第44条から第47条、第48条の1から第50条、第52条、第53条、第55条、第57条、第58条、第60条から第63条の規定により他人の著作を利用する場合は、その出典を明らかにしなければならない。
前項の出典の明示は、無名の著作又は著作者が不明である場合を除き、著作者の氏名又は名称を適切な方法により表示しなければならない。

【解説】

適正な利用は著作財産権の制限にすぎず、著作者の著作者人格権には影響を及ぼさない。その他、利用者側から見ると、適正な利用により生じた結果についてどの部分が利用者自身の創作であり、どの部分が他人の著作の利用なのかを外部の者に周知させなくてはならない。それは、外部の者に対して利用者の利用が適正か否かの判断材料を提供し、また、再利用を希望する者又は利用の権原が正当であるか否かの確認を要する者に対して追跡情報を与えることができる。

本条が適用されることにより、第48条の図書館の複製、第51条の個人又は家庭内の非営利目的の複製、第54条の政府又は学校の試験の複製、第56条の放送機関の一時的な録音録画、第59条の適法なコンピュータプログラム複製物の所有者による複製及び第59条の1の適法な著作複製物の所持者による頒布等は、出典を明示する必要はない。ただし、第48条図書館の複製、第54条の政府又は学校の試験の複製について、後続行為として対外的な流通がある場合には出典を明示すべきである。第1項に第60条の賃貸権が含まれていることについてであるが、この場合複製行為は介在しないのであるから、第59条の1の譲渡権と同様に出典明示は問題とはならないはずである。その他、第65条第2項に基づく「その他の適正な利用」にも出典明示の義務があるべきだが、本条の対象から漏れている。以上は、将来法改正により調整を要する点である。

適正な利用の出典明示の目的が、再利用を希望する者、利用権原が正当であるか否かの確認を要する者に追跡情報を与えることにある以上、その明示内容は原著作の名称、著作者の氏名又は名称及びページ数を含むものと解される。出典を明示する方法としては「適正な方法」により行えばよく、如何なる強行規定も存在しない。つまり、他人に原著作の出所を知らせることができればよいわけで、必ずしも各資料を逐一詳細に記載し、すべて遺漏なく網羅する必要はない。原著作がそもそも無名著作又は著作権者が不明である場合には、出典明示義務は免除される。その他、本条において明確に規定されていない態様、即ち、引用した著作名称が不明であるため利用者が著作名称を表示していない場合には、消極的に「適切な方法により義務を果たした」と解してよい。

「著作者不明」であるか否かにつきどのように認定するかは、利用者においてその利用する版本が著作者の氏名又は名称を明示しておらず相応の努力を払っても著作者が誰であるかを確認することができないことを証明することができれば「著作者不明」であると認定され、絶対的に著作者が誰であるかを確認できないことまでを要件とすべきではない。

本条が規定する「出典明示」に従わない場合、著作財産権侵害に該当するであろうか?結論から言えば、そのようなことはない。適正な利用に該当するか否かは本章の各条文に規定される要件に基づき認定され、一旦各要件に該当すれば適正な利用となり、その後「出典明示」義務を果たさなかったからといって著作財産権侵害に変化することはない。しかし、本条が規定する「出典明示」に従わない場合、第96条の規定に基づき5万元以下の罰金が科せられる。これは本条に規定される義務違反による処罰であり、著作財産権侵害によるものではない。

本条の「出典明示」と一般著作に列挙されている「参考目録」又は「参考著作」はどこが違うのだろうか?「出典明示」は著作権法における「適正な利用」にかかる要求であり、「参考目録」又は「参考著作」は学術倫理の慣習又は伝統の尊重である。著作権法の角度から「表現」の利用である場合、詳細・正確に「出典明示」義務を果たし、他人にどの部分の文章が「適正な利用」であるかを周知・区別させ、違反した場合は第96条の規定に基づき罰金が科せられる。「表現」の利用ではなく単なる「観念」の引用又は承継であって全く著作権の範囲に及ばない場合は、単に学術倫理の尊重として「参考目録」又は「参考著作」として列挙すればよく、列挙しなかった場合には学術界の学術倫理に基づく有形的な規範又は無形の道徳規範に制裁が委ねられ、著作権法違反の問題とはならない。