著作者の死亡後、その遺言に別段の指定がある場合を除き、次の各号に掲げる者が各号の順序に従って、第18条に違反する者又は違反するおそれがある者に対し、第 84条及び前条第2項の規定に基づき救済を請求することができる。
(1) 配偶者
(2) 子女
(3) 父母
(4) 孫
(5) 兄弟姉妹
(6) 祖父母
【解説】
第18条の規定により、著作者である自然人の死亡又は著作者である法人の消滅後その著作者人格権の保護に関しては、生存又は存続時と同様如何なる者も侵害してはならない。著作者である法人が消滅した後その著作者人格権の保護を主張することができる者はいないが、著作者である自然人の死亡後においては、その最も近親の親族が著作者の真意を最も理解することができると考えられることから、本条は、著作者の親族関係の近親序列に従い当該各親族に第18条に違反する者又はそのおそれがある者に対して民事上の救済請求権を享有させた。
この請求権を享有する主体は著作者の遺言により指定された者が優先され、その後、本条の各号に定められる順序に従う。著作者が遺言により指定する者は本条各号が掲げる者に限定されず、その他の自然人又は法人を指定することができる。著作者の遺言により特定の者が指定されていない場合に限り、各号に定められる順序に従い権利を主張することができる者が決定される。一旦、先の序列者が救済請求権を行使すれば、後に続く序列の者は権利主張をすることができない。著作者人格権は、第21条の規定により著作者自身に専属し譲渡又は相続することができないため、本条に掲げられた者が取得する権利は著作者人格権ではなく、本法に基づき特別に関係者に付与される特定の請求権である。これらの救済請求権は著作者から承継されるものではなく、本法により特別に規定される原始取得である。
第4号にいう「孫」とは、三親等の「孫」に限定されるのか、又は三親等以外の「曾孫」若しくは「玄孫」にも及ぶのだろうか?本条の立法目的が、著作権者の最も親近且つ著作者の本意を最も理解している親族に対して、著作者の死亡後における著作者人格権の侵害者に対する救済提起の機会を与えようとしたことにかんがみれば、範囲を過度に拡大し過度に遠い関係の「孫」にまで及ぶとするべきではないため、三親等の「孫」に限定し、更に遠い関係のその他の親等の「孫」にまで及ばないと解釈される。
本条の請求権の範囲は、第84条に規定される「侵害排除請求権」「侵害防止請求権」及び著作者の氏名表示、内容修正又はその他名誉回復のための適切な処分の請求であり、第85条第1項の財産上又は非財産上の損害賠償請求権は含まれない。なぜなら、著作者の死亡後、著作者人格権の侵害救済に関して重要なことは、著作者の氏名、名誉回復又は著作内容の同一性保持であり、金銭上の補償ではないからである。
著作者人格権である公開発表権に関して、第15条第2項には「著作の公開発表について著作者の同意があったものと推定する」場合が規定されている。「推定」である以上、著作者は意思表示によりこれを覆すことができるが、これは著作者自身でなければ為すことはできない。第22条の規定に基づき著作者人格権は、相続又は譲渡ができないため、著作者の死亡後、その相続人は自ら著作者人格権を行使してその「推定」を覆すことはできない。従って同様の理論により、本条に定める関係者は、本条に定められた事項について、第84条及び第85条第2項の規定に基づき救済を請求することができるだけで、第15条第2項の「推定」を覆すことはできない。
2009年5月22日原文修正に伴い訳文修正
2009年7月21日原文修正に伴い訳文修正
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