以下のいずれかに該当する場合、インターネット・サービス・プロバイダは、権利侵害したとするユーザに対して賠償責任を負わない。

(1)第90条の6から第90条の8の定めに基づき、権利侵害したとする内容又は関係情報を削除又は他人のアクセスを不能にした場合。

(2)ユーザの行為が権利侵害であるとの事情を知った後、権利侵害したとする内容又は関係情報を善意により削除又は他人のアクセスを不能にした場合。

【解説】

本条は、インターネット・サービス・プロバイダが権利侵害したとするユーザに対して賠償責任を負わない場合の条件を規定している。インターネット・サービス・プロバイダが第90条の6から第90条の8の規定に基づき、又はユーザの行為が権利侵害であるとの事情を知った後、権利侵害したとする内容又は関係情報を善意により削除又は他人のアクセスを不能にした場合、ユーザに対して賠償責任を負わない。

インターネット・サービス・プロバイダは、第90条の6から第90条の8の規定に基づき、著作権者又は製版権者から通知文書を受領した後、その文書内容が形式的に整っていれば、即刻「削除」手続を行うことができる。情報に権利侵害の事実があるか否かについては、何ら判断責任を負わず、この「削除」手続が一旦実施されれば、著作権又は製版権侵害の責任を負わない。インターネット・サービス・プロバイダに、法律が付与した情報の中立処理の役割だけを果たすようにするために、事後、仮に当該「削除」された内容が侵害に該当しなかった場合でも、本条は明文により、ユーザに対して賠償責任を負わないものとした。インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダについては、さらに第90条の9に定める「ノーティス・アンド・テイクダウン」手続を履行しなければ、ユーザに対する賠償責任は免除されない。

第2項に定めるインターネット・サービス・プロバイダがユーザの権利侵害事実を知り、善意により当該権利侵害内容又は関係情報を「削除」した場合とは、著作権者又は製版権者の法に基づく通知のほか、その他のルートから権利侵害事実を知った場合に、インターネット・サービス・プロバイダが積極的に「削除」手続を行うことを奨励し、事後、仮に当該「削除」された内容が侵害に該当しなかった場合でも、本条は明文により、ユーザに対して賠償責任を負わないものとした。これは、インターネット・サービス・プロバイダにユーザの監督義務及び権利侵害の侵害性判断義務を課すものではない。
著作権者又は製版権者による第90条の6から第90条の8に定める通知が第90条の12に定める形式要件を満たさない場合でも、ISPは「テイクダウン」手続を実施することができ、事後、当該削除された内容が権利侵害には該当しないことが証明されても、第90条の10第2号に基づき、当該権利侵害の疑いのあったユーザに対して賠償責任を負わない。

2009年7月2日 原文修正に伴い訳文修正。
2011年2月23日 用語統一のため修正