無断複製により他人の著作財産権を侵害した者は、3年以下の有期懲役、拘留若しくはニュー台湾ドル75万元以下の罰金に処し、又は罰金を併科する。
販売又は賃貸の目的で無断複製し他人の著作財産権を侵害した者は、6月以上5年以下の有期懲役に処し、ニュー台湾ドル20万元以上200万元以下の罰金を併科することができる。
光ディスクの複製により前項の罪を犯した者は、6月以上5年以下の有期懲役に処し、ニュー台湾ドル50万元以上500万元以下の罰金を併科することができる。
著作が単に個人的な参照又は適正な利用に供される場合には、著作権侵害とはならない。
【解説】
本条は、複製権侵害、即ち第22条に規定される複製権侵害の刑事責任を規定し、光ディスクと光ディスク以外の海賊版製品に対してそれぞれ異なる処罰を設けた。
第1項は一般の複製権侵害を規定しており、刑罰は比較的軽く、3年以下の有期懲役、拘留若しくはニュー台湾ドル75万元以下の罰金に処するものとし、又は罰金を併科するとしている。第2項は、例えば夜店で海賊版書籍又はアニメーション図柄がプリントされたシャツ等を販売する又は貸本屋で海賊版小説や漫画を貸し出す等、特に「販売又は賃貸」の目的をもって複製権を侵害する者に対し、比較的重い6月以上5年以下の有期懲役を科し、ニュー台湾ドル20万元以上200万元以下の罰金を併科することができるとしている。
複製権侵害は最も典型的な著作権侵害のケースであり、一般的に「盗作」と称され、多くは複製権侵害に該当し、翻案権侵害のケースもある。他人が著作財産権を享有する著作の複製は、適正な利用である場合を除き、全部又は一部かにかかわらず複製権侵害に該当する。複製権侵害の基準、換言すると、どのくらいの割合で複製すれば侵害に該当するのかという問題に関しては、著作権法は明文規定を設けておらず、複製行為の態様に照らし、複製の質と量について社会における客観的な基準により検討しなければならない。一つの著作に対し、広い範囲で複製を行えば侵害であると容易に認められることはもちろん、複製部分が少なくても著作の核心部分が複製されれば侵害であると容易に認められる場合もある。従って、どのくらい複製したら複製権侵害に該当するかは、個別具体的に事件の状況に照らして検討し、認定されるべきである。
第3項は、特に光ディスクの海賊版に対して処罰を加重するものである。光ディスクの海賊版は、コストが低く所要時間も短く大容量であり、著作権者に対して深刻な損害を与えることから、「販売又は賃貸」を意図して違法に光ディスクを製造した場合には、処罰を厳重にすることで抑止しようとするものである。この海賊版光ディスクには、CD、VCD、DVD、CD‐R等が含まれ、その内容は録音著作、視聴覚著作、コンピュータプログラム著作に限定されず、光ディスクに固定されたものはすべてこれに含まれる。また条文は「光ディスクの複製により他人の著作財産権を侵害したもの」と定め、侵害された著作がもともと光ディスクに固定されたものに限定していないことから、コピー元を小説本、カセットテープ又はVHS若しくはBeta等の録画テープとして無許諾で光ディスクに転換する場合も含まれる。単純な頒布目的による違法複製にすぎず、「販売又は賃貸」を意図するものでなければ、第1項が適用され、第3項は適用されない。
第4項は、著作を単なる個人的な参照として供する又は適正な利用である場合は、著作権侵害に該当しない旨規定している。これは、著作権法が立法院において審議される際に、立法委員が支持した誤った立法である。なぜなら、「著作の適正な利用は、著作財産権の侵害に該当しない」との規定は、すでに第65条第1号において明文規定があるにもかかわらず、現行の規定は議会討論の際に龐建国委員の支持の下、この重畳規定が設けられたからである。事実、蛇足であり、いたずらに法制の混乱を招いた。台湾著作権法にいう「著作権」には、「著作者人格権」と「著作財産権」が含まれ、適正な利用は著作財産権のみに対する制限にすぎず「著作者人格権」の行使を妨げないことから、適正な利用であっても「著作者人格権」を尊重し、第64条に従って出典を明示しなければならない。また、第66条は「第44条から第63条及び第65条の規定は、著作者の著作者人格権に対して影響を及ぼさない。」と明文で規定し、本条は「著作の適正な利用である場合」「『著作権』の侵害には該当しない」と規定しているが、将来、他人の著作に対して適正な利用を行い出典を明示しなかった場合、「著作者人格権」の侵害か否か、第96条に基づき処罰すべきか否かは定かでない。さらに妥当でない点は、議会討論の際、蘇盈貴委員が追加を主張した「著作の単なる個人的な参照」は「著作権の侵害には該当しない」という一文である。この追加の本来の意図は、学校内において学生が他人の著作を利用することに対して権利侵害責任を免除することにあったが、道理がないばかりでなく、濫用にすぎる。学校内は治外法権ではなく、第65条第1項は「著作の適正な利用は著作財産権の侵害に該当しない」と規定し、学校には第44条から第65条の間において非常に多くの適正な利用となる余地が確保されており、第91条第4項が「著作の単なる個人的な参考」と「適正な利用」を併記していることは、「適正な利用」でない「著作の単なる個人的な参照」としての著作の利用が「著作権の侵害に該当しない」ことを意味し、「単なる個人的な参照」でありさえすれば、数量の如何にかかわらず「適正な利用」の範囲を超えてもすべて「著作権侵害に該当しない」とされ、刑事責任がないばかりでなく民事責任までも免除されるということになり得る。この条文は第91条第4項に位置するが、明文規定による制限がない以上、前項3項の複製権の侵害にのみ適用される。解釈上、複製権以外の公開口述、公開上映、公開放送等のすべての著作財産権にかかる行為へ適用することは、本来非常に厳格な要件の下「適正な利用」の規定に基づき他人の著作の自由な利用を認めるという著作権法の重要な原則が完全に反故にされることとなり、ベルヌ条約、WTOのTRIPS協定、WCT及びWPPTにより確立された「適正な利用」のスリー・ステップ・テスト①「関連する特定の状況下において」②「著作の通常の利用と衝突しない」③「他人の法定利益に不合理な損害を与えない」に反する。従って、この条項の文言は、著作権法専属責任機関である智慧財産局の見解によれば、次のとおりである。「1.第91条第4項にいう『単なる個人的な参照』は、第44条から第65条の適正な利用の条文において個人的な参照に関する事項がすでに存在することを強調するにすぎず、既存の適正な利用の条文範囲を拡大しするものではなく、既存の適正な利用制度のほかに別途刑事免責の範囲を創設もしていない。2.第91条第4項にいう『著作権の侵害に該当しない』とは、著作財産権の侵害に該当しないという意味であり著作者人格権はこれに含まれない。3.第91条第4項の『単なる個人的な参照』の規定は適正な利用の例示規定であり、それ自体は第44条から第65条の適正な利用の範囲を拡大又は縮小するものではない。第91条の1、第92条、第93条及び第94条の規定違反の有無を判断する際に、依然として第44条から第65条に規定される適正な利用の要件の有無を判断し、当該各条項の規定に違反するか否かを決定しなければならない」。これらの説明を前述の分析に照らし合わせると、すべて行政機関が立法院による誤った立法に対してやむを得ず善後策を講じており、それが妥当であるか否かは将来司法機関の裁判認定に委ねられるが、刑事法における「罪刑法定主義」の下被告人をいかに納得させるかは司法機関の知恵に頼る他はない。
2009年5月22日原文修正に伴い訳文修正
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