第112条の規定に違反した者は、1年以下の有期懲役、拘留若しくはニュー台湾ドル2万元以上25万元以下の罰金に処し、又は罰金を併科する。

【解説】

本条は、第112条の規定に違反する処罰について規定するものであり、即ち「6月12日最終期限」を経過した後の翻訳許諾を得ていない翻訳物の販売行為は処罰される。

いわゆる「6月12日最終期限」とは、1992年6月10日より前において著作財産権者の同意を得ず行われた外国人の著作の翻訳は、1994年6月12日以降販売を行ってはならないとされ、販売は1994年6月12日を最終期限とされたことを意味する。

1992年6月10日の著作権法改正前においては、外国人の著作は台湾において登録がないものは台湾著作権法の保護を受けなかったことに起因する。ただし、米国人の著作は、1946年11月4日に締結した「中華民国 とアメリカ合衆国の間の友好通商航海条約」の約定により、台湾において国民待遇を享有することから、登録の必要はなく、即、著作権法の保護を受けた。しかしながら、著作権法の保護を受ける外国人の著作であるか否かにかかわらずその翻訳権はすべて保護を受けず、台湾人が許諾を得ずに自由に外国人の著作を翻訳しても違法ではなかった。従って、国内の多くの出版社は、外国の名著の中国語翻訳書を大量に発行・販売し、大衆の間に広めていた。

1992年6月10日改正著作権法はこのような制限を設けず、すべて著作権の規定により保護を受ける外国人の著作は保護を受けるために著作権登録手続を行う必要はないとし、台湾著作権法の保護を受ける外国人の著作についてその翻訳権もまた保護を受け、台湾著作権法の保護を受ける外国人の著作を翻訳する場合には同意又は許諾を得なければならないとした。ただし、先の法律規定を信頼し翻訳を完成させ市場において販売されている翻訳本については、著作権法はその信頼の利益を保証するために第112条に規定を設け、1992年6月12日の新法の施行発効日から印刷製作してはならず、すでに印刷製作が終了している場合は2年の期間満了後販売してはならないとした。従って、販売は1994年6月12日を最終期限とし、出版社は、今までの許諾を得ていない翻訳書はすべて1994年6月12日以前に極力販売に努めることとなり、これがいわゆる「6月12日の最終期限」である。

「6月12日の最終期限」に違反し引き続き販売した行為に対し、1992年6月10日改正著作権法においては民事上の損害賠償を請求できるにすぎず、刑事責任規定は設けられていなかった。1998年1月21日改正著作権法は、第95条第4号において「1年以下の有期懲役、及びニュー台湾ドル5万元以下の罰金を併科することができる」との刑罰規定を追加した。当該条項は2003年7月9日に再び改正され、「第112条の規定に違反する者は、1年以下の有期懲役、拘留若しくはニュー台湾ドル2万元以上25万元以下の罰金に処し、又は罰金を併科する」とされた。

1985年7月10日改正著作権法第17条第1項及び第2項は、「外国人の著作であって次に掲げるいずれかに該当する場合は、本法により著作権登録を申請することができる。1.中華民国 の国内において最初に発行された場合。2.条約又はその本国の法令、慣習により、中華民国 人の著作が当該国家において同等の権利を享有する場合。前項の登録著作権の著作権者は本法に定められる権利を享有する。ただし、専ら創作性を有する音楽、科学技術又は工程設計図面又は美術著作特集以外の翻訳は含まれない。」と規定した。

1992年6月10日改正著作権法第112条は、「本法の改正施行前において改正前の本法の保護を受ける外国人の著作を翻訳しその著作権者の同意を得ていない場合は、本法の改正施行後において、第44条から第65条の規定に該当する場合を除き再び複製をしてはならない。前項の翻訳複製物は、本法の改正施行後から2年の期間満了後は販売してはならない。」と規定した。

1998年1月21日改正著作権法第95条は、「次の各号に該当する者は、1年以下の有期懲役に処し、ニュー台湾ドル5万元以下の罰金を併科することができる。1.第18条の規定に違反した者。2.第79条に規定する製版権を侵害した者。3.第87条各号に掲げられるいずれかの方法により他人の製版権を侵害した者。4.第112条の規定に違反した者。」と規定した。第112条は、「1992年6月10日本法改正施行前に、1992年6月10日改正施行前の本法の保護を受ける外国人の著作を翻訳しその著作権者の同意を得ていない場合は、1992年6月10日本法の改正施行後、第44条から第65条の規定に該当する場合を除き再び複製することはできない。前項の翻訳の複製物は、1992年6月10日本法の改正施行から2年の期間満了後は再び販売してはならない。」と規定した。