することができる」に関しては、これは「法定許諾」に該当し、第37条の著作財産権の合意による許諾とは異なるが、その利用範囲の内容については争いのあるところである。実務上極めて限定的な解釈をとる者は、上記の法律条文にいう「利用」の範囲は法律上明文規定がないことから、解釈上ドイツの「目的譲渡」理論により出資者の出資目的及びその他の事情から総合的に判断し、出資者が当該著作を利用できる範囲を決定するものとする。しかし、この見解は、第22条から第29条に定められる著作者において行使することができる各著作財産権行為が含まれるものとさらに拡張して解釈することができる。理由は次のとおりである。

1. 出資者は、著作者の地位・著作財産権のいずれも未取得であり、究極的に出資した者であることに尽きることから、現行法は1992年以前の旧法における出資者に著作権を取得させる規定を廃止し、委嘱を受けた者に著作者の地位を取得させかつ著作財産権を享有させるよう改め、同時に出資者が著作を利用する機会を過度に制限すべきでないとした。

2. 著作権法が明文により出資者の利用範囲を制限していない以上、出資者における第22条から第29条に規定される各著作財産権行為の行使を禁じれば、出資者の利用行為は著作財産権侵害に該当し、権利侵害による刑事責任を負わなければならず、刑法の「罪刑法定主義」原則に違反する。

3. 中華人民共和国著作権法第17条は「委託を受けて制作した作品の著作権の帰属は、委託者と受託者の契約によってこれを定める。契約に明確な約定がない又は契約を締結していない場合は、著作権は受託者に帰属する」と規定しており、「最高人民法院の著作権民事紛争事件審理の法律適用の若干問に関する解釈」第22条は「著作権法第17条の規定により委託著作の著作権が受託者に帰属する場合に、委託者は約定の使用範囲内において著作を使用する権利を享有する。当事者双方において著作の使用範囲の約定がない場合は、委託者は委託創作の『特定の目的の範囲内』において当該著作を無償で使用することができる。」と規定している。台湾の現行著作権法が明文により「特定の目的の範囲内」の制限を設けていない以上、これを制限すると解釈すべきではない。

4. 比較法の視点からは、米国著作権法における出資・委嘱により完成した著作(Works-made-for-hire)の著作者の地位及び著作権は、すべて出資者に帰属する。台湾における出資・委嘱による著作は、法的地位上、断固として委嘱を受けた者を著作者とし著作権を享有させるとしていることから、出資者の利用範囲を過度に制限すべきではない。

その他、出資者の利用の範囲に他人にサブライセンスすることまで含まれるか否という問題がある。前述のように、出資者は法定許諾により他人の著作を利用するのであり、第37条の合意による利用ではないことから、同条第3項の著作財産権者の同意を得なければ第三者に利用をサブライセンスすることができないという制限はないはずであるが、出資者はいずれにせよ著作財産権者ではないのであるから、その利用許諾が著作財産権者の権利に重大な影響を及ぼす場合には、結果として適切ではない。それ故、出資者は自己の利用に無関係なサブライセンスは行うことができず、当該第三者はやはり第37条第1項の規定により著作財産権者の同意を得なければならないと解される。例えば、出資者が独立したSOHOに自己のマルチメディアコンテンツの一部として図案の完成を依頼し、当事者間において約定が存在せず、その許諾を受けた放送業者が当該マルチメディアを公開放送する場合又は自己の販売活動において広告会社に当該図案の印刷制作を許諾する場合は、独立したSOHOの同意を再度得る必要はないが、その他の企業が製品カタログとして当該図案を使用したい場合には、出資者はこれをサブライセンスすることはできない。

実務上よく問題とされるのは、委嘱を受けた者が出資者と出資・委嘱により著作を完成させる旨約定し、委嘱を受けた者が完成した著作を引き渡した後、出資者が各種の理由により対価を支払わないまますでに著作の使用を開始している場合、出資者は著作財産権を取得していないものの、本条第3項の規定により出資者は当該著作を利用することができる。出資者が約定に基づき対価を支払っていないことについては、民事上の違約責任問題であり、著作権侵害には該当しない。