専ら司法手続において使用する必要がある場合には、適正な範囲内において他人の著作を複製することができる。
前条但書の規定は、前項の場合に準用する。

【解説】

本条は、専ら司法手続において使用する必要がある場合の適正な利用に関する規定である。

原告、被告、訴訟代理人又は弁護人、ひいては司法人員を含めた如何なる者も、「専ら司法手続上の必要性」がありさえすれば、「複製」により著作を利用することができる。また、第63条第1項の規定に基づき「翻訳」をすることができるが、著作者人格権を尊重し、出典を明記しなければならない。その使用範囲は当然「適正な範囲内」でなければならない。また、この「適正な範囲内」の要件は、第2項において準用される第44条但書「当該著作の種類、用途及びその複製物の数量、方法に照らして著作財産権者の利益を害するものは、この限りでない」との規定のほか、第65条第2項に規定される4項目の基準に照らして認定される。

本条の利用目的が「専ら司法手続上の必要性」にあって、対外的には頒布・発行しない以上、「他人がすでに公開発表した著作」に限られるものではなく、未公表の著作もまた複製の適正な利用としてこれを行うことができる。

本条の適用の下において、訴訟当事者はその発言に根拠があることを証明するために、学者・専門家の論述を複写し付属文書とし証拠として法廷に提出することができ、また、相手方の書簡・書類を複写して主張・防御のために用いることができる。書籍を購入せず学者・専門家の論述を全部複写することは第44条但書の規定に明らかに違反しており、許されない。また、「『専ら』司法手続上の必要性」が求められる以上、法廷外で頒布されるプレス原稿又は事後に出版される訴訟事件の専門書に用いることは、適正な利用の範囲を逸脱しており、許諾を得なければこれを行うことができない。