著作財産権者による新聞・雑誌への投稿又は公開放送の許諾は、別段の定めがある場合を除き、一度限りの掲載又は公開放送に対する許諾と推定され、著作財産権者のその他の権利に対して影響を及ぼさない。
【解説】
「投稿」作品の著作財産権は、作者と掲載先との間に特に約定がなければ原則的には投稿した作者に帰属し、作者は掲載先の同意を得ずともその著作をその個人の出版する専門書に収録し又は個人若しくはその他のウェブサイト上に転載することができ、ひいては他人に利用を許諾しても掲載先は如何なる権利も主張できない。つまり、掲載先は、作者との間に約定がなければ、例えば当該著作を新聞社の電子情報誌に掲載する、別途収録編集して選集を出版する又は他人に利用をサブライセンスする等の利用はできない。このような元の刊行物掲載以外の利用をしたい場合には、利用許諾条件について再度交渉を行わなければならない。
今日、紙面メディアと電子メディアのコラボレーションによる原稿募集をよく目にするが、紙面メディアへの作品投稿は同時に電子情報誌へ掲載するとの注記、又はウェブサイト上のフォーラムにおいて「このフォーラムにおいて発表された文章の著作権は、当社が所有します。当社の書面による同意なく、全部又は一部の内容を他のメディア上に転載又は使用することを禁じます。」との注記がありかつ添削する権利を有する旨説明がある場合であっても、これらは一方的な宣言にすぎず、法的には民法の「申込みの誘引」であって投稿者の著作財産権を拘束することはできない。投稿は「申込み」であり、掲載先の使用は「承諾」である。「申込みの誘引」の内容は「申込み」の範囲に含まれておらず、「承諾」の範囲は「申込み」の範囲を超えることはできない。従って、「申込みの誘引」の内容、即ち、各ウェブサイト又は紙面メディアによる電子情報誌への転載、又は転載のサブライセンス若しくは電子データベースの作成、内容の添削等その他の利用を希望する場合については、再度双方において約定を交わさなければ安全であるとはいえない。
1つの原稿を2カ所に投稿することに関しては、そもそも原稿の著作権は作者に帰属しているのであるから、一つの原稿を二カ所に投稿することは不道徳な行為であるかもしれないが、著作権法には何ら違反しない。従って、当事者双方において1つの原稿を2カ所に投稿してはならない旨約定がある場合には、1つの原稿を2カ所に投稿することは契約違反であり、違約による民事損害賠償責任を負わなくてはならない。新聞雑誌のウェブサイトに「1つの原稿を2カ所に投稿してはならない」と明示されていても、契約とみなすことはできず、これは新聞雑誌の一方的な宣言であって、新聞雑誌ウェブサイトは、原著作者と双方による書面による契約を締結しなければ、新聞雑誌ウェブサイトの主張は効果を生じない。
多くの新聞、雑誌、ウェブサイトにおいて「内容転載禁止」の明示があるが、原著作者が新たに1冊の書籍として編集・出版することを希望する場合に、新聞、雑誌、ウェブサイトの同意は必要であろうか?このような注記は、第61条の「新聞、雑誌又はインターネット上に掲載された政治、経済若しくは社会時事問題に関する論述は、その他の新聞・雑誌により転載又はラジオ又はテレビ放送局により公開放送又はインターネット上で公開送信することができる。ただし転載、公開放送、又は公開送信の禁止が明記されているものはこの限りでない。」との規定に起因する。新聞、雑誌、ウェブサイトが「内容転載禁止」を明示しているのは、その他の新聞、雑誌に転載、ラジオ又はテレビ放送局により公開放送又はインターネット上で公開送信されないようにするためである。ただし、著作権者による自己の自由利用には影響を及ぼさない。原著作者が新たに一冊の書籍として編集・出版することを希望する場合は、自らが依然として著作権者であるならば、そもそも新聞、雑誌、ウェブサイトの同意を必要としない。
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