著作財産権が消滅した著作は、本法に別段の定めがある場合を除き、如何なる者も自由にこれを利用することができる。

【解説】

著作権法は著作者に一定の期間、著作財産権を付与し、当該期間の満了又は第42条に規定される原因により消滅した後は、著作は「パブリックドメイン(public domain)」となり、公衆が自由にこれを利用することができる。これは、著作権法制度上、著作に対する著作者の私権と公衆の自由利用との均衡を保つための重要な構想である。

著作財産権には期間の制限があるが、著作者人格権は著作財産権の消滅により影響を受けることはなく、第18条の趣旨に基づき著作財産権が消滅したとしても、利用する際には著作者の著作者人格権を尊重し、第15条から第17条に規定される公開発表権、氏名表示権、不当改変禁止権等の著作者人格権を侵害してはならない。これが本条にいう「本法に別段の定めがある場合を除き」の真意である。

本条にいう「著作財産権が消滅した著作」には、外国において依然として著作権法の保護を受けるが本法第4条の規定に該当しないために法により著作財産権を享有することができない外国人の著作は含まれない。それは、一旦当該外国と台湾が著作権の相互主義関係を確立すれば当該著作の保護が開始され、それ以前はこの条文にいう「著作財産権の消滅」の状態であるとは認められないからである。

また、本条にいう如何なる者も自由にこれを「利用」できるとは、第22条から第29条及び第87条に規定される行為をいい、これらの行為に該当しないものは著作権法の規範の範囲ではない。利用の結果、例えば古い書画を単純に撮影するような場合、そこに創作活動が存在しなければ新たな著作は誕生しないが、例えば古い彫刻の撮影又は古典音楽の編曲のように、そこに創作活動が存在すれば新たな著作が誕生し、新たな著作の著作者は当然他人による旧著作の利用を禁止することはできないが、他人が無断でその新たな著作を利用した場合には、新たな著作の著作財産権侵害に対して責任を負わなければならない。

実務上、よく見られるベートーベン等の数百年前から広く世間に伝わる古典音楽の利用については、疑問が生ずる。音楽著作と録音著作は別個の異なる著作であり、別々にその著作財産権の有無が決定される。年代の古い音楽著作の著作財産権保護期間が満了したことから何者かが利用して録音著作を完成させた場合に、各録音著作は依然として著作権法の保護を受けることができる。パブリックドメインとなった音楽著作権を自ら演奏し録音著作とする場合には、その演奏し録音制作された録音著作の侵害にはならないが、他人がパブリックドメインとなった音楽著作を演奏し録音制作された録音著作を利用する場合には、録音著作の著作財産権者の許諾を得なければならない。