著作財産権は、その全部又は一部を他人に譲渡又は他人と共有することができる。
著作財産権の譲受人は、その譲り受けた範囲内において著作財産権を取得する。
著作財産権の譲渡の範囲は当事者の約定によるものとし、約定が不明確な部分については譲渡していないものと推定する。

【解説】

著作者は、著作を完成させた時から著作財産権を享有するが、必ずしもその権利の行使にたけているとは限らない。むしろ、それを専業とする者又は需要者の利用に供しそこから報酬を得て自らは創作に専念するほうが賢く有利な選択であるといえる。著作財産権を他人に処理させる方法には、著作財産権の許諾又は著作財産権の譲渡等があるが、それらの方法の間には大きな隔たりがあり、慎重を要する。

著作財産権は、その全部又は一部を他人に譲渡又は他人と共有することができる。共有は著作財産権を取得した時点で形成される状態であり、譲渡は権利の全部又は一部の譲渡にかかわらず著作財産権取得後の行為であるが、当該譲渡部分に対して再び著作財産権を享有することはなく、譲受人が著作財産権を取得する。

部分的な譲渡、例えば、小説家が小説の複製権を出版社に譲渡したがその他の著作財産権は引き続き自己が保有しているようなケースにおいて、テレビ会社がその小説を映画化したい場合には翻案権を享有している小説家の許諾が必要となるのであって、出版社の許諾ではない。他方で、著作財産権の譲受人はその譲り受けた範囲内において著作財産権を取得することから、小説を書籍化したい場合には出版社の許諾が必要となる。

著作財産権の譲渡について、著作権法は必ず書面によらなければならないとは規定していない。口頭の約定でも、譲渡の重要な事項について合意があれば、たとえ書面の契約書に署名がなくとも、譲渡契約はすでに成立し、有効なものであり、著作財産権の譲渡の効果はすでに生じている。しかしながら、書面は、挙証に有利であり、後日、紛争が生じた際には、明らかな証拠とすることができるので、書面により著作財産権の譲渡の詳細について、一つ一つ明記し、紛争を避けるようアドバイスする。

著作財産権の譲渡方法と範囲には複数の態様があり、条件も異なることから、著作財産権の譲渡の範囲は、完全に当事者の約定による。約定が不明確な部分については、著作財産権者を保護するために法律は「権利保留」原則を採用し、譲渡していないものと推定することとした。