著作者は、著作の原作品若しくはその複製物において又は著作の公開発表の際に、その本名、変名を表示する権利若しくは表示しない権利を有する。 著作者は、その著作から派生した二次的著作についても同様の権利を有する。
前条第1項但書の規定は、前項に準用する。
著作を利用する者は、自己のカバー・デザインを使用し、デザイナー又は主編者の氏名又は名称を付すことができる。ただし、著作者が特段の意思を示した場合又は社会的な使用慣例に違反するものは、この限りでない。
著作の利用目的及び方法に従い、著作者の利益に損害が及ぶおそれがない場合であって 社会的な使用慣例に違反しない場合には、著作者の氏名又は名称を省略することができる。

【解説】

本条は、著作者の「氏名表示権」について規定している。著作者は、著作の原作品若しくはその複製物において又は著作の公表の際に、その本名、変名を表示する権利若しくは表示しない権利を有し、同時に、その著作から派生した二次的著作についても同様の「氏名表示権」を有する。時として、異なる性質の創作に対して同一の著作者が異なるペンネームを使用する場合、ひいては特別な配慮から氏名表示を希望しない場合もあるが、如何なる者もその意思に背きその者の本名を表示したりペンネームを入れ替えたりすることはできない。また、著作者の原作品に対する「氏名表示権」は、その二次的著作にも及ぶ。例えば、小説の原著においてペンネームが使用されている場合には、翻案された映画についても同一のペンネームを使用するか又は著作者が同意したその他の氏名を使用するのでなければ、「氏名表示権」の保護が適切になされたとはいえない。

著作者の氏名又は名称の誤植又は遺漏については、「氏名表示権」の侵害に該当する。故意がなければ著作権法は過失犯を処罰しないことから、行為者は第93条の刑事責任を負わないが、民事上の責任は依然として負わなければならない。

通常、著作者は「氏名表示権」を享有しているものの、本条は次に掲げる特別な場合の例外規定を設けている。

1. 公務員著作の例外:第11条に基づき被雇用者が職務上完成させた著作及び第12条の出資委嘱により完成された著作で、公務員が著作者となり著作財産権は当該公務員の所属する法人に帰属する場合は、当該公務員は「氏名表示権」を主張することはできない。この場合、公務員は著作者ではあるもののその著作財産権は当該公務員が所属する法人に帰属し、公務執行の推進により当該著作の多くは機関の名義をもって公表されることから、第2項は第15条但書を準用すると規定し、このような場合、公務員に「氏名表示権」を享有させないものとした。

2. 利用者の表示:著作者において特段の意思表示がある場合又は社会的な使用慣例に違反しない場合を除き、著作の利用者は著作にカバー・デザインを施し、デザイナー又は編集者の氏名又は名称を付記することができる。例えば、他人の著作を収録改編後、カバーに自己を主編とする表示を付記するような場合がこれに該当する。

3. 社会的な使用慣例:著作の利用目的及び方法に従い、著作者の利益に損害を及ぼすおそれがない場合であって社会的な使用慣例に違反しない場合には、著作者の氏名又は名称を省略することができる。例えば、百科事典を編集する場合には、各事例解説の後にすべての著作者を表示する必要はない。

著作権侵害は、まず著作が存在することを大前提として、行為者が当該著作に対して違法な利用を行うことである。氏名表示権の侵害は、著作者が著作を完成した後、利用者が著作者の氏名表示権の行使に依らずして利用すること、又は著作者の行った氏名表示に従わずに著作者の氏名又は名称を省略することであり、著作の利用目的及び方法において、著作者の利益に損害を与え、又は社会における使用慣例に違反しているものである。自己の著作に他人の氏名を冒用すること、例えば、自己の作品に大家の氏名を付し、大家の大著であると人々を誤解させる行為は、大家の著作とは無関係であり、大家の著作者人格権を侵害しておらず、民法第19条の人格権における氏名権に関する問題である。

2009年7月12日 原文修正に伴い訳文修正。
2010年8月15日 原文修正に伴い訳文修正。