音楽著作が録音されている商業用録音著作が発行後6月を経過した場合に、当該音楽著作を利用してその他の商業用録音著作を製作しようとする者は、著作権専属専任機関に強制許諾の許可を申請し、使用報酬を支払った後、当該音楽著作を利用し、別に録音製作することができる。

前項の音楽著作の強制許諾の許可、使用報酬の計算方法及びその他遵守すべき事項についての詳細は主務官庁によりこれを定めるものとする。

【解説】

音楽著作の強制許諾は、国家の経済発展レベルに関係なく、純粋に音楽著作の特殊性に対応して規定を設けている。音楽著作が高度の経済利益を有し、実際に大部分の音楽著作はその完成した時点からレコード産業に掌握されていることから、著作権法により音楽著作が保護されレコード産業に大量の音楽著作を独占させることになれば、大衆の観賞用として十分に流通させることができない。このような理由に基づき、先進国家の著作権法は、音楽著作の保護を開始する際に同時に音楽著作の強制許諾制度を確立し、一旦音楽著作が商業用録音著作として製作され市場において発行されれば、その他の者は政府主務官庁に許諾を申請し、事前に著作財産権者に主務官庁が定めた報酬を支払った後、別途録音著作を制作することができる旨規定した。音楽著作は、幅広く普遍的に使用されなければその経済価値を発揮することはできない。著作権者がその製作した商業用録音著作を市場において発行した以上、その他の者による録音著作の再製作は、適切な報酬を支払いさえすれば音楽著作権者の経済利益に過度の損害を与えることはないはずであり、台湾著作権法第69条も音楽著作の強制許諾制度を設けている。

本条第1項は、一旦音楽著作が商業用録音著作として製作され発行後6月を経過した場合に、当該音楽著作を利用してその他の商業用録音著作を製作しようとする者は、経済部智慧財産局に強制許諾を申請し、使用報酬を支払った後、別に録音製作することができる旨規定している。強制許諾を受けることができる対象は音楽著作に限られ、対象となる行為は商業用録音著作の製作に限られることから、録音著作の利用について強制許諾を申請することは認められず、また、音楽著作から非商業用の録音著作又はその他の種類の著作を製作することも許されない。経済部智慧財産局の許諾の可否は行政処分であり、許可された場合著作財産権者は異議を申し立てることができ、また、許可されなかった場合にも申請者は異議を申し立てることができる。さらに許可された場合であっても、申請者が許諾費用の料率が不適切であると考えた場合には、異議を申し立てることができる。注意しなくてはならないのは、経済部智慧財産局が決定した費用料率に基づき使用報酬を支払わず事前に録音製作を行った場合には複製権侵害であり、第47条が使用後報酬を支払ってもよいと規定している点とは大きく異なる。

音楽著作の強制許諾、使用報酬の計算方法及びその他遵守すべき事項については、主務官庁が遵守規範として「音楽著作の強制許諾申請許可及び使用報酬弁法」を定めている。