著作の完成が世界貿易機関を設立するマラケシュ協定の中華民国 の管轄区域内について効力を生ずる日より前に、歴代の本法の規定に基づいて著作権を取得し、本法に定める著作財産権の期間計算により存続していないものに対して、本章に別段の定めがある場合を除き、本法を適用する。ただし、外国人の著作がその本国において存続期間が満了しているものには適用しない。
前項但書にいう本国とは、西暦1971年文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約の第5条の規定により決定する。

【解説】

本条は、台湾のWTO加盟以前に完成した保護を受けない著作について、台湾のWTO加盟後においてどのように保護するかを規定しており、換言すれば台湾のWTO加盟後の遡及保護条項である。

台湾はWTO加盟後、WTO関連条約及び協定に調印し、それには知的財産権に関する「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Trade Related Aspect of Intellectual Property Rights, including Trade in Counterfeit Goods,略称TRIPS協定)」も含まれる。TRIPS協定は著作権法第4条第2号に定められる「条約、協定」に該当し、すべてのWTO加盟国の国民の著作はこれに基づき台湾において著作権法の保護を受ける。その他、WTO加盟国の国民である外国人の著作がこれにより保護を受けるほか、TRIPS協定第9条第1項が加盟国にベルヌ条約の規定の遵守を要求していることから、ベルヌ条約第7条の著作財産権の保護期間に関する規定は、著作者の生存期間に50年を加算又は著作の公開発表後から50年であるとし、当該条約第18条の規定により遡及保護の適用があり、以前保護を受けたことのない著作の一部(台湾人の著作でパブリックドメインとなったものも含む)に対してもTRIPS協定が遡及保護を要求したことから保護が開始された。第106条の1から第106条の3は、遡及保護原則と善意の利用者の利益に配慮した経過措置条項である。

本条の適用により保護を受けるものは、台湾のWTO加盟前に完成したすべてのWTO加盟国の国民の著作であり、ここにいう「すべてのWTO加盟国の国民の著作」には台湾人の著作も含まれるが、次に掲げる場合に限られる。

1. 台湾のWTO加盟前に台湾の歴代著作権法により著作権法による保護を受けていない場合。以前保護を受け著作財産権の存続期間が満了していないものは、第106条の範囲に含まれる。従前保護を受け著作財産権の存続期間がすでに満了しているものは「死からの復活」はなく、改めて保護を受けることはできない。

2. 現行著作権法の規定に基づき、著作財産権の存続期間が満了していない場合。この期間は、台湾のWTO加盟の日から、現行法第30条から第35条の規定に従い著作者の生存期間に50年を加算又は公表後50年の存続期間まで遡及する。従って、1965年7月11日当日又はそれ以前に完成・流通し、著作権登録手続を行っていないすべてのWTO加盟国の国民の著作に及ぶ。

3. 外国人の著作の場合、その本国の著作財産権保護期間計算によると存続期間が満了していない外国人の著作であって、その本国においてすでに著作権法の保護を受けていない場合は、ベルヌ条約第7条第8項により、その他の加盟国は再び著作権保護を与える必要はない。

本条が適用される著作には、以前台湾著作権法の保護を受けたものは根本的に含まれない。その著作財産権存続期間が歴代改正著作権法に基づき満了した本国人又は外国人の著作、換言すれば、歴代著作権法により著作権保護を受けたが旧法施行期間にその保護期間がすでに満了した著作にあっては、これにより遡及保護条文が適用され「死からの復活」はなく、改めて保護を受けることはない。