著作の完成が中華民国 81年(1992年)6月10日の本法改正施行前であり、かつ中華民国 87年(1998年)1月21日改正施行前の本法 第106条から第109条の規定のいずれかに該当するものは、本章に別段の定めがある場合を除き、本法を適用する。
著作の完成が中華民国 81年(1992年)6月10日本法改正施行後であるものは、本法を適用する。

【解説】

本条は、異なる時期に完成した著作に対する本法の適用について規定している。台湾著作権法は1928年の制定以来、1944年、1949年、1964年、1985年、1990年、1992年6月、7月、1993年、1998年、2001年、2003年、2004年、2006年、2007年の14回にも及ぶ改正を経ている。著作権の取得の制度的な面においては、1985年以前は、登録保護主義を採用しており、即ち著作権登録の許可を得なければ著作権を享有することはできなかったが、1985年以降に採用した創作保護主義により、著作者は著作の完成と同時に自動的に著作権を享有するものとされ、著作権登録は要件ではなくなった。その他、著作財産権の保護期間に関して、歴代の著作権法の規定は著作の最初の発行日より起算するものとし、著作者の生存期間に30年を加算若しくは30年、又は特定の著作は10年若しくは20年とする等異なり、現行著作権法は著作者の生存期間に50年を加算又は著作の公開発表日から50年までと延長した。歴代の著作権法により定められた期間の異なる著作権保護期間及び著作権登録手続の有無の相違については、歴代の著作権法においてその取り扱いが定められているが、度重なる適用の下、それは甚だ複雑なものとなっている。以下、本条に従い細分化を行った。
1. 歴代の旧法の規定に基づき保護を受ける著作、例えば、歴代の新法の改正前において旧法の規定によりその著作財産権の保護期間が満了している場合、改正法により著作権の保護期間が延長され、改めて保護を受ける「死からの復活」はない。例えば、1985年以前の著作権法第9条第4項は「映画は著作者が著作権を10年享有する。ただし、法令に基づき制作が認められたものに限られる。」と規定し、1985年改正著作権法第11条は「編集、映画、録音、録画、撮影及びコンピュータプログラム著作の著作権存続期間は30年とする。」と規定しているが、1975年7月以前に発行され、かつ当時著作権登録手続を行い、10年間の著作権を享有している映画の著作財産権が1985年の著作権法改正前に存続期間満了によりすでに消滅していれば、1985年以後、30年の著作財産権存続期間の享有、即ち「死からの復活」を主張することはできない。反対に、前述の映画が1975年7月以前に存在し、1965年7月11日以降に発行されたが当時著作権登録手続を行わなかった場合、1985年以降、創作保護主義により著作権登録をしなくても30年の著作財産権存続期間を享有することとなり、さらに1992年著作権法第34条第1項は「撮影、視聴覚、録音及びコンピュータプログラム著作の著作財産権は、著作の公開発表後50年存続する。」と改められたことにより、当該映画は事実上その公開発表後50年の著作財産権保護期間を享有する。

2. 歴代の旧法の規定により保護を受ける著作は、例えば新法施行の当日、旧法の規定によりその著作財産権の存続期間満了に達していない場合は、新法による期間延長に基づきその著作財産権の存続期間が計算される。例えば、1975年7月12日以降発行された映画は、1985年著作権法改正公布前において著作権登録手続を行ったか否かにかかわらず、1964年著作権法に基づき10年の著作権存続期間を享有し、1985年著作権法の施行当日、期間が満了していなければ、1985年の著作権法に基づき、その著作財産権存続期間はその公開発表後から起算して30年に延長され、さらに1992年以降、1992年著作権法に基づき、その公表後から起算して50年の著作財産権存続期間を享有する。事実上、本条の規定に基づき、1965年7月12日当日又はその後発行された映画は、著作権登録を行わなくてもその公表後から起算して50年の著作財産権存続期間を享有する。

3. 1985年7月10日改正前の著作権法が登録保護主義を採用していた時期に完成した著作は、1965年5月11日の改正公布と同日に施行された著作権法施行細則第4条が「登録していない著作であってすでに20年以上流通しているものは、本法に基づき登録を申請し著作権を享有することができない。原著作者が新たな理論を詳細に説明するために改訂発行した場合には、その流通期間は改訂発行後から起算するものとする。」と規定していたことから、1985年7月10日改正施行された著作権法が創作保護主義を採用した後、1985年改正法により保護を受けることを希望する場合は、まず前述の施行細則第4条の規定をクリアしていなければ保護を受けられない。従って、1985年7月10日の改正著作権法が1985年7月12日に発効・施行された日から遡って推計して20年、即ち1965年7月11日当日又はその前に完成・流通し、かつ著作権登録手続を行っていない著作は、1985年7月10日著作権法改正施行後において、本条の規定に基づき、本来、創作保護主義を採用した1985年著作権法が適用され保護を受ける余地はないが、第106条の1の規定に従い、2002年1月1日の台湾のWTO加盟後において遡及して本法の保護を受けることができる。

4. 本条が適用される対象は、台湾人の著作のほか、著作権法第4条の定めに該当する外国人の著作も含まれる。